子供の教育資金を準備する方法は、預貯金や学資保険だけではありません。少額からの長期投資を支援する非課税制度である「つみたてNISA」を利用し、毎月一定金額をコツコツと積み立てるのも選択肢のひとつです。

学資保険とつみたてNISAには、それぞれに一長一短があります。特徴やメリット、デメリットをよく理解し、ご自身に合った方法で教育資金を準備することが大切です。

本記事では、学資保険とつみたてNISAのメリットやデメリット、向いている人の特徴などをわかりやすく解説します。

学資保険とつみたてNISAのメリット・デメリットを比較

学資保険は、保険料を支払うことで、子供が所定の年齢に達したときに満期保険金や学資金を受け取れる保険です。小学校や中学校などへ進学したときに、お祝い金を受け取れる商品もあります。

つみたてNISAは、毎年一定金額までの投資で得た利益が非課税となる制度である「NISA」の一種です。つみたてNISAの場合、非課税枠は年間40万円、非課税期間は最長20年であり、最大800万円まで非課税で運用できます。

つみたてNISAの対象となっている商品は、金融庁が定める基準を満たした投資信託です。2022年8月18日時点で、215本がつみたてNISAの対象となっています。

※参照:金融庁「つみたてNISAの対象商品

まずは、学資保険とつみたてNISAのメリットとデメリットをみていきましょう。

学資保険のメリット・デメリット

学資保険のメリットとデメリットは、以下の通りです。

学資保険のメリット学資保険のデメリット
・親が万が一のときも教育資金を残せる
・所得税や住民税を節税できる可能性がある
・早期で解約すると元本割れの可能性がある
・インフレリスクがある

学資保険の多くには「保険料払込免除特約(特則)」が付いており、親や祖父母などの契約者である人が亡くなったり所定の高度障害状態になったりしたとき、以後の保険料の払込が免除されます。

払い込みが免除された後も、子供が所定の年齢に達すると満期保険金や学資金が予定通りに支払われるため、万が一のときも教育資金を子供に残せます。

また、学資保険の保険料は生命保険料控除の対象です。所得税や住民税を計算するとき、1年間で支払った保険料に応じた一定金額が所得から控除されるため、税負担を軽減できる可能性があります。

ただし、学資保険に加入をしてから数年で解約をすると、戻ってくるお金(解約返戻金)がそれまで払い込んだ保険料を下回り元本割れが発生することがあります。

加えて、学資保険にはインフレリスクがあります。インフレリスクは、将来的に物価が上昇することで、満期保険金や学資金の価値が目減りするリスクのことです。

つみたてNISAのメリット・デメリット

続いて、つみたてNISAのメリットとデメリットをみていきましょう。

つみたてNISAのメリットつみたてNISAのデメリット
・運用益が20年間非課税になる
・高いリターンが期待できる
・投資リスクがある
・損失が発生しても他の証券口座と損益通算できない

投資信託を売却したり分配金を受け取ったりすると、利益に対して20.315%の税金が課せられます。それがつみたてNISAであれば、年間40万円までの投資で得た利益が20年間にわたって非課税となります。

運用成果が好調であれば、大きなリターンが期待できるのもつみたてNISAの良い点です。例えば、毎月3万円を15年間積み立てる場合、年3%の利回りで運用できれば、最終的な積立額は約680.9万円(投資元本540万円、運用収益約140.9万円)となります。

一方で、つみたてNISAには投資リスクがあるため、運用成果が振るわなければ投資元本を下回る可能性があります。

通常の証券口座での取引で損失が発生したときは「損益通算」をすることで、他の証券口座の利益と相殺をすることで税負担を軽減できます。しかし、つみたてNISAの口座で発生した損失については、他の証券口座の利益と損益通算できません。

学資保険やつみたてNISAはどんな人に向いている?

