【テンプレート付】借用書の書き方|必須項目と記入例、借金回収の流れや時効も解説

恋人や友人にお金を貸したけれど口約束で返済してくれるか心配…。

借用書の作成は弁護士に依頼した方がいいの?

家族や恋人、友人など誰かにお金を貸し借りしたとき、証拠となる書類を用意すべきなのか迷うのではないでしょうか。その際に役立つのが「借用書」です。借用書があることによって借金の事実を明確にでき、いざというときには裁判の手続きもスムーズにできます

しかし、いざとなれば裁判の証拠にもなり得る書類だけあり、借用書にはいくつかの重要なルールがあります。個人で作成できる書類ですが、書き方を間違えると無効になってしまい、最悪借金を返してもらえない可能性も。

そこで、この記事では借用書のルールを中心に、借用書の概要や書き方の注意点、万が一借金を返してもらえないときに借用書を使用して裁判する方法、時効の条件までわかりやすく解説します。

借用書とは

借用書は、お金の貸し借りをしている事実を証明する、法的効力を持った書類です。恋人や友人などの身内以外はもちろん、親やきょうだいに対しても発行が可能です。借用書にはおもに2つの意味があります。

  • お金の貸し借りがある事実や、返済条件などを明確にする
  • もし条件通り返済されず、貸主が裁判を起こした場合の証拠になる

借用書があればお互いの貸し借りの条件を明確にでき、いざとなれば借金回収のために法的措置もとれるようになります。

お金の貸し借りは、特に家族・友人など身内の気安い関係であれば口約束で行なわれることも少なくありません。しかし、実際問題として「具体的な返済額を決めておらず毎回ごく少額ずつしか返してもらえない」「たしかにお金を貸したのにうやむやにされた」などのトラブルも多くあります。

また、身内間の貸し借りでは相手への甘えがあり、ついずるずると返済を引き延ばしてしまったり、関係を壊したくなくてなかなか請求できなかったりすることも。

借用書があればそのようなトラブルを防げるのはもちろん、仮に滞りなく返済された場合も、貸主にとっての完済までの安心材料になります。借主も、借用書があることで「しっかりと返済しなければならない」という意識を持てるでしょう。

借用書が持つのは「法的効力」
借用書が持つのはあくまで「法的効力」であり、強制的に財産を差し押さえるような「法的強制力」は持ちません。つまり、法律のもとお互い合意して契約を交わした証拠にはなるものの、返済が滞った場合に借金を回収するにはいったん裁判が必要になります。借用書に法的強制力を持たせる方法については記事後半で解説します。

借用書はいくらからでも作成可能

たとえ1円の貸し借りであっても借用書は作成できます

借用書の金額に下限や上限はないので、1,000円でも10万円でも、「貸主が失ったら惜しいと思う金額」を貸した時点で借主に借用書を書いてもらいましょう。

借用書は原則借主が用意する

借用書は基本的にお金を借りる側が用意・記入し、お金と引き換えに貸主へ渡す書類です。そのため、貸主がお金と借用書を用意して両方借主に渡すのは間違っています。

ただし、お金を借りる側に借用書の知識がなく作成を期待できない場合は、貸主が代わりに大枠を用意して、署名や金額など必要な部分だけを借主に書いてもらうといった融通も利きます。法律的にはどちらが作成しても問題ありません。

借用書による借金の方法
  • 貸主:お金を貸す。必要な場合は借用書の大枠を用意し、借主に記入してもらう
  • 借主:借用書を書き、お金と引き換えに貸主に渡す

制限行為能力者の借用書は無効になる

借用書を正しく記載しても、借主が次のいずれかに当てはまる場合借用書が無効になります。

借用書が無効になる場合
  • 未成年(18歳未満)
  • 成年被後見人
  • 被保佐人
  • 被補助人

「成年被後見人」「被保佐人」「被補助人」はいずれも精神上の障害により、法律行為(借金の貸し借り)ができないとみなされている人のことです。支援の必要性によりそれぞれ呼び名が異なります。

