「車を親または配偶者へ譲る」「結婚して苗字が変わった」などの場合は、自動車保険の名義変更が必要となります。

編集部で、自動車保険に加入している方に独自にアンケート調査を実施したところ、 自動車保険の名義変更の手続きをしたことがある人の割合は、37.5%でした。

  • ■ 調査概要
  • 調査対象者:自動車保険に加入している人
  • 有効回答数:200人
  • 調査期間:2022年8月10日~8月17日
  • 調査方法:編集部の独自調査

名義変更は、等級の引き継ぎにも大きく関係するため、よくわからずに手続きを進めると、 保険料を安く抑えられたはずなのに高くなってしまうこともあります。

そこで本記事では、自動車保険の名義変更の手続き方法や、 名義変更と等級の関係性について解説します。

自動車保険の「名義」とは?

まず、自動車保険の名義についておさらいします。 

自動車保険の【名義】は3種類

・契約者
・記名被保険者

・所有者

契約者

契約者とは、自動車保険の保険契約を結ぶ人のことです。自動車保険の保険料は、基本的に契約者が支払います。

また、契約者には補償の対象となる自動車やそれを運転する人などの情報を告知したり、契約内容に変更があったときは保険会社に通知したりする義務があります。

保険金の請求や契約内容の変更、解約をするためには、契約者の同意が必要です。

記名被保険者

記名被保険者は、契約した車を主に運転する人です。 自動車保険の補償対象となる人(被保険者)の範囲は、記名被保険者を基準に決められます。

自動車保険では、記名被保険者の事故歴によって決まる等級(ノンフリート等級)に応じて保険料の割引率が変動します。

また、記名被保険者の年齢や免許証の色なども、保険料の計算に影響します。

自動車保険の名義変更が必要なケース

名義変更が必要なケースは、大きく分けて以下の4つです。

名義変更が必要なケース

・結婚や離婚をした場合
・主な運転者が変わった場合

・車を売買・譲渡した場合
・名義人が死亡した場合

結婚や離婚をした場合

契約者や記名被保険者、所有者が、結婚または離婚によって名字が変わった場合は、姓名の変更手続きが必要となります。

主な運転者が変わった場合

「単身赴任によって、主な運転者が配偶者になった」「同居中の子供が免許を取得し、主な運転者になった」などのケースでは、記名被保険者の変更が必要です。

記名被保険者の変更をすると基本的に6等級にリセットされますが、 配偶者(内縁関係も含む)または同居中の親族であれば、等級を引き継げる可能性があります。

ただし、別居中の親族や離婚した元配偶者に名義変更をしても等級は引き継げません。別居予定の親族に自動車を譲る場合は、可能であれば同居しているあいだに名義変更をすると良いでしょう。

離婚を予定している配偶者に自動車を譲る場合は、婚姻中に自動車保険の名義変更を済ませるのも方法です。

車を売買・譲渡した場合

配偶者や同居している子供などに車を譲った場合は、 自動車保険の名義変更が必要です。記名被保険者を配偶者や同居の子供などの親族に変更することで、等級を引き継げる可能性があります。

ただし、他人の自動車保険は名義変更では等級の引継ぎができません。新規で自動車保険に加入し直すことになります。

また、 自動車を売買または譲渡してもらった場合は、前の所有者が自動車保険の解約を忘れていないかチェックしましょう。

名義人が死亡した場合

名義人が死亡したときは、保険の名義変更か解約が必要です。 なお、名義変更をする場合は相続扱いになるため、名義変更先は法定相続人に限られます。

被保険者を法人に変更して等級を引き継げる場合もある

損害保険会社によっては、個人が法人を設立する際も、 一定の条件を満たせば記名被保険者の名義を個人から法人に変更する際、等級を引き継げることがあります。

等級を引き継げる条件

法人に自動車保険の等級を引き継ぐためには、ノンフリート契約であることが前提となります。 ノンフリート契約とは、所有または使用する車が9台以下のときに適用される契約です。

それに対して、10台以上の自動車を一括で契約するフリート契約では、ノンフリート等級ではない別の割引制度が適用されるため、個人から法人に等級を引き継ぐことはできません。

また、法人に名義変更して等級を引き継ぐためには、「個人事業主から同じ事業を引き継いでいる」「変更前と変更後で契約の車両が同一」など、保険会社が定める要件を満たす必要があります。

