「フリーランスになったら社会保険ってどうなるの?」「おすすめの保険はある?」と疑問に思っているフリーランスの人も多いのではないでしょうか。

これまで会社員として働いてきた人であれば、健康保険(社会保険)がどのようになるのか不安に思うでしょう。

この記事ではフリーランスが加入できる社会保険の種類や、保障の範囲などを詳しく解説します。フリーランスには会社員にはないリスクが存在します。そのためフリーランスが自分や家族を守るために加入しておくべきおすすめの保険も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

フリーランスは国民健康保険

会社員を退職し、フリーランスになった場合、一般的に国民健康保険に加入することになります。会社員が加入する健康保険(社会保険)の保険料は会社と折半されますが、フリーランスではそのような支援はありません。そのため国民健康保険は、会社員と異なり、保険料を全額自己負担する必要があります。

さらに、フリーランスが扶養する家族がいる場合、国民健康保険には扶養の仕組みがないため、家族も個々に国民健康保険への加入が必要です。家族構成によっては大きな負担となる可能性があるといえるでしょう。

国民健康保険の保険料は、居住する市区町村によって異なります。そのため、居住地の役所で具体的な保険料を確認することが必要です。もし保険料の負担が重いと感じた場合、保険料が比較的低い地域に引っ越すことで、負担を軽減することも1つの方法です。

また、退職後は国民健康保険への加入手続きを退職日の翌日から14日以内に行う必要があります。この際、国民年金への加入手続きも同時に済ませるとスムーズです。

国民健康保険料は経費として計上できませんが、所得控除の対象となるため、税金計算時には考慮しておきましょう。

フリーランスが国民健康保険に加入する以外の方法

フリーランスは国民健康保険だけしか加入できないわけではありません。フリーランスが国民健康保険に加入する以外の方法は、以下のとおりです。

  • 任意継続をする
  • 家族の扶養に入る
  • 国民健康保険組合に加入する

自身の収入によっては国民健康保険以外の選択をすることで、保険料を抑えることもできます。それぞれ詳しくみていきましょう。

任意継続をする

フリーランスになる際、以前勤めていた会社の健康保険を「任意継続」する方法もあります。任意継続を選ぶと、以前の職場の健康保険組合が提供する健康診断や福利厚生施設を使えるため、健康管理や趣味の時間に役立ちます。

さらに扶養家族がいる場合、任意継続により家族を保険の範囲内に含めることが可能です。国民健康保険においては各家族員が個別に加入する必要があるのに対し、扶養家族もカバーできるため大きなメリットといえます。

ただし、任意継続を行うためには以下の条件を満たす必要があります。

  • 退職日までに最低2ヶ月以上継続して社会保険に加入していること
  • 退職翌日から20日以内に必要書類を健康保険組合に郵送すること

また注意すべき点として、以下が挙げられます。

  • 任意継続の加入期間には2年の制限がある
  • 1日でも保険料の支払いを怠ると、保険から脱退となる
  • 保険料は会社と折半するのではなく、全額自己負担となる

任意継続はフリーランスとしての選択肢の1つですが、このように注意点もあります。そのためメリットと条件、注意点をしっかりと理解したあと、国民健康保険の保険料と比較し、どちらが経済的に合理的かを検討することが重要です。

家族の扶養に入る

フリーランスとして働く際、健康保険組合に加入している家族の扶養に入ることも可能です。家族の扶養に入ることの最大のメリットは、保険料がかからない点にあります。具体的には、その年の収入が月額10万8,000円以下、年収で130万円未満である場合、扶養家族として健康保険の対象になり、保険料を支払う必要がありません。また扶養に入ることで国民年金の支払いも不要になります。これにより、フリーランスとしての収入が不安定な場合や、スタートアップ期において大きな経済的負担を軽減できます。

ただし、この選択肢を利用するには、上記の収入条件を満たす必要があるため、年間の収入を正確に把握し、条件をクリアしているかを確認することが重要です。このように、フリーランスとして家族の扶養に入ることは、保険料の節約に役立ち、経済的な安心感をもたらす選択肢の1つです。自分の年収と家族の保険状況を考慮し、最適な健康保険の選択を行いましょう。

国民健康保険組合に加入する

一定額以上の所得を得ているフリーランスの場合、国民健康保険組合に加入することで、国民健康保険よりも保険料を抑えられる可能性があります。国民健康保険組合には以下のような組合があり、業種によって加入できる組合が異なります。

  • 関東信越税理士国民健康保険組合
  • 文芸美術国民健康保険組合
  • 東京芸能人国民健康保険組合
  • 東京技芸国民健康保険組合
  • 東京美容国民健康保険組合
  • 京都料理飲食業国民健康保険組合
  • 大阪文化芸能国民健康保険組合 など

加入に際しては、審査や年会費が必要な組合もあります。また、保険料も組合によって異なるため、加入を検討する際には、自分の収入や国民健康保険との保険料の比較が重要です。比較することで、自身にとって最も経済的に合理的な健康保険の選択が可能になるといえるでしょう。