未成年を含めて、上記に当てはまる方は「制限行為能力者」と呼ばれ「単独では法律行為を行なえない」とみなされるため、借用書を書いても無効です。どうしても借用の契約をする必要がある場合は、それぞれの保護者や後見人などを通じて契約することになります。

借用書に書くべき必須事項

借用書の形式は特に決まったものがなく、基本的に自由です。おすすめはしませんが、メモ用紙やチラシの裏など適当な紙を使って作成することもできます。

また、項目の順番も特に指定はありません。極端な話、「借用書」と書いたタイトルが一番下や書類の半ばに書かれていても有効です。ただし、日付や金額、氏名など「借用書として効力を発揮するために必要な項目」はもれなく記載しましょう。

必要な項目について具体的に解説します。すぐに作成できるように借用書のテンプレートを添付しました。お急ぎの方は下の画像をクリックしてダウンロードした上で、下記を読み進めて必要事項を記載してみてください。

・借用書のテンプレート

 

表題

表題には、書類の中央上部に大きく「借用書」もしくは「金銭借用書」と記載します。ただし、貸主と借主、あるいは連帯保証人などがそれぞれ同じ書類を持つ場合は「金銭消費貸借契約書」とするのが一般的です。

また、すでにお金の貸し借りをした後であらためて借用書を作成する場合は「債務承認弁済契約書」として作成します。いずれを選択しても、その他の項目の書き方は変わりません。

表題は何の書類なのかを明確にするためのものなので、「借金の返済について」「お金の貸し借りのメモ」など曖昧なタイトルをつけないことが大切です。

表題の書き方
  • 「借用書」
  • 「金銭借用書」
  • 「金銭消費貸借契約書」(2通以上作成する場合)
  • 「債務承認弁済契約書」(後日書類を作成する場合)

日付

日付は最低限、「お金の貸し借りがあった日」「返済期日」の2項目を記入します。

和暦(令和○年)・西暦(20○○年)どちらでも大丈夫ですが、借用書内に記入する日付はすべて形式を統一しましょう。たとえば、書類の作成日を和暦で、返済期日を西暦で書くのは推奨できません。

また、書類の作成日と、お金を貸す日(実際に借主がお金を受け取る日付)は同じ日付にします。

日付の書き方
  • 令和四年八月弐拾弐日
  • 弐千弐拾弐年八月参拾壱日

返済期日について

返済期日は必ず設定しておきましょう。期日は年・月・日を明確に記載します。

人によっては「夏のボーナスが入ったら返す」「給料日までに返す」と話し合いで決めている場合もあるかもしれませんが、借用書の返済期日として「夏のボーナス支給日」と書くのは曖昧なので借用書が無効になるおそれがあります。必ず具体的な日付を書きましょう。

返済期日の書き方
  • 「弐千弐拾参年八月末日までに返済します」
  • 「毎月拾五日までに指定の銀行口座へ振り込みます」

なお、返済期日を書き忘れた場合は5年で時効を迎え、借主の返済義務がなくなります。そのため、確実に返してほしい場合は必ず返済期日を設定しましょう。

返済期日を設けないこともできる
お金の貸し借りをする相手が身内で信頼できるのであれば、借用書にあえて返済期日を記載しないこともできます。しかし、その場合は貸主が裁判で返済を要求することが難しくなるため、借用書はお互いに「お金を貸した・借りた」事実を確認するためだけの書類になります。

債権・債務が発生する事実

「私は貴殿より記載の金額を借用しました」「(借主の氏名)は(貸主の氏名)から本日、記載の金額を借り受けて受領しました」など、借主が貸主からお金を借用し、受領したという事実そのものを記載します。

タイトルの「借用書」と合わせてお互いの債権・債務関係について記載することで、より明確な証拠になります。

書類の主旨の書き方
  • 「日本花子は日本太郎から本日弐千弐拾弐年九月壱日に以下の金額を借用し、確かに受け取りました」

 借用金額

借用金額を記入します。後述しますが、借用金額は改竄を防ぐため「金壱百萬円也」のように「金」と「也」で漢数字を挟み、余計な数字を書き込むすき間が空かないようにバランスよく書くのが重要です。