続いて、学資保険とつみたてNISAのメリット、デメリットをもとに、それぞれが向いている人の特徴を紹介します。

学資保険が向いている人

学資保険が向いている人の例

・できるだけリスクを取りたくない人
・教育資金を準備しながら万が一にも備えたい人 など

学資保険では、保険料を払い込むことで契約時に定められた満期保険金や学資金、お祝い金を受け取れます。

最近の学資保険は、予定利率の低下により払込保険料総額よりも、満期保険金や学資金が少なくなる元本割れの商品もあるので、返戻率の計算をしてから加入しましょう。リスクを抑えて教育資金を準備したい人は、学資保険を活用するのが良いでしょう。

また、預貯金では、親が亡くなった時点で口座にある金額しか子供に残せませんが、保険料払込免除特約が付いた学資保険に加入すれば契約時に決めた金額を残してあげられます。

つみたてNISAが向いている人

つみたてNISAが向いている人の例

・投資期間を十分に確保できる人
・損失によるの資金不足をカバーできる人 など

つみたてNISAの対象商品である投資信託は、投資家から集めた資金を運用のプロが株式や債券などに投資をして、運用する金融商品です。少額からさまざまな資産(株式・債券など)や地域(国内・先進国・新興国など)に分散投資できるのが、投資信託の主なメリットです。

10年や15年などの投資期間を設けられるのであれば、つみたてNISAを利用して投資信託による分散・積立投資をすることで、元本割れのリスクを抑えられます。

ただし、元本が保証されているわけではないため、資金が必要なタイミングで損失が発生する恐れがあります。資金が必要なときに損失が発生した場合に、カバーできる資産を準備できる見込みがある人は、つみたてNISAを選ぶと良いでしょう。

学資保険やつみたてNISA以外で教育資金を準備する方法

教育資金を準備する方法は、学資保険とつみたてNISAだけではありません。ここでは、教育資金の準備に活用できる方法のうち、以下の特徴を解説します。

預貯金・財形貯蓄制度

教育資金を準備するための預貯金口座を作り、そこに毎月一定金額を積み立てていく方法もあります。預貯金には預金保険制度による元本保証があり、たとえ銀行が経営破綻をしても1,000万円までの元本と破綻日までの利息が保護されます。

貯蓄が苦手な人は「自動積立定期預金」や「財形貯蓄制度」を利用するのも方法でしょう。自動積立定期預金は、毎月一定金額を決まった日に普通預金口座から定期預金口座に振り替えるサービスです。

財形貯蓄制度は、あらかじめ決めた金額を給与やボーナスから天引きをし、預貯金や保険で積み立てる制度です。

自動積立定期預金は、給与が振り込まれる日の翌日を振替日にすることで、貯蓄に回す分を先取りできます。また、財形貯蓄制度を利用すると積立額が差し引かれたうえで指定の口座に給与が振り込まれるため、貯蓄が苦手な人でも着実に教育資金を準備できるでしょう。

終身保険

終身保険は、一生涯にわたって死亡と所定の高度障害状態に備えられる保険です。2022年9月現在は、保険料を払い込むあいだの解約返戻金が低く抑えられた「低解約返戻金型終身保険」が主流です。

低解約返戻金型終身保険は、保険料の払込みを短期払いにして、払い込みが終わった後に解約すると、保険料の払込総額を上回る解約返戻金を受け取れることがあります。解約返戻金が払込総額を上回るタイミングで解約し、子供の進学資金に充てるのも方法でしょう。

また、被保険者(保障の対象となる人)を親にすると、途中で親が亡くなったときは残された家族に死亡保険金が支払われるため、学資保険と同様に万が一のときも子供にまとまった教育資金を残してあげられます。

変額保険

変額保険とは、保険料の一部を株式や債券などで運用する保険です。死亡と高度障害状態に備えられる期間が一生涯である「終身型」と、20年や65歳などの一定期間である「有期型」があります。

変額保険は、運用先の実績に応じて死亡保険金や解約返戻金などが増減する仕組みです。運用先の成果が好調であれば、高いリターンが期待できますが、成果が不調であれば元本割れするリスクがあります。

一方で、変額保険の死亡保険金には最低保証があり、運用成果が振るわなくても最低保証額を下回らないのが一般的です。

子供の教育資金はいくら必要?

