子どもの教育費のために加入する学資保険の満期は、子どもの大学進学にあわせて18歳~22歳までの間に設定されていることが多いです。満期保険金を受け取ると保険契約は満了となりますが、受け取る方法によって満期保険金にかかる税金が変わってくるので注意しましょう。

この記事では、学資保険の満期保険金について、わかりやすく解説します。受け取り時期から受け取れる金額、受け取り時の税金、使い道まで疑問点がある人は参考にしてみてください。

学資保険で受け取れるお金は「進学学資金」と「満期保険金」

学資保険は子どもの教育費の積立てを目的とし、子どもが未就学児の頃に加入してコツコツ積み立てるものが一般的です。積み立てた教育費は高校・大学進学時などに学資金という形で受け取れます。

学資金の種類は、大きく分けて以下の2つです。

進学学資金(祝金ともいう)入学、進学のたびに受け取れる
満期保険金(満期学資金ともいう)学資保険の満了時期に受け取れる

進学学資金は、学資保険の商品内容や契約方法によって受け取れる回数が異なります。

一般的には子どもの大学入学と同時に進学学資金の受け取りが始まり、大学3年目までに毎年3回受け取ったあと、大学4年目で満期保険金を受け取って契約が満了となるプランが多くなっています。

満期保険金の受け取り時期

学資保険で進学学資金や満期保険金を受け取れる時期は、保険商品や商品ごとに用意されているプランによって異なります。

受け取り時期は学資保険加入時に任意で選べるため、子どもの教育方針や家庭のライフプランに適したプランを選びましょう。

一般的に多いのは、大学費用に照準をあてて進学学資金・満期保険金を受け取れるプランです。

<大学費を重視した受け取りプラン>

大学初年度(17歳か18歳)進学学資金1回目を受け取る
大学2年目(18歳か19歳)進学学資金2回目を受け取る
大学3年目(19歳か20歳)進学学資金3回目を受け取る
大学4年目(21歳か22歳)満期保険金を受け取り保険契約満了

子どもが早生まれかどうかで受け取り時期の年齢設定が異なるため、何歳で設定すべきか悩んだら保険会社や保険代理店に相談してみてください。

また、保険会社や商品によっては以下のような受け取りプランもあります。

<中学から大学まで進学のたびに受け取るプラン>

中学進学時(11歳か12歳)進学学資金1回目を受け取る
高校入学時(15歳か16歳)進学学資金2回目を受け取る
大学入学時(17歳か18歳)満期保険金を受け取り保険契約満了

大学費用に照準を充てるのであれば、大学入学時から3回学資金を受け取り、大学4年目21歳・22歳で満期保険金を受け取るコースがおすすめです。

ただし、子どもの進路は各家庭の教育方針によっても異なります。いつの学費を重視するのかで適切な受け取り時期は変わってくるため、各家庭のライフプランや子どもの教育計画を照らし合わせたうえで、適切な時期を設定しましょう。

また、受け取りプランによって学資金の返戻率は変わってきます。「できる限り返戻率を高くしたい」という人は、プランによって変わる返戻率もよく比較したうえで選ぶことが大切です。

満期保険金の受け取り日(満期日)は変更できる?

学資保険の満期日は契約時に選択するため、加入後に変更することはできません。ただし、保険会社によっては「進学学資金」なら受け取り日を「据え置き」にして変更することが可能です。

たとえば、大学初年度から3回進学学資金を受け取る予定でプランを組んでいたが、これを受け取らず据え置きし、満期日である大学4年目の21歳~22歳の頃にまとめて受け取るのです。

この場合、満期保険金の受け取り時期は変わりませんが、途中で受け取るお金=進学学資金の受け取り時期は変えられます。保険会社によって違いますが、据え置きにすると進学学資金の返戻率が上がるケースもあります。

また、満期日よりも早く学資金を受け取りたい場合には、進学学資金の支払いが始まるときに解約し、解約返戻金として残りの学資金を一括で受け取るという方法もあります。

ただし、満期より早いタイミングで解約してしまうと、学資金全体の返戻率が下がります。解約時期によっては元本割れする可能性もあるため、解約する際には解約返戻金の返戻率に留意が必要です。

満期保険金の金額は自分で設定できる

学資保険で受け取れる学資金の総額は100万円~300万円程度が相場ですが、満期保険金の金額は契約プランによって異なります。

たとえば、進学学資金と満期保険金を分けて受け取るプランであれば、学資金総額の20~30%程度を満期保険金に設定していることが多いです。

<学資金を300万円受け取る場合>

学資金総額300万円
進学学資金学資金総額の70~80%=210~240万円
満期保険金学資金総額の20~30%=60~90万円

一方、進学学資金は受け取らず大学入学時に一括で満期保険金を受け取るようなプランであれば、満期保険金は学資金総額100%となります。

ただし、これらはあくまで一例です。実際の満期保険金は学資金総額の設定などプランによって異なります。保険会社によっては学資金の設定をより細かくしていることがあるため、加入時にはしっかり各社比較して適切な金額を設定してください。