フリーランスは民間の保険への加入も検討したほうが良い理由

フリーランスは国民健康保険以外にも、さまざまなリスクに備えて民間の保険も検討しましょう。フリーランスは、以下のような会社員にはないリスクが存在します。

  • 傷病手当金がない
  • 労災保険がない
  • 老後の年金受取額が少ない

それぞれ詳しく解説します。

傷病手当金がない

フリーランスは傷病手当金の受給ができません。傷病手当金とは、病気やけがで連続して4日以上働けなくなった際に、平均収入の最大3分の2を最長1年半にわたって受け取ることができる制度です。会社員の場合、社会保険を通じて受け取ることが可能ですが、フリーランスで国民健康保険に加入している場合はこの制度がありません。

さらに、以前勤めていた会社の健康保険を任意継続した場合でも、傷病手当金を受給はできません。そのためフリーランスとして働く場合は、民間の保険への加入を検討することが重要です。民間の保険では、仕事を休む必要がある際に収入を補うための保険や病気やけがで収入が途絶えた場合に備える保険があるため、経済的な安心感を持てます。

労災保険がない

労災保険とは、労働者が労働中や通勤時に傷病した場合、被害者とその遺族に経済的な保障を提供する制度です。これには治療費の補償休業補償金などが含まれますが、一般的なフリーランスは労災保険の対象外となることが多いです。

ただし、フリーランスでも「特別加入」制度を利用することで労災保険に加入できる場合があります。この制度は、さまざまな職種をカバーしており、将来的にはさらに多くの職種が労災保険の特別加入の対象となる可能性があります。

しかし、現在では加入できる職種に限りがあり、すべてのフリーランスが自動的に対象となるわけではありません。このような背景から、フリーランスとして働く場合、労災保険の特別加入が可能かどうかを確認することが重要です。

特別加入ができない場合、または特別加入を行っても十分なカバーが得られない場合は、民間保険への加入を検討することが大切です。民間の保険では、労災保険と同様にリスクをカバーする保険商品が存在します。フリーランスとして働く際は、自身にどのようなリスクがあるのか理解し、適切な保険に加入してリスクに備えることが重要です。

老後の年金受取額が少ない

会社員からフリーランスになると、健康保険だけでなく年金の種類も変わります。具体的に、会社員が支払っている厚生年金と国民年金の両方に代わり、フリーランスは国民年金のみに加入します。会社員の場合、老齢基礎年金老齢厚生年金の両方を受給することが可能です。しかしフリーランスの場合は国民年金のみのため、会社員の時の老齢厚生年金はもらえますが、将来もらえる老齢年金の額が少なくなる可能性があります。

実際に67歳以下の令和5年国民年金額をみてみましょう。

年度国民年金(老齢基礎年金(満額))厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)※
令和5年度(月額)66,250円224,482円

※平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準の場合

このようにフリーランスの老後の年金受取額は、会社員と比べて少なくなります。加えてフリーランスは、子が18歳の年度末までは遺族基礎年金を受け取れますが、その後中高齢寡婦加算もなく、厚生年金を25年以上払っていない場合は遺族厚生年金もないため、遺族年金の受取額も減少します。

このような状況を踏まえると、フリーランスとしてのキャリアを選択する際は、ただ単に現在の収入だけでなく将来の生活資金にも目を向けることが大切です。老後の年金受取額が少なくなることを理解し、それを補うための計画を立てておくと安心といえます。

業務の賠償責任を負う可能性がある

フリーランスは個人で仕事をしており、万一仕事中にトラブルが発生した場合、その責任を負う会社や組織が存在しません。そのためフリーランスが仕事上のミスや事故によりクライアントに損害を与えた場合、その全責任を自身で負うこととなります。

例えば、提供したサービスや製品の欠陥、契約違反、第三者への損害など、仕事に関連したさまざまな問題が発生する可能性があります。これらの問題は、場合によって大きな経済的損失や訴訟へと発展することも考えられるでしょう。会社員の場合、こうしたリスクは多くの場合、雇用主の責任となりますが、フリーランスはすべて自己責任となります。

フリーランスとして安定して働くためには、仕事に関連するリスクに適切に備えることも重要です。業務の賠償責任を負う可能性があることを認識し、それに対応するための保険に加入することで、安心して事業を運営できるといえるでしょう。

フリーランスにおすすめの保険

生命保険や医療保険の加入の重要性は、フリーランスだけでなく会社員や他の職業の人にも当てはまります。ここでは特にフリーランスが注目すべき保険に焦点を当てて紹介します。フリーランスにおすすめの保険の保険は、以下のとおりです。

  • 収入保障保険
  • 就業不能保険
  • 個人年金保険

それぞれ詳しく解説します。

収入保障保険

フリーランスとして働く際、特に家族を養っている場合、収入保障保険の加入を検討することが重要です。収入保障保険は、保険契約者が死亡または高度障害の状態になった場合に、毎月一定額の保険金を保険期間の満了まで支払う保険です。この保険金は、葬儀費用遺された家族の生活費子どもの教育費などに充てることができます。