なお、あくまで改竄防止のためなので、アラビア数字でも借用書として通用します。また、ここに書くのは元金の額であり、利息を含む総支払い額を書くわけではありません。

借用金額の書き方
  • 「金壱百萬円也」
  • 「金参拾萬伍阡円也」

貸主・借主・連帯保証人の住所

貸主・借主・連帯保証人の住所を正確に記入します。郵便番号はあってもなくても構いません。その住所に住民票を置き、居住しているという事実が大切です。

最後に署名をするので、住所は署名欄の近くに合わせて書いておくとよいでしょう。

住所の書き方
  • 貸主:東京都千代田区○○○ 壱丁目壱番地壱号 ●●マンション百壱号室

返済方法

返済方法についても定めておきましょう。返済方法の書き方は一括・分割など返済方法によって変わってきますが、書いておいた方がよい項目は次の通りです。

返済方法に関する項目
  • 返済の手段
  • 一括払いか分割払いか
  • 初回支払日
  • (分割の場合)毎月の支払い期限
  • (分割の場合)1回あたりの返済金額
  • 総支払い回数
  • 振込や書留などの手数料をどちらが、いくら負担するか

返済方法は各自の自由ですが、一般的には「現金(手渡し、書留)」と「銀行振込」の2つの方法があります。また、分割払いで「毎月15日までに振込」など期日を指定する場合はその期日も明確にしておきます

返済方法の書き方
  • 「弐千弐拾弐年九月壱日から弐千弐拾弐年八月参拾壱日までの間、毎月弐拾五日までに指定の銀行口座に金五萬円ずつ振込して返済する。振込手数料は借主の負担とする」

利息・遅延損害金

利息や遅延損害金(支払いが遅れた場合に別途支払うお金)の割合も書いておきます。

借主に負担が大きすぎないよう、利息や遅延損害金の利率は法律で上限を定められています。上限以上の数値を書いた場合でも借用書が無効になることはありませんが、実際に有効なのは上限利息までです。超過した分は逆に貸主が借主へ返還しなければなりません。

上限未満であれば、利息や遅延損害金の利率はお互いの話し合いにより自由に設定可能です。

元本の額 利息の上限 遅延損害金の上限
10万円未満 年20%まで 年29.2%まで
10~100万円未満 年18%まで 年26.28%まで
100万円以上 年15%まで 年21.9%まで
記載がない場合の利息は無利子になる
利息について、個人の貸し借りで特に記載しない場合は無利子の扱いになります。もともと無利子でお金を貸し借りする場合は利息の項目を省いても問題ありませんが、書いておいた方がトラブルのリスクが減るでしょう。無利息とした場合や記載がない場合でも、後日年3.0%までさかのぼって請求できます
利息・遅延損害金の書き方
  • 「利息:年拾参%」「遅延損害金:年弐拾%」
  • 「返済期日より遅延した場合は遅延損害金として年弐拾%の遅延損害金を支払うものとする」

署名・捺印

借用書が本物であることを証明書として、貸主・借主・連帯保証人全員が自筆で署名・捺印をしましょう。自筆で行なうことで最悪の場合は筆跡鑑定もできます。借用書をPCで作成する場合も、署名は自筆にした方が証拠能力が高くなります。

印鑑は認印も使用できますが、実印の方が改竄しにくく、印鑑証明によって本人の意思確認もできるためおすすめです。

借用書を書くときの注意点

借用書はもしお金を返してもらえない恐れがある場合、証拠として効力を発揮するものです。そのため、確実に「証拠」になるよう次の2つを意識して書きましょう。

借用書を書く際のポイント
  • 改竄できないように書く
  • 誰が見ても明確な内容で書く

具体的にどのようにすればよいのか、詳しく解説します。

鉛筆ではなくボールペンやサインペンなど消えないもので書く

借用書は改竄防止のため、消しゴムで消せる鉛筆ではなく、ボールペンやサインペン、万年筆など修正できない筆記具で記入しましょう。

借用書をパソコンで作成しプリントアウトする方法もありますが、偽造が容易になりトラブルの原因にもなります。パソコンで借用書を作成する場合は、署名や借入金額、日付など偽造されては困る部分を空白にして作成し、印刷してから空白部分を手書きで埋めるのがおすすめです。

