「学資保険を積み立てているけれど、なかなか増えないので解約したい」「学資保険の支払いが苦しいので解約を検討中。せっかく積み立ててきたから、もう少し頑張って続けるべき?」

学資保険の契約は10年以上の長期にわたることが多いため、このように契約途中で解約を考える人は少なくありません。

ただし、学資保険を中途解約すると元本割れの可能性があるうえ、万が一の保障機能を失います。解約時にはこれらのデメリットをよく理解したうえで、後悔のない選択を取ることが大切です。

そこでこの記事では、学資保険の解約を考えたときにチェックしてほしいポイントを解説します。衝動的に解約して後悔してしまう前に、まずは各ポイントを確認してみてください。

学資保険の中途解約で生じる3つのリスク

冒頭で説明したとおり、学資保険の中途解約には以下3つのリスクがあります。

学資保険の中途解約によるリスク

・元本割れの可能性がある
・原則として再契約できない

・万が一の保障機能を失う

どれも重要なポイントですので、それぞれ詳しく解説していきましょう。

1.中途解約は元本割れの可能性が高い

学資保険は、満期まで継続することで満額の学資金を受け取れる保険です。そのため中途解約をしてしまうと、元本割れしてしまう可能性が高くなるので気をつけましょう。「中途解約」とは、契約期間の途中で解約してしまうことを指します。

まず、一般的な学資保険の契約期間や保険料払込期間を見てみましょう。

<子どもの教育費の積立を目的とした学資保険の一般例>

契約期間・大学入学前の17歳、18歳満期
・大学を卒業する21歳、22歳満期
保険料の支払い方法・契約時に一括で支払う一括払い
・継続して支払う「月払い」「半年払い」「年払い」
保険料払込期間継続して支払う場合、保険料の払込期間は保険会社によって異なる

上記のとおり、学資保険の契約期間は17~22歳満期、払込期間は10年以上になるケースが一般的です。そのため、積み立てている途中で保険料の支払いが苦しくなり、解約したいと考える人は少なくありません。

しかし、契約期間の途中で解約すれば、払い込んだ保険料を下回る解約返戻金しか受け取れず、元本割れしてしまう可能性が高いです。特に契約してまだ数か月~数年しか経過していない状態だと、解約返戻金はあってもごくわずかというケースもあるでしょう。

2.一度解約してしまうと原則、再契約不可

原則として、学資保険は解約してしまうと同じ条件での再契約はできません。

これは学資保険に限らず、すべての保険商品にいえることです。保険は保険会社との「契約」によって保障を受けられる商品であり、一度解約した契約を同じ条件で復活させることはできません。

解約してから再度同じ学資保険を契約するには、その時点で改めて告知をして審査に通ったうえで、再度保険契約を結ぶ必要があります。ただし、学資保険には子どもや親の年齢制限があり、子どもの場合は6歳~7歳までしか加入できない商品が多いです。

そのため再度契約しようとしても、その時点の年齢や健康状態によっては加入できないかもしれません。万が一再加入できたとしても、年齢を重ねているぶん保険料が高くなり、条件が不利になる可能性があるため気をつけましょう。

3.万が一の保障機能がなくなる

学資保険には、契約者に万が一のことがあったときに保険料の支払いが免除になる「保険料払込免除特則※」が付いています。

この特則は、契約者である親に万が一のことが起きても、それ以降の保険料が免除されるものです。この特則があることで、「契約者である親の死亡保険」のような保障機能を得られるのが学資保険の特徴です。

学資保険を解約してしまうと、こうした保険ならではの保障機能もなくなります。子どもが育ち盛りのときに親の死亡保障をなくしてもいいのか、解約時には保障面を失うリスクもよく検討したほうがいいでしょう。

※契約者が祖父母の場合は保険料払込免除特則を不可できないケースがあるため、ここでは契約者=親である事例を元に解説しています

学資保険の解約理由から考える対処法

学資保険の解約には3つのリスクがあることをお話ししました。

ただ、「リスクがあるのはわかったけれど、それでも解約したい」という人もいるでしょう。解約と解約のリスクの間で悩んだときは、まず学資保険を解約したい理由を明確にしましょう。

ここでは、学資保険の解約理由にあわせた対処法をそれぞれご紹介します。

学資保険を解約したい理由はおもに3つ

せっかく積み立ててきた学資保険について、解約が必要になった理由を考えてみましょう。解約を考える人の理由は、おもに以下の3つに分けられます。

保険料の負担が理由家計が苦しく、今後も保険料を払っていくのが難しい
返戻率への不満が理由・満期まで継続しても、学資金の返戻率が低いのでもったいないと感じる
・他の金融商品で教育費を用意していきたい
使い勝手の悪さが理由満期まで学資金を受け取れないので、使い勝手が悪い

このうち保険料の負担が理由という人には、払済保険や保険の減額という方法があります。返戻率への不満がある人は、教育費に利益が必要かを考え直すことが大切です。そして短期的に保険料の払込みが厳しい場合などは、一時的に契約者貸付制度を利用するという方法があります。

次項からは、上記の理由ごとに「解約せずにすむ対処法」を紹介していきます。

「払済保険」「減額」を検討する

保険料の負担を理由に解約を考えている人は、払済保険や保険の減額を検討しましょう。

払済保険とは

保険料の払い込みを中止して、保険期間はそのままにしたうえで保険金額の低い保険に変更すること。学資保険の場合、将来受け取れる満期金は少なくなるが、解約による元本割れのリスクを防ぎ、保障機能を維持できる

保険の減額とは

主契約の保障額を減らすことで、保険料を安くする方法。学資保険の場合は、将来受け取る満期金の金額を少なくして、払い込む保険料の負担を抑えることができる。払済保険と同様、元本割れのリスクを防いで保障機能を維持できる