大学費用をできる限り学資保険でカバーしようとして、高い学資金を設定する際は負担額に気をつけましょう。子育て世帯では子どもが大きくなるにつれさまざまな支出が発生します。家計に無理のない範囲で進学学資金・満期保険金を設定することが大切です。

満期保険金や進学学資金を受け取る際の税金

学資保険で受け取る学資金(満期保険金や進学学資金)にかかる税金は、保険の契約形態によって異なります。

ポイントは、保険料を負担する人と保険金受取人です。
<学資保険の学資金受け取り時の契約形態>

保険料の負担者保険金受取人(学資金を受け取る人)税金の種類
AA所得税(一時所得または雑所得)
AB贈与税


出典:国税庁ウェブサイト「No.1755 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき」
上記表のとおり、保険料を負担する人と保険金を受け取る人が同じだと所得税、違うと贈与税がかかります。

一般的に保険料を負担する人は契約者であることが多いですが、そうでない場合もあります。

たとえば、保険契約者と保険金受取人は妻だけど、保険料の支払口座は夫の名義であるというケースです。この場合は、保険料の負担者と受取人が違うものとして贈与税の課税対象になります。

所得税の課税対象になる場合

保険料負担者と保険金受取人が同じ場合は、所得税の課税対象になります。さらに、学資金を受け取る方法が「一括」か「分割」かで、以下の取り扱いに分かれるため、税金の計算式が変わります。

<学資金を一括で受け取る場合:一時所得>
学資金を受け取った年に他の一時所得がなければ、以下の計算式で求められます。

  • 受け取った学資金の総額-学資保険の保険料総額-特別控除額(50万円)=一時所得の金額

一時所得は、上記で求めた「一時所得の金額」の2分の1に相当する金額を、給与所得など他の所得と合算して納める税額を計算します。分離課税ではなく総合課税になるため、学資金を受け取る際にすぐ税金が発生するわけではありません。

<学資金を分割で受け取る場合:雑所得>

  • 学資年金年額-学資年金年額×(払込保険料総額÷受取予定の学資金の総額)=雑所得

一時所得では利益が出ても50万円の特別控除額がありましたが、雑所得ではそうした控除がありません。大学4年間で分割受け取りする場合は、この点に留意しておきましょう。

なお、元々分割で受け取るつもりだった学資金を、解約や据え置きなどで一括受け取りに変更すると一時所得の対象になります。

ただ、税負担を気にして一時所得にしても、他方で学資金の受取総額は下がってしまう可能性があります。

どうするか悩んでいる人は、保険会社や保険代理店の担当に相談してみましょう。

贈与税の課税対象になる場合

保険料負担者と保険金受取人が違う場合は、贈与税の課税対象になります。

ただし、贈与税は1年(1月1日~12月31日まで)のうちに受け取った学資金の合計額が110万円以下であれば課税されません。たとえば総額300万円の学資金を4年に分けて受け取ると、1年のうちに受け取る学資金は110万円以下であり、税金がかかることはないのです。「贈与税の対象になると課税額が高いのでは?」と不安な人は、1年のうちに受け取れる金額を110万円以下に抑えるよう調整しましょう。

ただ、税金の計算は複雑でわかりにくい人もいるでしょう。悩んだときは周囲の専門家に相談することも大切です。

満期保険金の使い道は?実は教育費以外に使ってもいい!

学資保険は教育費のために加入している人がほとんどで、実際に販売されている商品も高校や大学進学を想定しているものばかりです。

しかし、学資保険で受け取る進学学資金や満期保険金は、教育費以外に使うこともできます。学資保険では、学資金の使用使途は決められていないため受け取ったものをどう使うかは各家庭の自由です。

子どもが成長してからどのような進路を歩むかは、誰にもわかりません。大学進学を想定して学資保険に加入していても、大学には進学せず早期に就職したり、大学を中退・休学して留学に行く可能性もあります。

将来の選択肢を広げるためにも学資保険を柔軟に活用することをおすすめします。

まとめ

学資保険で受け取れる「学資金」は、分割で受け取る進学学資金と満期時に受け取る満期保険金があります。一般的には、大学初年度から毎年進学学資金を受け取り、大学4年目の21歳~22歳ごろに満期保険金を受け取って保険が満了します。

ただ、受け取る時期や学資金の総額は契約プランによって異なります。これから加入する人は、各家庭の教育方針やライフプランを照らし合わせて負担のないプランを設定してみてください。

学資金は、受け取る方法によってかかる税金が変わります。「自分の契約ではどのように受け取るのかお得だろう」「損しない受け取り方をしたい」という人は、保険会社や保険代理店の担当、ファイナンシャル・プランナーなどに相談して、受け取り方法について聞いてみるといいでしょう。

保険コンパスなら、何度でも相談無料です

監修者プロフィール

宮里 恵
(M・Mプランニング)

保育士、営業事務の仕事を経てファイナンシャルプランナーへ転身。
それから13年間、独身・子育て世代・定年後と、幅広い層から相談をいただいています。特に、主婦FPとして「等身大の目線でのアドバイス」が好評です。
個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っている他、お金の専門家としてテレビ取材なども受けています。人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。

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