筆記具のインクの色
筆記具の文字色は黒もしくは青(ブルーブラック)で作成するのが基本です。どちらを使用しても法的効力はありますが、青いインクは人によっては嫌がられる場合もあるので、特別な理由がなければ黒のインクで記入することをおすすめします。

数字は漢数字で詰めて書く

改竄を防ぐため、書類の数字(特に日付や借入金額)は漢数字(壱、弐、参)で詰めて書きましょう。

普段よく利用する「1、2、3」の書き方は「アラビア数字」といって、たとえば「1」に数本書き加えて「4」や「7」「9」にしたり、「9」を「8」にしたりといった改竄が容易です。画数の多い漢数字を利用すればこのような改竄ができないため、借用書の信頼性が向上します。

漢数字は馴染みがない人が多いので、書き間違えないようにしましょう。なお、漢数字は「大字」とも呼ばれます。

種類
漢数字 壱、弐、参、四、 五( 伍)、六、七、八、九、拾、百( 陌・佰)、千(阡・仟)、萬、 円
アラビア数字 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10
漢数字は詰めて書く
漢数字は、余計な数字を付け足しできないように詰めて書きましょう。また、借入金額の前後には「金」「也」をつけることで、漢数字の前後に手を加えることもできないようにするのが鉄則です。

2通作成する

借用書は2通作成しましょう。法律上は借主が記入し、貸主が保管すればよいので1通でも問題ありませんが、2通用意し借主と貸主がそれぞれ所持することで、改竄のリスクを防げます

なお、連帯保証人がいるときは連帯保証人の分も含めて3通用意し、各自が所持しましょう。

割印で信頼性を高める
複数書類を作成するときは、実印を用いて割印を捺す(契印)ことでより信頼性が高まります。書類をぴったり接するように並べて、それぞれの書類にかかるように貸主、借主、連帯保証人それぞれの実印を捺しましょう。書類を偽造すれば、印影のかたちや位置がずれるのでわかる仕組みです。

1万円以上借りる場合は収入印紙が必要

借用書は法律上「課税文書」に区分され、課税文書には収入印紙を貼ることが義務づけられています。

借用書を作成するときは1万円以下の借入であれば収入印紙が不要ですが、1万円以上の借入については借入金額に応じて収入印紙が必要です。収入印紙を貼らずに書類を作った場合、脱税したとみなされ罰則を受ける可能性もあるので注意してください。

以下の表を参考に、郵便局や金券ショップ、コンビニや酒屋など収入印紙の取扱店で収入印紙を購入し、借用書に貼付しましょう。

借入金額 収入印紙の金額
1万円未満 不要(非課税)
10万円以下 200円
50万円以下 400円
100万円以下 1,000円
500万円以下 2,000円
1,000万円以下 10,000円
5,000万円以下 20,000円
1億円以下 60,000円
収入印紙には消印が必要
収入印紙を貼ったら、剥がして再利用できないように消印を押します。消印は借主の印鑑で問題ありません。

犯罪や非常識な内容を書かない

借用書に犯罪にあたる内容や、反社会的・非常識な記述をしないようにしましょう。借主・貸主のどちらかに著しく不利な内容を書くと、借用書としての公平性がなくなり裁判でも不当な契約とみなされる場合があります。

たとえば、返済を遅延した場合のルールとして「私物の車を売ってお金を作ります」と書くことは問題ではありませんが、「強盗や売春でお金を作ります」「臓器を売ります」など犯罪や非常識的なことは強制できません。あくまで常識の範囲で、対等な契約になるように条件を定めましょう。

借用書は「公正証書」として法的効力を強められる

借用書は「私文書」と「公正証書」のいずれかを選んで作成できます。

  • 私文書:当事者(民間人)だけで作成でき、費用もかからない
  • 公正証書:公正役場にて専門の公務員「公証人」が作成する。作成費用が必要

「私文書」でも裁判でも証拠として問題なく提出できるので、通常は私文書で充分といえます。しかし、より信頼性のある書類を作成したい場合や、「本当に貸したお金を返してもらえるのか」といった不安がある場合は「公正証書」として作成することをおすすめします。

