がん保険は、生まれて始めてがんと診断されたときや、所定のがん治療を受けたときなどに給付金を受け取れる保険です。

ひと口にがん保険といっても、保障内容は商品や保険会社によって異なります。また、がんの治療方法は時代とともに変化しているため、定期的に保障の見直しをしないと、万が一のときに十分な給付金を受け取れないかもしれません。

本記事では、がん保険の見直しをする必要性や検討するタイミング、保障内容を決めるときのポイントなどを解説します。

がん保険の見直しをする必要性

がん保険を定期的に見直した方がいい理由は、時代によってがんの治療方法が変化する可能性があるためです。

ひと昔前、がんの主な治療方法は外科的手術でしたが、現代ではそれに放射線治療と薬物療法(抗がん剤治療など)を加えた3つが主流となっています。また、通院による放射線治療や薬物療法を受ける人も増えてきました。

古いタイプのがん保険は、入院や手術をしたときの保障が中心です。がん保険の見直しをしていないと、がんの通院治療を受けたときに十分な給付金を受け取れないかもしれません。

がん治療方法には他にも、免疫療法や遺伝子治療などさまざまな種類があります。今後も医療技術の進歩により、がん治療は変化していくでしょう。がん保険に加入したあとも定期的に見直しをし、時代にあった保障内容にすることが大切です。

がんの患者数や死亡者数は増加傾向にある

国立がん研究センターによると、がんに罹患(りかん)した人の数は、2000年が男女合計で約53.2万人であったのに対し、2019年は99.9万人に増加しています。

また、がんで死亡した人数についても、2000年の約29.5万人から2019年には約37.6万人に増えました。

※出典:国立がん研究センター「がん情報サービス

がんの罹患者数や死亡者数が増加しているのは、全体の人口に対する高齢者の割合が増加したことが主な理由です。

国立がん研究センターのがん情報サービスには「高齢化の影響を除くとがんになる人の割合は2010年頃からほぼ横ばいになり、また死亡する人の割合は90年代半ばから減少している」という旨の解説も掲載されています。

医療技術の進歩により、がんを早期に発見して適切に治療をすることができれば、完治や寛解(がんが発症していない状態続くこと)が見込めるでしょう。

しかし、がん保険でがんに備える必要性が低くなったわけではありません。がんには「転移や再発の可能性がある」という特徴があり、長期にわたる通院治療が必要になるケースもあるためです。

がん治療は入院治療から通院治療にシフトしている

続いて、厚生労働省の調査をもとに、がん(悪性新生物)の入院患者数と外来患者数、平均入院日数をみていきましょう。

2002年2008年2014年2020年
入院患者数139,400人141,400人129,400人112,900人
外来患者数119,700人156,400人171,400人182,200人
平均入院日数35.7日23.9日19.9日19.6日

※出典:厚生労働省「令和2年患者調査の概況

調査結果をみると、入院患者数は減少傾向にある一方で、外来患者数は増加傾向にあります。また、平均入院日数は減少しているため、がん治療は入院治療から通院治療にシフトしてきていることが見て取れます。

がんの完治に向けた治療を終えたあとに再発や転移が発覚したことで、通院治療を受けながら生活をする人は少なくありません。

通院治療が長きにわたると医療費が高額になるだけでなく、以前のように働けなくなって収入が減少するおそれもあります。加入中のがん保険に、十分な通院保障がない場合は、保障内容の見直しが必要かどうかを検討した方がいいでしょう。

がん保険の見直しを検討するタイミング

がん保険の見直しをするといいタイミングは、以下の通りです。

  • 結婚や出産、マイホーム購入などのライフイベントを迎えたとき
  • 10年以上がん保険の見直しをしていないとき
  • がん保険の契約が更新を迎えるとき

ライフイベントを迎えたことで家族構成や生活環境が変化すると、必要な保障額が変わります。そのため、がん保険の保障に過不足がないかを確認し、必要に応じて保障内容を見直しましょう。

また、10年以上前にがん保険に加入しており、契約内容を変更していないのであれば、見直しを検討した方がいいかもしれません。がんの入院や手術が重点的に保障されている一方で、通院保障が手薄である可能性があるためです。

保険期間が5年や10年など一定であるがん保険に加入している場合は、契約が更新を迎えるタイミングで見直しをするといいでしょう。更新をすると保険料が上がる場合は、ほかのがん保険に乗り換えると負担の増加を抑えられる可能性があります。

