会社員は経費が計上できないので、経営者や個人事業主と比較すると節税が難しいです。

しかし、サラリーマンでもできる節税はいくつか存在します。本記事では、サラリーマンでもすぐに始められる節税方法を4つ紹介します。

また、生命保険を利用した節税対策も合わせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

サラリーマンは控除を利用することで節税ができる

サラリーマンが節税するためには控除を利用した方法がおすすめです。控除とは差し引くということを意味する言葉です。ここでは所得控除やiDeCo、生命保険料などの控除について詳しく解説します。

所得控除

所得税では、所得税額を計算するときに所得控除が設けられています。控除とは差し引くという意味する言葉で、所得控除は、一定の要件にあてはまる場合に、所得の合計金額から一定の金額を差し引くことができます。この差し引いたあとの金額を「課税所得金額」といいます。

課税所得金額が小さくなると、納めるべき所得税額も少なくなるので、節税につながるということです。

ここからは、節税効果のある所得控除を紹介します。

配偶者控除

結婚していて要件を満たす場合は配偶者控除が受けられます。配偶者控除の金額は、控除を受ける納税者本人の合計所得金額と配偶者の収入によって変わります。

国税庁HP「配偶者特別控除」より引用

このように、配偶者の合計所得金額が95万円以下(給与収入のみの場合は150万円以下)である場合は38万円の控除が受けられます。

また、納税者本人の合計所得と配偶者の合計所得金額によって控除が受けられる金額が異なるので、自身の配偶者の合計所得金額を確認してみましょう。

配偶者控除とあわせて覚えておきたいのが、一定の要件(勤務先の従業員数など)で社会保険料が発生する106万円の壁と、社会保険への加入が必須となる130万円の壁です。

こちらは社会保険の扶養から外れてしまうラインですので、ラインを超えてしまうようであれば収入をおさえるか、壁を気にせずにしっかりと働くかを決めたほうがよいでしょう。

扶養控除

扶養控除は高校生や大学生の子どもまたは70歳以上の親がいる場合に受けられる所得控除で、子どものバイト代等が103万円を超えると扶養控除から外れてしまいます。

子どもが高校生の場合は38万円の扶養控除が、大学生の場合は63万円の特定扶養控除がなくなるので子どもの収入は把握しておきたいところです。合計所得が48万円以下で70歳以上の親がいる場合は、別居だと48万円、同居だと58万円の扶養控除が適用されるので、扶養に入ってもらうと節税になります。

ふるさと納税(寄付金控除)

ふるさと納税は寄付金控除を利用した制度です。

制度の内容としては、応援したい自治体に寄附を行った場合の2,000円を超える部分について、所得税の還付や住民税の控除が受けられます。

ふるさと納税額の目安は、収入や配偶者の有無や扶養家族の有無など家族構成によって異なります。自身の控除上限額を調べられるサイトを利用して、自身の控除上限額を確認してみるとよいでしょう。

iDeCoを利用する

iDeCo(個人型確定拠出年金)とは私的年金制度のことです。

自分で決めた掛金を拠出して積み立てることにより、自分で選んだ方法で掛金を運用して、老後資金を準備できる制度です。運用した掛金は60歳以降に年金や一時金として受け取れます。

20歳以上65歳未満の全ての人が加入できるほか、掛金や運用益、給付の受け取り時に税制上の優遇措置が受けられます。ただし60歳になるまで原則として資産を引き出すことができない点には注意が必要です。

この制度を利用すると掛金の全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)となるので、老後の資金を準備しながら節税ができます。iDeCo公式サイトの「カンタン加入診断」を利用すると、掛金の限度額や加入資格の有無を確認することができます。