第三者の手を借りて公的に書類を作成するためごまかしが利かず、私文書よりも強い法的効力を持ちます。また、作成時に「強制執行認諾約款」をつけることで、万一返済が滞った場合に裁判なしで「強制執行(借金の回収)」ができるのが最大のメリットです。

公正証書の作り方

公正証書は次の手順で作成できます。

  1. 金銭の貸し借りをする条件を貸主・借主間で話し合う
  2. 決めた条件をもとに借用書を作成する
  3. 貸主・借主の身分証明書、印鑑(※実印の場合は印鑑証明も必要)を用意する
  4. 公証役場に公正証書を作成したい旨を告げて電話で予約をする
  5. 借主・貸主の双方が揃った状態で公証役場に出頭する
  6. 公証役場で受付や書類の調査をする
  7. 公正証書が作成される
  8. 公証人の前で貸主・借主が公正証書の内容を確認し、署名・捺印
  9. 公正証書が交付される

このように、公正証書を作成するには貸主・借主が揃い、同じ日に公証役場に足を運ばなければなりません

公証役場は全国に約300ヶ所(参考:日本公証人連合会 公証役場一覧)あり、好きなところで作成できるので、都合のよい公証役場を選定しましょう。

代理人の出頭も可能
もし貸主・借主が遠方に住んでいる・高齢で動けないなど都合が悪い場合は委任状を用意し、代理人に依頼もできます。

公正証書作成の費用

公正証書作成には、「公証人手数料」「正本および謄本の交付手数料(1枚あたり250円)」の2つの費用がかかります。公証人手数料は公証人に公正証書を発行してもらう手数料で、借入金額によって変動する仕組みです。

借入金額 公証人手数料
~100万円 5,000円
100~200万円 7,000円
200~500万円 11,000円
500~1,000万円 17,000円
1,000万円超~3,000万円 23,000円
3,000万円超~5,000万円 29,000円
5,000万円超~1億円 43,000円
1億円超~3億円 43,000円+(5,000万円までごとに13,000円ずつ加算)
3億円超~10億円 95,000円+(5,000万円までごとに11,000円ずつ加算)
10億円超 249,000円+(5,000万円までごとに8,000円ずつ加算)

なお、上記はあくまで自分で公正証書を作成した場合です。

書類の書き方に不安がある場合は弁護士や行政書士などの専門家に依頼すれば状況に応じたアドバイスを受けられ、スムーズに公正証書を作成してもらえますが、最低数万円の依頼費用が別途かかります。

借用書を使用して借金回収する方法

もし万が一貸したお金が期日までに返って来ない場合、貸主は借用書を使用して裁判所で手続きし、借金の回収ができます。具体的な手順は次の通りです。

  1. 相手に返済を通告・交渉する
  2. 内容証明郵便を送付する
  3. 対面で交渉する
  4. 裁判所で手続きを開始する
  5. 裁判開始~判決
  6. 強制執行手続き

ポイントは「相手との交渉」「裁判所での手続き」の2つです。それぞれ解説していきます。

相手と交渉する

借用書がある場合も、期限を過ぎたからといっていきなり裁判を起こすのは得策ではありません。まずは相手と電話やメール、郵便などで直接交渉しましょう。

「あと1ヶ月待ってほしい」「次の給料日で返す」「毎月5万円の返済予定だったが、1万円にしてほしい」など相手との交渉の余地があれば、相手との話し合いで解決するのが一番です。

もし、相手からの返事が得られず無視されるような場合は、お金を貸したまま返済されないことや、柔軟に対応したいが最悪は裁判の用意もあることなどを指定の様式で記入し、内容証明郵便で送付しましょう。内容証明郵便は郵便局・貸主・借主で1通ずつ同じものを保管するため、公正な証拠の1つになります。

相手が交渉に応じるようなら、対面での交渉も検討しましょう。直接顔を見て交渉することで、お互いの意思を確認しやすくなります。

裁判所で手続きする

交渉が上手くいかない場合は、裁判所を頼りましょう。

裁判所で手続きをするというと「訴訟を起こして勝訴し、相手の財産を差し押さえる」とのイメージを持つ人も多いかもしれませんが、実際にはそれ以外にも、裁判所は借金解決に役立つさまざまな手段を提供しています。