では、子供の教育資金はいくらかかるのでしょうか。文部科学省や日本政策金融公庫の調査をもとに、平均的な教育費をみていきましょう。

文部科学省の調査によると、幼稚園から高校までの教育費(授業料や給食費、教材の購入費用、家庭教師日など)は、以下の通りです。

 公立私立
幼稚園(3〜5歳)649,088円1,584,777円
小学校(第1〜第6学年)1,926,809円9,592,145円
中学校(第1〜第3学年)1,462,113円4,217,172円
高等学校(第1〜第3学年)1,372,072円2,904,230円
合計5,410,082円18,298,324円

※参照:文部科学省「平成30年度子供の学習費調査
※高等学校は全日制の金額

幼稚園から高校まですべて公立校に進学した場合の教育費は約541万円であるのに対し、すべて私立に通った場合は約1,830万円となります。公立と私立のどちらに進学するかで、教育費は大きく異なることがわかります。

続いて、大学進学時の入学費用や在学費用をみていきましょう。

 国公立大学私立大学
入学費用(受験費用・入学金など)77.0万円文系:95.1万円
理系:94.2万円
在学費用(授業料・通学費・教科書代など)460.0万円文系:608.4万円
理系:768.8万円
合計537.0万円文系:703.5万円
理系:863.0万円

※参考:日本政策金融公庫「教育費に関する調査結果(2020年10月30日発表)

国公立大学に進学したときの費用は537万円ですが、私立大学文系学部では703.5万円、理系学部では863万円の費用がかかる結果となりました。

また、上記の金額には下宿先の家賃や家具・家電の購入費用などが含まれていないため、親元を離れて大学に通う場合はさらに費用がかかるでしょう。

子供の教育資金については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご一読ください。

教育資金はいくら必要?必要資金の目安やおすすめの貯め方を解説

学資保険は、返戻率が100%以上の商品を選んで最後まで保険料を払い込めば、保険会社が経営破綻をしない限り、元本割れする心配はありません。しかし、2022年9月現在の返戻率は高くても110%弱であり、ひと昔前よりも低下しています。

※返戻率は、受け取った満期保険金や学資金などの総額÷払込保険料総額で計算

一方、つみたてNISAは運用成果次第では高いリターンが期待できますが、資金が必要になったときに元本割れするリスクがあります。そのため、必要になるタイミングが決まっている資金のすべてをつみたてNISAで準備するのはおすすめできません。

そこで、学資保険とつみたてNISAを併用するのも方法です。例えば、最低限必要な資金は学資保険で準備し、残りは許容できるリスクの範囲内でつみたてNISAをするという方法があります。

また「最低限必要な資金を預貯金や終身保険で準備する」「つみたてNISAの代わりに変額保険に加入する」といった方法も考えられます。

教育資金の準備方法に絶対的な正解はないため、準備方法ごとの特徴をよく理解したうえでご自身にあったものを選ぶことが大切です。

まとめ

学資保険とつみたてNISAのメリットとデメリットは、それぞれ以下の通りです。

 メリットデメリット
学資保険・親が万が一のときも教育資金を残せる
・所得税や住民税を節税できる可能性がある
・早期で解約すると元本割れの可能性がある
・インフレリスクがある
つみたてNISA・運用益が20年間非課税になる
・高いリターンが期待できる
・投資リスクがある
・損失が発生しても他の証券口座と損益通算できない

以上のメリットとデメリットをもとに、学資保険とつみたてNISAのどちらが適しているのかを考えると良いでしょう。もちろん、学資保険とつみたてNISAを併用して資金を準備するのも選択肢のひとつです。

どの方法で教育資金を準備すべきか判断が難しい場合は、お金のプロであるファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめします。

保険コンパスなら、何度でも相談無料です

監修者プロフィール

宮里 恵
(M・Mプランニング)

保育士、営業事務の仕事を経てファイナンシャルプランナーへ転身。
それから13年間、独身・子育て世代・定年後と、幅広い層から相談をいただいています。特に、主婦FPとして「等身大の目線でのアドバイス」が好評です。
個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っている他、お金の専門家としてテレビ取材なども受けています。人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。

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