見直す前に知っておきたいがん保険の基礎知識

がん保険の見直しをする際は、保障内容や保険期間(保障を受けられる期間)、給付金の支払われ方などを知ることが重要です。

がん保険の主な保障内容

がん保険の主な保障は、以下の通りです。

  • がん診断給付金
  • 抗がん剤治療給付金
  • 放射線治療給付金
  • ホルモン剤治療給付金
  • 入院給付金
  • 手術給付金
  • 通院給付金
  • がん先進医療給付金

※名称や保障内容は保険会社によって異なります

上記のうちがん診断給付金は、所定のがんと診断されたときに、50万円や100万円などの給付金が支払われる保障です。商品によっては、一定の要件を満たすと、がんの再発時も支払いの対象となります。

抗がん剤治療給付金や放射線治療給付金、ホルモン剤治療給付金は、所定のがん治療を受けた月ごと(または1回ごと)に給付金が支払われる保障です。

がん先進医療給付金は、がんを治療するための先進医療を受けたときに、実際にかかった技術料と同額の給付金が支払われます。給付金額の上限は、通算2,000万円が一般的です。

終身がん保険と定期がん保険がある

がん保険には、保険期間が一生涯ある「終身がん保険」と、保険期間が5年や10年などの一定である「定期がん保険」の2種類があります。

終身がん保険は、途中で解約をしない限り一生涯にわたってがんに備えることができます。保険料が途中で上がることは、原則としてありません。2023年11月現在は、終身がん保険が主流であり、豊富な選択肢の中から選べます。

定期がん保険は、加入時の保険料が割安です。また、保険期間が終わったあとに更新をすると、引き続き一定期間の保障を得ることも可能です。ただし、更新のたびに保険料は上がっていき、更新可能な年齢にも上限があります。

定額保障と実額補償がある

同じがん保険でも、生命保険会社で加入できるのは「定額保障」であるのに対し、損害保険が取り扱うのは「実額補償」である点が異なります。

定額保障は「がんと診断されると100万円」「がん治療をするための入院1日につき1万円」のように給付金額が定額であるタイプです。支払い条件を満たすと、実際にかかった治療費とは関係なく、契約時に決めた金額の給付金が支払われます。

実額補償は、自己負担した治療費と同じ金額の給付金が支払われるタイプです。入院や通院の日数にかかわらず、実際にがん治療でかかった治療費の分だけ給付金が支払われます。

がん保険と医療保険の違い

がん保険は、がんの保障に特化した保険です。がんと診断されたときや、がんの治療を目的とした入院・手術をしたとき、所定のがん治療を受けたときなどに、給付金が支払われます。

対して医療保険は、病気やケガによる入院・手術に備える保険です。がんも含む幅広い疾病が保障の対象となっているだけでなく、骨折などのケガによる入院・手術も保障されます。

ただし、医療保険の主な保障は、入院時や手術時に支払われる給付金です。がん治療を目的とした入院や手術も保障対象ですが、通院治療などにより手厚く備えたいのであればがんの通院を保障する通院特約を付加したり、がん保険で通院の保障を検討するとよいでしょう。

がん保険の見直しをするときのポイント

続いて、がん保険の見直しをする際に押さえておきたいポイントをご紹介します。

公的医療保険の制度内容を踏まえて保障を選ぶ

公的医療保険(健康保険・国民健康保険など)の対象であるがん治療を受けた場合は、医療費の自己負担が最大3割となります。

また、ひと月あたりの自己負担額が一定の上限額を超えたときは「高額療養費制度」を申請すると、超過分をあとで払い戻してもらえます。

会社員や公務員などは、病気やケガで連続して3日の後、4日目以降仕事を休み、勤務先より給与の支払いがない場合は「傷病手当金」の申請が可能です。傷病手当金を申請すると、最長で1年6か月にわたって、一定の給付金を受け取れます。

見直しをする際は、公的医療保険から受けられる給付も考慮し、がん保険でどの程度の備えを準備するのかを考えましょう。

自分自身の希望に合った保障を選ぶ

がん保険は、保障を手厚くすれするほど保険料は高くなるため、保障内容を決める際は、自分自身にとって必要なものを選ぶことが大切です。

例えば、長期にわたる通院治療の備えを重視したいのであれば、治療給付金を手厚くするのがいいといえます。

がんになったとき、まとまった給付金を受け取って使い道を自分自身で決めたいのであれば、がん診断給付金が手厚い商品を選ぶといいでしょう。がんの再発に備えたいのであれば、がん診断給付金が複数回支給される商品を選ぶと安心です。