裁判所でできることの例
  • href="https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201408/3.html">民事調停:裁判所に話し合いを仲介してもらう"
  • 仮差押:判決前に債務者の財産を確保してもらう
  • 支払督促:裁判所が代わりに借金返済の督促をしてくれる
  • 少額訴訟:60万円までの貸し借りなら裁判費用を安く抑えられる

民事調停

民事調停はいきなり裁判に持ち込むのではなく、お互いが話し合う機会を裁判所が設けてくれるものです。第三者が間に入ってくれるので冷静かつ公正な話し合いができます。また、結果は裁判の判決と同等に扱われます。

仮差押

仮差押は、相手が財産を処分することを一時的に禁止し、借金回収のための資産が残るようにするものです。

裁判には時間がかかるので、いざ裁判で勝訴しても相手が裁判中に財産を処分してしまえば、支払えるものがなく回収できません。仮差押することでそのようなリスクを減らせます。

支払督促

支払督促は裁判所が貸主に変わって借金を返済するよう督促してくれるものです。もし借主が督促に応じない場合は「異議申し立てがない」と見なし、裁判しなくても強制執行できるメリットがあります。

支払督促では裁判所から正式な督促状が届くので、借主が本気を悟って慌てて交渉に応じるケースもよくあります。相手にプレッシャーをかけるのには非常に有効です。

少額訴訟

少額訴訟は請求額が60万円(利息・遅延損害金は含まなくてよい)までの場合に利用できる制度です。少額訴訟は判決が出るまでが早く、当日中に申し込みから判決までを終わらせることもできます。何度も出廷する必要がないため、借主・貸主双方にとって負担の少ない方法といえるでしょう。

訴訟の費用も比較的安く済みます。請求額や人数によって変わりますが数千~1万円が目安で、高くても数万円です。

借用書の時効

借用書には時効が存在します。時効を過ぎると債務者は返済義務がなくなるため、債権者は必ず時効の時期や仕組みについて把握しておきましょう。

借用書の時効は5年もしくは10年です。以前は権利を行使可能になってから10年(個人の場合)と決まっていましたが、令和2年4月1日に民法改正があり内容が変更されました。

新法のルールは次のようになっており、旧法に比べてシンプルです。

  • 債権者が権利を行使することができることを知ったときから5年
  • 権利を行使することができるときから10年
  • 上記2つのうちいずれか早い方を時効とする

ただし、借用書を作成しお金を貸した時点で「債権者が権利を行使することができると知っている」ことは明らかなので、実質時効は5年と考えられます。一方、法改正以前に借りた場合は旧法に則り、10年の時効が適用されます。

このように、借りた時期が令和2年4月1日以降か以前かで時効が異なります。これから貸す場合は時効が短くなるため注意してください。

時効により返済義務がなくなる条件

時効を迎えて返済義務がなくなり、債権者が請求権利を失うには次の条件を満たす必要があります。

  • 支払い期日(もしくは最後に返済した日)から5年(もしくは10年)が経過する
  • 債権者に対して、時効であるため返済しない旨を通知する(時効の援用)

単純に時効の時期を迎えるだけでなく、債権者に対して時効であるために返済をしないことを主張しなければいけないのがポイントです。

ただし、上記のルールだけでは借りた側に有利になってしまうため、債権者側にも「時効の更新」や「時効の完成猶予」など時効を延長できる権利がいくつか用意されています。債権者側の場合は時効が成立する前に行動を起こしましょう。次で詳しく解説します。

時効が延長される条件

時効の延長は、「時効の更新」もしくは「時効の完成猶予」によって行なわれます。

時効延長の種類 延長の内容や仕組み 延長されるおもな理由
時効の更新 時効がリセットされ、ゼロからスタートする ・民事訴訟
・裁判所を通じて和解
・強制執行による債権回収
・債務者による債権の承認 など
時効の完成猶予 いったん時効までの時間がストップする ・裁判中でまだ判決が出ていない場合
・強制執行中で完了していない場合
・災害があり裁判が困難な場合 など

