病気やケガなどで自分自身の体に万が一のことが起こると、場合によっては経済的な損失が大きくなり生活が不安定になってしまいます。しかし、生命保険に加入しておけば家計に与えるダメージを抑えやすくなるので、経済的な不安や悩みを抑えつつ日々の暮らしを送れるようになるでしょう。

生命保険に加入する目的やタイミングは人それぞれですが、年齢によっては「これから生命保険に加入する必要があるのだろうか」と思うかもしれません。特に、高齢者の場合、将来病気やケガによって経済的な負担が生じるリスクや、リスクを補う資金が十分あるかによって、生命保険の必要性が変わってきます。

今回は、高齢者が生命保険に加入する必要があるかを判断するポイントや、適切な生命保険の選び方を詳しく説明します。

高齢者の人口推移を知っておこう

そもそも、日本には高齢者がどれくらいいるのでしょうか。

総務省統計局によると、2019年では65歳以上の高齢者の人口は3,588万人となっており、前年の3,556万人より32万人も増加していることが分かっています。人口減少が深刻化している日本ですが、人口の28.4%は高齢者であることを考えると、いかに日本の高齢者が多いかが分かります。

また、日本の高齢者の割合は今後も上昇し続けると考えられており、2025年には30.0%、2040年には35.3%になるとされています。将来的に超高齢化社会が到来すると予想されている現状を考えると、病気やケガなどのリスクへの備えとして生命保険を考える重要性は高いでしょう。

年齢ごとの平均余命、平均寿命

生命保険に加入する必要性を考えるには、高齢者の人口だけでなく年齢ごとの平均余命や平均寿命を把握しておくことも大切です。

平均余命とは、ある年齢の人が何歳まで生きることができるかを表すものです。厚生労働省によると、令和元年の時点で65歳である人の平均余命は、男性が19.83年、女性が24.63年となっています。つまり、令和元年の時点で65歳であれば、男性が84歳、女性が89歳まで生きると予想できます。

一方、平均寿命とは、0歳の人が何歳まで生きることができるかを表すものです。令和元年の平均寿命は、男性が81.41歳、女性が87.45歳となっています。もちろん、医療技術の発展や生活環境の変化などによって平均寿命が変わります。そのため、生命保険に加入する必要性を考える際は、平均寿命だけでなく平均余命も参考にしながら判断することが大切です。

年代ごとの生命保険の加入率

高齢者全体だけでなく、年代ごとの生命保険の加入率も知っておきましょう。

生命保険文化センターによると、平成30年の時点で世帯主の年齢が40~64歳である世帯の90%以上が何らかの生命保険に加入していることが分かっています。中でも、世帯主の年齢が55~59歳の場合、生命保険の加入率が94.1%と最も高くなっています。

世帯主の年齢が60歳を超えると少しずつ生命保険の加入率が低下してきますが、それでも79歳までは生命保険の加入率は80%を超えており、多くの高齢者が生命保険で不測の事態に備えているようです。

生命保険が高齢者に必要か判断するポイントとは?

ここまでは、高齢者の人口推移や平均余命、平均寿命、生命保険の加入率を説明しました。

一般的なデータに基づいて生命保険が必要かどうかを判断するのも良いですが、特に高齢者の場合、資産の状況や相続に関する考え方などによって取るべき行動が変わるので、個別的な状況に応じて生命保険の必要性を判断しなければなりません。

以下では、生命保険が高齢者に必要か判断するポイントを詳しく説明します。

十分な預貯金が用意できているか

先述したように、生命保険は、病気やケガなどで生じる経済的な負担をカバーするものです。そのため、このようなリスクを預貯金でカバーできるのであれば、生命保険に加入する必要性は低いでしょう。

しかし、十分な預貯金が用意できていない人の場合、万が一のときにご家族に経済的な負担を与えてしまうかもしれません。生命保険文化センターによると、2020年では葬儀にかかる費用の平均総額は約184万円となっています。そのため、「十分な預貯金はないけれど、せめてお葬式代くらいは自分で残しておきたい」という人は、生命保険に加入する必要性は高いです。

相続税を抑えたいかどうか

「自分の預貯金があるから生命保険に加入しなくても大丈夫」と考える人もいるかもしれません。しかし、将来的に預貯金などの資産を相続することになった場合、金額によってはたくさんの相続税がかかってしまうので注意が必要です。

このような負担を抑える方法として、生命保険に加入して死亡保険金を用意することが挙げられます。遺族が受け取る死亡保険金には「500万円×法定相続人数」の非課税枠が設けられているため、法定相続人数が多いほど非課税枠が増加します。

たとえば、法定相続人が妻と子ども2人である場合、非課税枠は1,500万円です。死亡保険金額を1,500万円に設定しておけば、相続税として課税される金額を大幅に抑えられるので、家族に残せるお金が増えることになります。

【高齢者向け】生命保険の適切な選び方

「生命保険に加入する必要がある」と判断しても、高齢者の場合、年齢層が低い人とは違った視点で保険を選ばなければなりません。

以下では、高齢者向けの生命保険の選び方を詳しく説明します。

適正な保険料を設定する

生命保険の多くは、年齢が高くなるほど保険料が高くなる傾向があります。たとえ生命保険に加入しても、保険料の負担が大きいと家計が苦しくなり、保険を解約しなければならなくなるリスクが高まるので注意が必要です。

