学資保険の祝い金や満期保険金の受け取りの際には税金が、 そして保険料を支払っている期間は保険料控除を受けられることをご存じですか?

本記事では、学資保険の保険料の控除と税金について詳しく解説します。

学資保険と税金にはどのような関係がある?

学資保険の受け取り、支払いにおいて気になるのが税金です。 ここでは、学資保険の税金・控除の関係について解説します。

保険金を受け取ると税金がかかることがある

満期保険金を受け取る場合は、他の生命保険と同様に税金がかかることがあります。

税金の種類は、契約者、被保険者、受取人の関係によって、所得税または贈与税のいずれかになります。

保険料を支払うと節税できることがある

学資保険の保険料を支払っている場合、生命保険料控除の対象となります。 生命保険料控除とは、年間払込保険料に応じて、 所得から一定額の控除を受けることで所得税や住民税を減額できる制度です。

生命保険料控除には「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3つがあります。このうち、 学資保険は「一般生命保険料控除」に該当します。

控除を受けるには、会社員の方は年末調整、 フリーランス・個人事業主の方は確定申告の手続きが必要です。 なお、申告の際には、保険会社から送付される「保険料控除証明書」が必要となります。

学資保険の保険金やお祝い金を受け取ったときの税金

学資保険の契約者、被保険者、受取人の関係、 保険金の受取額、受け取り方法によって、税金額、税金の種類が異なります。

契約者と受取人が同じ場合は「所得税」

学資保険に加入する場合、契約者と保険金受取人は父親または母親、被保険者が子供であることが一般的です。 この場合、契約者と受取人が同一になるので、所得税の課税対象になります。

満期保険金を一括で受け取る場合は一時所得

満期保険金・祝い金を一括で受け取る場合は、一時所得として所得税の課税対象になります。 一時所得の場合は50万円の特別控除があるため、満期保険金・祝い金から払込保険料総額を引いた金額が50万円を超えなければ税金はかかりません。

例えば、満期保険金の受取額が200万円、保険料の払込総額が190万円である場合、一時所得を計算すると結果がマイナスとなるため、所得税はかかりません。

満期保険金を毎年受け取る場合は雑所得

保険金を毎年受け取る場合は、雑所得として所得税の課税対象になります。雑所得の計算方法は、以下の通りです。

総収入金額は、その年に受け取った保険金の受取額です。

契約者と受取人が異なる場合は贈与税

契約者(保険料を負担する人)と保険金受取人が別人である場合、受け取った保険金やお祝い金は贈与税の課税対象です。例えば、契約者が夫、被保険者子ども、受取人が妻となるような契約です。 贈与税では110万の基礎控除があり、これを超える金額に対し課税されます。

贈与税は所得税と比較すると税率が高く、通常は契約者と受取人を同じにするのが一般的です。 祖父母が学資保険の保険料を負担し、父親または母親が受取人となる場合など、どうしてもそのような契約形態にしなければならない場合は、 受取額が110万円を超えないようにすることが重要です。

学資保険の保険金にかかる税金を少なくするポイント

ここでは、学資保険の保険金やお祝い金を受け取るときの税負担を抑えるために知っておきたいポイントを解説します。

基本的には一括受取のほうが税金はかかりにくい

学資保険の保険金を一括で受け取る場合、一時所得を計算するときに保険金と払込保険料総額から特別控除の50万円が差し引かれます。そのため、保険金の受取額と払込保険料総額の差が50万円未満であれば、所得税はかかりません。

たとえ保険金の受取額と払込保険料総額の差が50万円を超えたとしても、超過した分の半分しか一時所得にならないため、基本的には一括受け取りのほうが税金はかかりにくいといえます。

会社員は保険金の受取額によっては確定申告が不要になることがある

雑所得は、一時所得とは異なり特別控除はありませんが、 給与所得者であれば、年末調整を受けた給与所得以外の所得が、雑所得となる保険金もあわせて年間20万円以内であれば、確定申告は不要になります。

そのため、会社員のような給与所得者は、学資保険の学資金が雑所得の対象となるように分割を受け取った方が、一括受け取りよりも税負担を軽減できる場合があります。

ただし、確定申告が不要になるだけであって、所得税の課税が免除されるわけではありません。例えば、マイホームを購入した人が住宅ローン控除を受けるために確定申告をするときは、雑所得も合わせて申告してその分の税金を納める必要があります。
※住宅ローン控除は、所定の要件を満たすと住宅ローンを組んだ人の所得税が軽減される制度