「時効の更新」は、たとえば時効を迎えるまでの間に民事訴訟があったり、裁判所を通じて和解したり、強制執行により債権を回収されたりした場合、あるいは債務者が債務のあることをあらためて承認したりした場合などに適用されます。時効の更新が行なわれると、たとえば時効まであと数日しかない場合でもカウントがリセットされ、再び時効まで残り5年となります。

つまり、債権者は返済が予定通りに行なわれない場合裁判所に訴え、訴訟や和解、強制執行などの手続きを行なうことで、定期的に時効を更新できます

一方「時効の完成猶予」は時効をリセットするのではなくいったんカウントをストップする仕組みです。たとえば時効間近に裁判所に訴えた場合、判決が出るまでには時間がかかるのでその間も時効が経過し、最悪時効が成立してしまうのは妥当ではありません。

また、地震や戦争など災害により裁判所へ訴えたくてもできない場合も同様です。このように正当な理由がある場合は「時効の完成猶予」により時効が一時的に延長されます。

借用書に関するよくある質問

最後に、借用書に関してよくある質問に回答します。

  • 返済前にもう一度お金を借りるときの借用書は? もう1枚借用書を書く必要があります。たとえば1月にお金を借りて、返済しないうちに10月に追加でお金を借りたいときは1月と10月、それぞれで借用書を用意します。明確に日付を書けば1枚にまとめることも可能です。また、一部返済済みのお金がある場合はその旨も借用書に明確に記載しましょう。
  • 借用書を間違って記入した場合の訂正方法は? 一般的な契約書類と同様に、修正したい部分に二重線を引いて訂正印を捺し、書き直します。何行目を何文字削除して何文字追加したかといったことも書くとトラブル回避に役立ちます。なお、訂正印は貸主・借り主・連帯保証人全員の印鑑が必要です。もし相手に渡す前(契約前)に間違った場合は、作り直しも検討しましょう。
  • 返済前に引越しで住所が変わった場合は? 借用書に記入した時点で正確な住所を記入しており、契約後に引越した場合であれば借用書は有効です。借主が夜逃げしてしまい住所がわからなくなった場合は、探偵や弁護士への依頼によって新住所を特定できます。
  • 弁護士に借用書作成を依頼できる? 借用書(金銭消費貸借契約書)は弁護士や行政書士に作成を依頼できます。費用相場は1~3万円です。必要に応じて印刷費や郵送費などが別途かかります。作成日数は事務所によって異なりますが、必要な情報が揃っていれば数日~1週間程度で完成するでしょう。急ぎの場合は別途追加料金を支払うことで翌営業日に原案をもらえるケースもあります。
  • ローンでお金を借りるときも借用書は必要? 消費者金融や銀行ローンでお金を借りる場合、個人での借用書の作成は不要です。ローン契約時、自動的に契約書が作成されるためそれが借用書の代わりになります。逆にいうと、お金を借りた事実は契約書に記録されているため、万一返済しなかった場合は裁判の際不利になります。ローンを利用する場合は計画的に借りて返済を進めましょう。
  • お金を借りてその分増えた資産に税金はかからないか? 基本的に返済を前提として借りたお金であれば贈与税はかかりません。ただし、たとえば親にお金を借りた後返済に困り、親側が後から返済を免除した場合は、金額次第で贈与税がかかることがあります。また、返済前に親が亡くなった場合は相続税がかかります。贈与税の対象になるのは年110万円以上からなので、多額を借りる場合は注意しましょう。

まとめ

借用書の書き方にはルールがあります。いざというとき証拠となるように、ルールを守って記載しましょう。

数字を漢数字で詰めて書くといったように「改竄されないようにする」ことと、「誰が見ても同じ解釈をする、正確な表現を心がける」ことが大切です。

借用書は金銭の貸し借りがあってから作成するのではなく、借用の相談をした時点で必ず用意しておきましょう。

また、借りる側は借用書をきちんと用意することで、返済に対する誠意を見せることもできます。借主にあたる方は借用書の書き方を知って資金を借り受け、返済計画を立ててしっかり返済していきましょう。

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