払済保険は、この先の保険料負担をなくしたうえで保険契約を残す方法です。そして減額は、保険料を安くして保険契約を残す方法です。

払済保険も学資保険も、契約の状況や保険会社によって対応可否は異なります。すべての学資保険契約者が利用できる方法ではないため、利用を考えたときはまず保険会社に確認してみてください。

もし利用できる場合は、学資保険を解約せずに契約を継続できます。保険料の負担を抑えたい人は、選択肢の一つとして検討してみてください。

使う時期が決まっている教育費に利益は必要か再検討する

学資保険の返戻率に不満を感じている人は、改めて教育費に適した商品が何かをよく考えてみてください。

学資保険は子どもの教育費を積み立てる保険です。高校や大学進学など、教育費は将来必要になる時期が決まっています。教育費の準備に利用する商品を選ぶ際は、利益よりも「必要なときに使えるかどうか」も重視すべきではないでしょうか。

たしかに今の学資保険は、ひと昔前の学資保険と比べると満期金の返戻率は低いです。10年以上積み立てても、積み立てた保険料をわずかに上回るか、ほぼ元本と同額という返戻率の商品もあるでしょう。

ただ、「元本保全性は高いけれど返戻率が低い」のは、定期預金や財形貯蓄といった商品も同じです。安全性を求めると、どうしても返戻率は下がってしまいます。

中には、「もっと利回りのいい株式や投資信託を運用したほうが増える」と思う人もいるでしょう。しかし株式や投資信託には元本保証が一切なく、学資保険のように死亡保障としての機能もありません。加えて、株式や投資信託は相場の状況にあわせて資産の評価額が変動します。

もし子どもの大学進学時期にリーマンショックやコロナショックのような暴落がきたら、資産が大幅に下落する可能性もあるのです。暴落とは言わずとも、相場が長期的に低迷する「下げ相場」になる可能性もあり、使いたいときに使えない可能性は否定できません。

そういう意味では、使う時期が決まっている教育費に対し、親の死亡保障も備えつつ確実に用意できる学資保険は、教育費に適した商品といえます。

利益だけ求めてリスクを軽視し、教育費として使えなければ本末転倒です。

「もっとお得な商品に乗り換えたい」と考えている人は、本来の目的である教育費の準備という観点で、改めて適した商品は何かを考えてみてください。

一時的に契約者貸付制度を利用する

保険料の払込みが厳しいことを理由に解約を考えている人は、一時的に契約者貸付制度を利用するという手段もあります。

契約者貸付制度とは、自身が積み立てている保険の解約返戻金の範囲内で貸付を受けられる制度です。ただ、貸付といっても一般のローンとは違い審査はなく、一般の無担保ローンと比べると金利も低めに設定されています。

自分が契約している生命保険の解約返戻金から借り入れをするシステムなので、あくまで契約者が保険を継続しやすくするための制度です。

学資保険は、高校や大学入学といった時期まで学資金を受け取れないことがほとんどです。これは計画的に教育費を用意するうえで大きなメリットですが、途中で臨時出費が発生する場合にすぐ使えないのはデメリットといえるでしょう。

そこで長い契約期間中の臨時出費へ対処する方法として、契約者貸付制度が用意されているのです。一時的に家計が厳しいときは、契約者貸付制度を利用するのも一つの方法です。利用の有無は保険会社によって異なるため、困ったときは聞いてみてはいかがでしょうか。

ただし、契約者貸付制度は一時的な家計の悪化のときだけ使うようにしましょう。ご自身の解約返戻金の範囲内で利用できるといっても、利用すれば一定の利息が発生します。

また、貸付金を返済しないまま満期を迎えたら、満期時に受け取る学資金は少なくなります。あくまで一時的な措置として利用し、常用することは避けてください。

学資保険の解約方法

これまで説明してきたリスクや対処法を理解したうえで解約するときは、以下の方法で解約手続きを進めてください。

学資保険の解約方法

1.解約をしたい旨を保険会社に連絡する
2.解約請求書が保険会社から届く
3.必要書類(本人確認書類や保険証券など)を用意する
4.解約に必要な書類をまとめて保険会社に提出
5.保険会社で解約の書類を受理

6.書類内容に不備がなければ解約返戻金が払い込まれる

学資保険を解約する際は、保険会社から解約請求書と一緒に、解約した後のデメリットが記載してある書面が届きます。解約時にはこのデメリットをしっかり理解したうえで、本当に解約しても問題ないかを再確認することが大切です。

まとめ

学資保険の中途解約には元本割れの可能性があります。

また、解約した契約を同じ条件で再契約することはできません。解約と同時に親の死亡保障としての機能も失われます。学資保険の解約にはこれらのリスクがあるため、解約を考えたときは以下の方法で対処してみてください。

  • 払済保険への変更や減額手続きをとり、保険料の負担を抑える
  • 教育費の積立に適した商品は何かをよく考え直す
  • 一時的に契約者貸付制度を利用する

学資保険を契約した当初の目的は、教育費の準備や保障の確保という目的があったはずです。解約時にはそうした当初の目的を思い出しながら、解約が最善の方法なのかをよく考えてみましょう。

繰り返しになりますが、一度解約した契約は元に戻せません。一時的な感情で解約して後悔してしまわないよう、本記事で紹介したポイントを見直してみてくださいね。

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監修者プロフィール

宮里 恵
(M・Mプランニング)

保育士、営業事務の仕事を経てファイナンシャルプランナーへ転身。
それから13年間、独身・子育て世代・定年後と、幅広い層から相談をいただいています。特に、主婦FPとして「等身大の目線でのアドバイス」が好評です。
個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っている他、お金の専門家としてテレビ取材なども受けています。人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。

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