等級を引き継ぐ際は、法人設立後すみやかに手続きをしましょう。

法人名義にするメリット・デメリット

自動車保険を法人名義にすると、法人向け独自の特約を付けられることがあります。例えば、保険会社によっては「積載事業用動産特約」を付帯すると、車両に積まれていた商品などが車同士の事故によって壊れてしまったときの損害を補償してもらえます。

しかし、経営者を含む従業員が運転する契約となるため、 個人名義のように運転者の限定ができません。

そのため、個人契約のままで運転者限定をしたほうが保険料が安くなるケースもあります。

法人解散(廃業)したときも等級を引き継げる場合もある

法人化した時だけでなく、法人解散して個人向けの自動車保険に切り替える際も、 条件を満たせば等級を引き継げる場合があります。

基本的な条件は、法人化のときと同じです。ノンフリート契約で、かつ法人で運営していた事業を継承するなどの条件を満たす場合に限り、名義変更が可能となります。

等級を引き継ぐ際は、法人名義への変更と同じく、「法人を解散してからすぐ」が条件となります。 1年以上経過すると、引き継げないので注意しましょう。

自動車保険の名義変更でよくある疑問

ここでは、自動車保険の名義変更でよくある疑問について紹介します。

車検証の名義変更前でも自動車保険に申し込める?

車検証の名義変更が終わらない場合は、車検証に記載されている人物を実態上の所有者として契約できます。 車検証の名義変更が完了したら、すみやかに所有者の変更手続きをおこないましょう。

他人や同居していない親子間の名義変更はできる?

名義変更が可能なのは、配偶者や同居の親族に限られます。 親子であっても同居していなければ、等級の引き継ぎも名義変更もできません。

ただし、例外的に配偶者は別居の場合であっても名義変更が可能です。

自動車保険の名義変更を忘れると、等級はリセットされる?

等級の引き継ぎは、名義変更に関わらず以下のように取り決めされています。

次に6等級以上にランクアップする場合解約日(満期日)の翌日から7日以内に更新または他社への移行手続きを行わないと、リセットされる
5等級以下の場合13ヶ月の無保険期間を経過するとリセットされる

名義変更を忘れてしまい、 自動車保険の新規加入の手続きをしないと未加入のまま自動車を運転することになります。

万一、その状態で事故を起こして相手に損害を与えると、適切な補償を受けられず多額の賠償金を背負ってしまうかもしれません。

名義変更の手続きが間に合わないなら保険会社に「中断証明書」を発行してもらう方法があります。中断証明書を取得できれば、ノンフリート等級を最大で10年間維持できます。

自動車保険の名義変更の手続き方法

自動車保険の名義変更の手続き方法は、保険会社によって異なりますが、 保険会社へ変更の旨を連絡し、「送付される変更届書の記入・提出する」という流れが一般的です。

保険会社へ連絡する

自動車保険の名義変更を希望する際は、まず保険会社に連絡をします。 一般的には電話での連絡になりますが、インターネットから変更の申し込みを受け付けている保険会社もあります。

変更届出書の記入・返送

保険会社から送付された変更届出書を記入して返送します。 なお、車両所有者の名義変更に関しては、 電話あるいはネットでの手続きのみで、変更届出書の記入・返送は不要です。

法人化、または法人を解散(清算)し、個人に変更する場合

法人設立、または法人の解散が証明できる書類、 事業の同一性が証明できる書類の提出をして、保険会社の承認が得られれば名義変更の手続きが可能となります。

自動車保険の名義変更における必要書類

自動車の名義変更をする際は、保険証券を準備しましょう。 また、車両所有者の名義変更をする場合は車検証が必要となります。

自動車保険の名義変更をする際に必要となる書類は、保険会社によって異なります。名義変更の際は、加入先の保険会社や代理店の担当者に問い合わせて手続き方法や必要書類を確認しましょう。

まとめ

契約者、記名被保険者、所有者のいずれかが変更になった場合でも名義変更の手続きは必要です。自動車保険の名義変更をしないと、適切に補償を受けられないだけでなく、 最悪の場合、保険金が下りないこともあります。

また、等級の引き継ぎは、変更元と変更先の関係によって異なるので必ず事前に確認しましょう。

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監修者プロフィール

宮里 恵
(M・Mプランニング)

保育士、営業事務の仕事を経てファイナンシャルプランナーへ転身。
それから13年間、独身・子育て世代・定年後と、幅広い層から相談をいただいています。特に、主婦FPとして「等身大の目線でのアドバイス」が好評です。
個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っている他、お金の専門家としてテレビ取材なども受けています。人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。

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