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writer:風に吹かれて

もう一つの駅前

児童作家でもある森絵都さんが直木賞を受賞した「風に舞いあがるビニールシート」(文藝春秋)の短編集に「器を探して」という小説がある。舞台は岐阜県多治見市。美濃焼の器を探す物語ですが、主人公が多治見駅を降りたつと「一体この町のどこに美濃焼の器があるのか?」とつぶやく。近代化された駅舎、整備が整った駅前の風景に陶磁器の産地と言う匂いがまったく感じられなく不安になるというシーンです。

 

駅は、歌でも小説でも多くのテーマになっています。出会いや別れの他に街の顔でもある。僕らは、両親の転勤、自分の進学、就職、そして結婚と生まれ故郷以外の土地に住むことがあります。もちろん旅行で初めての街を訪れることも。その時、街の最初の印象が駅であり、駅前の風景なのです。個人的には、東京の吉祥寺駅。自分の能力の無さに失望し、岐阜に帰ると決めホームにたった時、イルカのなごり雪が頭の中で流れ、泣きそうになった事を今でも思い浮かべます。関係ないか。

 

 

駅の近代化と言えば、今住んでいる岐阜市のJR岐阜駅前も大きく変わろうとしています。駅そのものは、アクティブGという商業施設ができ、「杜の駅」というコンセプトで仙台市の駅を見習い、ペデストリアンデッキが整備されるなど、変容を遂げています。そして今回、岐阜駅前の顔ともいわれた繊維問屋街が再開発されることになりました。そうちょうど北口の改札を出ると最初に目に飛び込む風景です。計画によると高さ130メートルの高層ビルが2棟建ち、低層は商業施設に、五階以上はマンションになるという。

 

そんなニュースを知り、無くなる前に問屋街を写真に収めようとライカを持って繊維問屋街を訪れた。コロナの影響か人はほとんどいません。クロネコヤマトのリヤカーに出合うくらい。何枚かシャッターを切っていると、店番をしているお婆ちゃんから声が掛った。「こんな寂しいとこ撮らんでもいいのに」と。「最近、お兄さんのようなカメラマンが良く来るよ」と言う。よくよく聞いてみると全国からプロも含めカメラマンが岐阜の繊維問屋街を撮りに来ているという。ノスタルジー、レトロ、戦後、昭和、さまざまなコンセプトで被写体の対象になっているのであろう。

 

 

違う人の話も聞けた。「私らは、ずっと邪魔者扱いされた。岐阜市の開発の邪魔になると。でも戦後、岐阜市を引っ張って来たのは私らだという自負がある。兄ちゃんもこんなきたいなところは撮るな。ようやく綺麗になるのだから」と。でもどことなく寂しそうな顔が印象的でした。

 

街の近代化。高層マンションを造り、定住人口を増やし景観も向上する。商業施設もでき、利便性も高まる。良いこと尽くめ。でも、他県から訪れた人はどう思うだろう。岐阜はアパレルの街。駅を降りたった時、繊維の街の匂いはするのだろうか。

監修者プロフィール

 藤田 聡
(ふじた・さとる)

1960年岐阜市生まれ。元新聞記者。経済紙、通信社、地方紙の3媒体で記事を書く。専門は経済。
通信社時代は、経済産業省記者クラブに席を置き、主に産業再生機構を担当。カネボウ、ダイエーなどを取材した。
地方紙では、財界担当、県政キャップなどを歴任し、出版室長、副編集局長、論説委員を務める。主な著書に財界人列伝「百折不撓」「千紫万紅」などがある。
趣味はカメラ、旅行、酒、読書。本は現役時代年間100冊をノルマに。現在は、専門書は一切読まず好きな作家を中心に年間70冊程度に。時間にゆとりができ、新たに愛犬・ボストンテリアと遊ぶことも趣味に加わった。

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