自分自身にとって必要な給付金額を考える

がん診断給付金や入院給付金を付ける場合は、自分自身や家族にとって必要な給付金額を検討しましょう。

例えば、がんの治療費だけでなく、収入の減少もがん保険でカバーしたいのであれば、給付金額を手厚くするのも方法です。

特に「がんで働けなくなると家族が生活に困る可能性が高い」「自営業でありがんで働けなくなっても傷病手当金を受け取れない」といった人は、給付金額を手厚くした方がいいかもしれません。

給付金が支払われる要件を確認する

保険会社によって、がん保険の保障内容や給付金が支払われる要件が異なるため、見直しの際に必ず確認しておきましょう。

特によく確認しておきたいのが「上皮内新生物」の取り扱いです。上皮内新生物は、腫瘍細胞が身体の表面を覆う上皮内にとどまっている状態のことであり、非浸潤がんともいいます。

保険会社の商品によっては、上皮内新生物と診断された場合に、給付金額が削減されるケースや給付金がまったく支払われないケースがあります。

再発時も受け取れるがん診断給付金で備える場合は、給付金が支払われる回数や頻度などを確認しましょう。支払われる回数は「5回まで」や「無制限」など、支払いの頻度は「1年に1回」や「2年に1回」がんで入院したとき、または所定の通院をしたときなど商品によって条件が違います。

給付金についてはこちらの記事でも詳しく紹介しています。

先進医療や自由診療が保障されるかも確認する

先進医療とは、厚生労働大臣の認可を受けた高度な医療のことです。先進医療は公的医療保険の給付対象外であるため、受けたときの技術料は全額自己負担となります。

特に、がんを治療する際に用いられる「陽子線治療」や「重粒子線治療」は、以下の通り技術料が高額な傾向にあります。

  • 陽子線治療:約269万円
  • 重粒子線治療:約316万円

※参考:中央社会保険医療協議会「令和4年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について

また、日本国内で承認されていない医療技術や薬剤を用いた治療である「自由診療」を受けると、公的医療保険の給付対象となる部分も含めて費用の全額が自己負担となります。

「患者申出療養制度」を利用すると、保険給付の対象となる部分は最大3割負担となりますが、自由診療の部分については全額自己負担しなければなりません。

先進医療や自由診療の費用は高額になりやすく、貯蓄のみで支払いをするのは難しいかもしれません。がん保険の見直しをする際には、先進医療や自由診療を受けたときの費用がカバーされる保障となっているかどうかも確認するといいでしょう。

がん保険の見直し・乗り換えをするときの注意点

最後に、がん保険の見直しをするときに押さえておきたい注意点をご紹介します。

健康状態によっては加入できないことがある

がん保険に新規で加入をするときは、現在の健康状態や過去の一定期間にかかったことのある病気などを、保険会社に告知し受けなければなりません。

保険会社は、告知された内容をもとに審査をし、引き受けができるかどうかを判断します。告知した内容によっては、保険会社に加入を断られることがあります。

保険料が高くなることがある

年齢を重ねると、がんをはじめとした病気に罹患するリスクが高まるため、保険料も高くなっていきます。

そのため、見直しによりがん保険を乗り換える場合、保険料負担が重くなる可能性があります。

保障を受けられない期間ができることがある

がん保険の多くには、90日間(または3か月)の免責期間があります。がん保険に加入したあと、免責期間中にがんと診断されると契約は無効となります。

見直しをする場合は、新しく契約したがん保険の免責期間が過ぎるまで、もとのがん保険の解約を待つのも方法です。保険料の払い込みは重複しますが、保障に空白が生じるのが防ぐことができます。

まとめ

がん保険に加入したあとも定期的に見直しをし、がんの治療方法や生活背景などの変化に保障内容を合わせることが望ましいといえます。

見直しをする際は、公的医療保険の給付内容を踏まえ、どのように備えたいのかを考えて、保障の種類や給付金額を設定することが大切です。

がん保険の保障内容や商品を、どのように選べばいいかわからないときは、保険の専門家やファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめします。

保険コンパスなら、何度でも相談無料です

監修者プロフィール

COMPASS TIMES
編集部

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