個人事業主は確定申告が必須であるため、本業以外の所得が年間20万円以下でも申告しなければなりません。

なお、年末調整を受けた給与所得以外の所得が20万円以内であっても、住民税の申告と納税は必要です。

学資保険は生命保険料控除の対象

生命保険料控除は、生命保険に加入したタイミングで控除額の計算方法が異なります。実際の、控除額の計算方法をみていきましょう。

新制度の控除額の計算方法

2012年(平成24年)1月1日以降に学資保険に加入した場合、新制度の生命保険料控除が適用されます。所得税と住民税から控除される金額の計算方法は、以下の通りです。

〇所得税計算時の控除額

年間の支払保険料控除金額
20,000円以下払込保険料全額
20,000円超40,000円以下払込保険料×1/2+10,000円
40,000円超80,000円以下払込保険料×1/4+20,000円
80,000円以上一律40,000円

参照:税金の負担が軽くなる「生命保険料控除」|公益財団法人 生命保険文化センター

〇住民税計算時の控除額

年間の支払保険料控除金額
12,000円以下払込保険料の全額
12,000円超32,000円以下払込保険料×1/2+6,000円
32,000円超56,000円以下払込保険料×1/4+14,000円
56,000円以上一律28,000円

参照:税金の負担が軽くなる「生命保険料控除」|公益財団法人 生命保険文化センタ

新制度の生命保険料控除は「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3区分に分かれています。それぞれの対象となる契約は、以下の通りです。

一般生命保険料控除定期保険・終身保険・学資保険など
介護医療保険料控除民間医療保険・がん保険・介護保険など
個人年金保険料控除個人年金保険料税制適格特約が付いた個人年金保険

※個人年金保険料税制適格特約を付けるためには「年金の受取人は被保険者と同一であること」「保険料の支払い期間が10年以上で、定期的に支払う契約であること」などの要件を満たす必要があります

学資保険は一般生命保険料控除の対象となるため、定期保険や終身保険などの保険料と合算して控除額を計算します。

旧制度の控除額

2011年(平成23年)12月31日以前に学資保険に加入した場合、旧制度の生命保険料控除が適用されます。控除額の計算方法は、以下の通りです。

〇所得税計算時の控除額

年間の支払保険料控除金額
25,000円以下払込保険料全額
25,000円超50,000円以下払込保険料×1/2+12,500円
50,000円超100,000円以下払込保険料×1/4+25,000円
100,000円以上一律50,000円

参照:税金の負担が軽くなる「生命保険料控除」|公益財団法人 生命保険文化センター

〇住民税計算時の控除額

年間の支払保険料控除金額
15,000円以下払込保険料全額
15,000円超40,000円以下払込保険料×1/2+7,500円
40,000円超70,000円以下払込保険料×1/4+17,500円
70,000円以上一律35,000円

旧制度の生命保険料控除は「一般生命保険料控除」と「個人年金保険料控除」の2区分です。個人年金保険料税制適格特約が付いた個人年金保険以外は、すべて一般生命保険料控除の対象となります。

2011年12月31日より前の契約に関しては旧制度が適用され、 その後も契約変更がない限りは、引き続き旧制度が適用されます。 2012年1月1日以降に本契約または特約の付加・更新がされたものは新制度が適用されます。

旧制度と新制度の両方を適用できる場合の控除額

複数の生命保険に加入しており、旧制度と新制度の両方を受けられる場合「新制度と旧制度のどちらかを申告する」「新制度と旧制度の両方を申告する」を選択できます。両制度を申告する場合、控除額の上限は1区分につき所得税40,000円、住民税28,000円となります。

旧制度が適用される定期保険と、新制度が適用される学資保険に加入しているケースで考えてみましょう。旧制度の契約の年間保険料が60,000円を超えていると、控除額は40,000円になります。そのため、年間保険料が60,000円を超えている場合は、旧制度のみを申告したほうがより多くの控除を受けられます。

もし、定期保険の保険料が年間60,000円未満であるのなら、新制度と旧制度の両方を申告すると良いでしょう。

育英年金(養育年金)で発生する税金

育英年金とは、学資保険に加入している契約者が死亡または高度障害になった場合に、 期間満了までの間、育英費用として年金がもらえる特約のことです。育英年金を一時金で受け取る場合は、相続税の課税対象です。年金で受け取る場合も、年金を受け取れる権利(年金受給権)が相続税の課税対象となります。