フリーランスの場合、国民年金のみに加入しているため、亡くなった後の遺族年金が会社員時代に比べて少なくなることがあります。このため、家族を持つフリーランスにとって、収入保障保険への加入は、万一のときの家族の経済的な安全を確保するために非常に重要です。

また、すでに死亡保険に加入している人でも、フリーランスとしての生活に転向したことで、必要な保障額が変わる可能性があります。収入額や生活状況の変化、遺族年金額の減少に伴って、適切な保障額を見直すことが大切です。これにより、必要な保障を過不足なく確保し、家族の将来に対する不安を軽減できます。

フリーランスとしての働き方は、多くの自由を提供しますが、それに伴うリスクも存在します。収入保障保険への加入を検討することで、これらのリスクに対応し、自身と家族の未来を守ることが可能です。

詳しくはこちらで解説しています。

就業不能保険

就業不能保険とは、病気やけがで働けなくなった場合に、保険金が毎月支払われる保険です。フリーランスは、仕事を休むことが直接的に収入の途絶える原因となるため、就業不能保険は経済的な安全網として非常に重要です。

例えば会社員の場合、働けなくなった際には有給休暇を利用し、その後は傷病手当金の制度を利用できますが、フリーランスにはそのような制度が存在しません。そのため、フリーランスが働けなくなった場合、その時点で収入が途絶え、生計を立てることが困難になります。

就業不能保険には、病気やけがだけでなく、精神疾患を含む多様なケースに対応しているものもあります。そのため、保障の範囲や条件をしっかりと比較検討し、自分の職業や健康状態に合った保険を選ぶことが重要です。

詳しくはこちらで解説しています。

個人年金保険

個人年金保険とは、将来の年金を自らの手で準備するための保険です。フリーランスは国民年金のみに加入するため、会社員と比較して将来受け取る年金額が比較的少なくなり、老後の資金不足に陥るリスクが高くなります。このため、将来に備えて自分で資金を蓄えることが必要です。

個人年金保険のメリットの一つは、生命保険料控除の対象となることです。所定の条件を満たす個人年金保険に加入すると個人年金保険料控除として、税金の控除を受けられます。これにより、税金の負担を軽減することが可能です。

また、年収や他の貯蓄・投資計画にも依存しますが、既に投資や個人型確定拠出年金(iDeCo)などを利用している場合でも、個人年金保険に加入して、その控除分を利用することは有効です。個人年金保険は、老後の資金不足を防ぐための手段の1つです。フリーランスは、安定した会社員とは異なり、自身で退職後の生活資金を計画し、準備しておくことが大切です。

詳しくはこちらで解説しています。

賠償責任保険

フリーランスになると、仕事で何か問題が起きたとき、そのリスクを自分で全て扱わなければなりません。これは、会社員の場合、通常は会社がそのリスクを負担してくれるところが違います。例えば、仕事でミスがあった場合、取引先からお金を請求されることがあります。賠償責任保険は、このようなときにお金の問題をカバーするための保険です。

賠償責任保険がカバーする範囲は広く、例えば以下のようなトラブルに対して補償が受けられます。

  • 情報漏えい
  • 納品物に問題が生じた場合
  • 納期遅れ
  • 著作権侵害 など

こうしたトラブルは予期せぬ形で起こることが多く、損害賠償請求された場合、数百万円から数千万円の大きな金額を請求される可能性もあります。フリーランスは、こうしたリスクに対して企業のような強力なバックアップがないため、賠償責任保険への加入は非常に重要です。賠償責任保険に加入することで、万が一の事態が発生した際に、巨額の損害賠償金を個人で負担することから免れることができます。

フリーランスとして働くことは、多くの自由とともに多大な責任を伴います。そのため、自身のビジネスを守り、安心して業務に取り組むためには、適切な賠償責任保険に加入することが重要です。

まとめ

フリーランスとして働く際には、健康保険、年金、民間保険など、さまざまな保険の加入を検討することが重要です。

国民健康保険はフリーランスにとって基本となる保険ですが、会社員のように労災保険や傷病手当金、厚生年金の恩恵を受けられないため、就業不能保険や賠償責任保険、個人年金保険などの民間保険への加入を考慮する必要があります。これらの保険は、病気やけがによる収入の途絶え、業務上のトラブル、老後の生活資金の不足など、フリーランス特有のリスクに対処するための安全網となります。

自身の職業や生活状況に合わせて最適な保険を選ぶことで、フリーランスとしてのキャリアを安定させながら、将来への不安を軽減することが可能になります。

保険コンパスなら、何度でも相談無料です

監修者プロフィール

COMPASS TIMES
編集部

保険やお金に関するコラムはもちろん、身近な病気から最先端医療まで、様々な分野で活躍する名医へのインタビュー記事を集めた「名医の羅針盤」など幅広く特集。

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