高齢者が生命保険に加入するときは、何歳までにいくら保険料を支払い、死亡保障がいくら受け取れるのかを計算してから加入することが大切です。また、保険が一生涯継続する終身タイプの生命保険は、保険料のほうが受け取れる保険金よりも高くなる年齢を確認しておくと、適切な保険料を設定しやすくなります。

過不足のない保障内容にする

生命保険に加入するには、保険料を意識することも大切ですが、保障内容に過不足がないかの確認も大切です。保険料を抑えることばかり意識すると、いざというときに必要なお金を受け取らなくなるため、通院費や治療費、葬儀費用や子どもの教育資金などの費用をまかなえなくなるかもしれません。

先述したように、年齢を重ねるほど生命保険の保険料は高くなりがちですが、不測の事態に備えて十分な保障を用意しておくことも重要です。生命保険に加入する際は、将来起こりうるどのようなリスクに備えたいか、どれくらいの金額を保障してもらうべきかをよく考えましょう。

目的に合った保険期間を設定する

ある程度年齢を重ねてから生命保険に加入する場合、どれくらいの期間備えるかという「保険期間」を適切に設定する必要があります。

たとえば、葬儀費用やお墓代をまかなえる資金を用意したいのであれば、長生きに備えて一生涯保障してくれる終身タイプの生命保険に加入したり、定期タイプでも保険期間を85歳や90歳にように長めに設定するのがおすすめです。一方、万が一の事態が起こったときに、家族の生活費や子どもの教育資金などを残したいのであれば、10年や20年のように期間を限定して保険に加入すると良いでしょう。

ほかにも、住宅ローンを払い終わるタイミングに合わせて生命保険の保険期間を設定する方法もあります。このように、生命保険で設定すべき保険期間は加入する目的によって変わるため、あらかじめ備えが必要な期間を考えておきましょう。

公的医療保険制度で補えないリスクを考える

将来起こりうるリスクに備える方法として、預貯金や生命保険をイメージする人は多いでしょう。しかし、これらのほかに公的医療保険制度を活用することでも経済的な損失を補うことが可能です。

公的医療保険制度とは、病気やケガなどで生じる医療費を国や自治体が一部負担してくれる制度で、住民から集めた税金や社会保険料などが財源になっているのが特長です。この制度を活用すれば、入院や手術などで多額の経済的負担が生じても、自己負担額をある程度抑えられます。そのため、生命保険に加入する際は、入院中の食事代や個室使用料、先進医療にかかる費用や死亡保障など、公的医療保険制度で補えないリスクを考えて加入することが大切です。

持病がある高齢者でも加入できる生命保険の種類

病気やケガ、死亡や高度障害状態などのリスクに備えるために加入する生命保険ですが、すでに持病がある高齢者の場合、生命保険への加入を断られるケースがあります。

しかし、生命保険の種類によっては、持病がある高齢者でも加入できるようになっているものもあります。以下では、このような特長がある生命保険の種類を詳しく説明します。

引受基準緩和型、限定告知型の生命保険

引受基準緩和型、限定告知型の生命保険は、文字通り生命保険に加入するための基準が緩和されているのが特長です。加入時に必要な告知項目が一般的な生命保険よりも限られているため、持病がある高齢者でも加入しやすい生命保険です。

ただし、引受基準緩和型、限定告知型の生命保険には、加入してから一定期間は万が一のときに受け取れる保険金額が減額される保険商品もあるので、必要な保障を用意していても、保険金を請求する時期によっては十分なサポートが受けられない場合があるので注意が必要です。

無選択型、無告知型の生命保険

無選択型、無告知型の生命保険は、引受基準緩和型、限定告知型の生命保険とは違い、そもそも告知の必要がないタイプの生命保険です。保険会社が設定する条件を満たしていれば基本的には誰でも加入できるため、引受基準緩和型、限定告知型の生命保険に加入できなかった人でも必要な備えを用意できます。

しかし、無選択型、無告知型の生命保険、一般的な生命保険に同じ条件で加入したときと比べて保険料が割高になりがちなので注意が必要です。保険会社によっては「持病が悪化した場合は保障の対象外」と定めているところもあるため、事前にルールを確認しておきましょう。また、年齢によっては加入を断られるケースもあるため、なるべく早めに加入を検討するのがおすすめです。

まとめ

ご紹介したように、高齢者といっても預貯金の程度やライフプランに個人差があるため、自分自身の状況を考えながら生命保険の必要性を判断する必要があります。たとえ持病があっても加入できる生命保険はあるので、保険で備える必要があると判断したらなるべく早めに加入手続きをしましょう。

また、生命保険に加入する際は、どのようなリスクに備えたいのか、考えているリスクが公的医療保険制度でどれくらい補えるのかをイメージして、適切な保障内容と保険期間を設定することも大切です。あわせて、どれくらいの保険料であれば安定的な生活を保ちながら保障を用意し続けられるかも考えておきましょう。

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監修者プロフィール

宮里 恵
(M・Mプランニング)

保育士、営業事務の仕事を経てファイナンシャルプランナーへ転身。
それから13年間、独身・子育て世代・定年後と、幅広い層から相談をいただいています。特に、主婦FPとして「等身大の目線でのアドバイス」が好評です。
個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っている他、お金の専門家としてテレビ取材なども受けています。人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。

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