また、受け取った年金は、雑所得として所得税や住民税の課税対象になります。ただし、相続税の課税対象になった部分は、課税対象にはなりません。

なお、子供を受取人にしていると、育英年金による保険金が子供の雑所得となります。例えば、16歳以上の子供がアルバイトなどをしていて、 年間の収入が103万円を超えてしまうと扶養から外れてしまい親の所得税や住民税の負担が増えてしまうことがあります。

学資保険の節税効果を最大限に高めるコツ

学資保険は教育資金の貯蓄だけではなく、 節税対策としての機能も果たします。 ここでは、より節税効果を高めるコツについて解説します。

保険料をまとめて払うときは「全期前納」を選択する

保険料の支払い方法には、 大きく分けると分割払い(年払い/半年払い/月払い)と一時払い、全期前納の3つがあります。

全期前納は、保険会社に預ける形で払い込むべき保険料を全期分まとめて支払い、 年や月など支払い期日ごとに預けたお金から引き落とされる支払い形式のことです。 分割払いに比べると、前納割引があるため、保険料を安く抑えることができるほか、 保険料払込をしている限り、毎年、生命保険料控除を受け続けることができます。

それに対し、一時払いは契約時に全期間分の保険料を一括で支払います。 全期前納払いと比較すると保険料は安い傾向にありますが、支払った年にしか生命保険料控除を受けられません。節税効果を高めたいのであれば、全期前納を選ぶと良いでしょう。

保険料の支払いは夫婦別に行う

生命保険においては、契約者と保険料負担者は別でも問題ないとされています。 所得税では4万円、住民税では2.8万円を控除額上限としていますが、 控除は他の保険も対象になるため、すでに控除額の上限を超えている場合、控除を受けることができません。

そのため、契約者と保険料負担者を別々にすることで、所得税や住民税の節税効果を高められる可能性があります。

ただし、保険料負担者と保険金受取人が別の場合は、贈与税の課税対象となり、かえって税負担が増えてしまう可能性があるため、本当にメリットがあるかどうかを確認して判断することが大切です。

祖父母が孫のために学資保険に加入する時の注意点

祖父母が孫のために学資保険に加入する場合があります。 ここでは、祖父母が加入する場合の注意点について解説します。

年齢や健康状態によっては加入できないことも

学資保険は生命保険の一種なので、契約者の健康状態や年齢によっては加入できません。 さらに契約者に万一のことがあった場合に以降の保険料の払い込みが免除される「保険料免除特約」がついている学資保険だと、 50歳以上は加入が難しいケースが多いです。 保険会社によっては、「保険料免除特約」の有無を選べないこともあるので注意が必要です。

満期金を受け取る時に贈与税がかかる可能性もある

祖父母が契約者で、受取人が父または母のように設定して学資保険に加入すると、契約者と受取人が別になるため、保険金やお祝い金が贈与税の課税対象となります。 年間の受取額が110万円を超えると、贈与税がかかります。

たとえ、分割受取を選択して年間の受取額が110万円以下であったとしても安心はできません。

毎年一定の金額を贈与することが決まっている「定期贈与」とみなされた場合は、 毎年の受取額ではなく受取額の合計が110万円を超えると贈与税がかかるためです。

父親または母親を契約者(保険料負担者)にして、祖父母が保険料に相当する金額を契約者である人の口座に振り込むのも方法でしょう。その場合「毎年贈与契約書を作成する」など、定期贈与とみなされないための工夫が必要となります。

保険料は高い傾向に

「保険料免除特約」付きの学資保険は、保険料も高くなる傾向にあります。 もし特約がなければ、契約者が途中で亡くなった場合は保険料が支払えなくなり途中解約という形になるので、 保険金が大幅に少なくなる可能性があります。契約は慎重に検討しましょう。

親権者の同意が必要

祖父母が契約者となって、学資保険に申し込みする場合は、 契約書に記載されている「親権者の同意を得るための親権者・後見人の署名欄」に同意が必要となります。 孫のために内緒で学資保険に加入し貯蓄することはできません。

まとめ

学資保険は、契約者、被保険者、受取人の関係や受け取り方法によって税金が変わりますが、 一般的な契約なら、基本的にそこまで高い税金がかかることはほとんどないでしょう。 これから学資保険を契約される方は、 保険金の受け取りで発生する税金を把握した上で、契約方法を決めておくと良いでしょう。

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監修者プロフィール

宮里 恵
(M・Mプランニング)

保育士、営業事務の仕事を経てファイナンシャルプランナーへ転身。
それから13年間、独身・子育て世代・定年後と、幅広い層から相談をいただいています。特に、主婦FPとして「等身大の目線でのアドバイス」が好評です。
個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っている他、お金の専門家としてテレビ取材なども受けています。人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。

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