【iDeCoの拠出限度額について】

加入資格拠出限度額
自営業者(第1号被保険者)月額6.8万円(年額81.6万円)
会社員・公務員等(第2号被保険者)会社に企業年金がない会社員
月額2.3万円(年額27.6万円)
企業型DC※1に加入している会社員月額2.0万円※3(年額24.0万円)
DB※2(確定給付企業年金)と企業型DC※1に加入している会社員月額1.2万円※4(年額14.4万円)
DB※2(確定給付企業年金)のみに加入している会社員月額1.2万円(年額14.4万円)
公務員等月額1.2万円(年額14.4万円)
専業主婦(夫)(第3号被保険者)月額2.3万円(年額27.6万円)

※引用:iDeCo公式サイト(2022.10)

生命保険料控除


年間で支払った生命保険料に応じて、一定金額の所得控除を受けることができます。

生命保険控除は「新生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「新個人年金控除」の3種類に区別され、全ての契約が新契約(平成24年1月1日以後の契約)であれば、それぞれ4万円(最大で年間12万円)の所得控除が適用されます。

「生命保険料控除」と「個人年金控除」については旧契約(平成23年12月31日以前の契約)であれば、それぞれ5万円の控除が適用されます。

節税のために余っている生命保険料控除を限度額まで利用することも考えられますが、控除を目的として無理に契約する必要はないでしょう。

ただし、個人年金保険と変額保険のように、満期保険金のある貯蓄型保険商品については控除枠の利用が有効です。

個人年金保険

個人年金保険は、公的年金に加えて私的年金を準備することができる保険です。契約時に設定した保険金を満期時に受け取ることができます。

また年金受取の途中で死亡した場合も確定年金の場合は遺族が残りの年金を受け取れます。税制上の要件を満たす契約であれば、「個人年金保険料控除」の対象になります。

私的年金を準備しながら、毎年の保険料は個人年金保険料控除の対象になるので、個人年金保険への加入は節税対策として有効です。

変額保険

変額保険は個人年金と違って、ファンドの運用成果により保険金が変動する保険商品です。

運用成果によっては元本割れのリスクもありますが、長期的な運用を前提とすれば比較的安定した運用ができるので、基本保険金額を上回る保険金が準備できる可能性があります。こちらも満期時に運用成果に応じた保険金を受け取ることができるほか、死亡時でも遺族へ保険金が支払われます。

変額保険の生命保険料控除については、新生命保険料控除の対象になります。

会社員の副業での経費は認められる?

会社員の節税対策の方法として「副業を始めて交際費や家賃を経費に計上しましょう」といったものを見かけますが、副業での経費は認められるのでしょうか。

副業が事業として認められれば「事業所得」により生じた損失を給与所得と損益通算することが認められますが、事業として認められない場合は「雑所得」とされ、副業により生じた損失を給与所得と損益通算することは認められません。

事業所得は事業のみで生計を立てているような状況が想定されているので、一般的には副業での収入が事業所得として判断されることは難しいでしょう。

相続税を節税するなら生命保険が活用できる

ここからは相続税の節約に役立つ生命保険の活用方法について解説します。

生命保険の非課税枠が利用できる

生命保険が節税対策に有効な理由は、生命保険の非課税枠が利用できることです。

死亡保険金の受取人が相続人であるとき、「500万円×法定相続人の数」が生命保険の非課税枠となり、非課税枠を超える部分が相続税の課税対象になります。

生命保険を相続する際の計算方法

相続税を計算する際は、相続税の基礎控除や相続税独自の税率を用いて計算します。

  • 相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

相続税の税率は以下のとおりです。

※出典:国税庁HP「相続税の税率」

相続税の計算は以下の手順で行います。

1.各人の課税価格を合計して、課税価格の合計額を算出する
2.課税価格の合計額から基礎控除額を差し引いて、課税される遺産の総額を計算する(=課税遺産総額)
3.上記で計算した課税遺産総額を、各法定相続人が民法に定める法定相続分に従って取得したものとして、各法定相続人の取得金額を計算する
課税遺産総額×各法定相続人の法定相続分=法定相続分に応ずる各法定相続人の取得金額
4.上記で計算した各法定相続人ごとの取得金額に税率を乗じて相続税の総額の基となる税額を算出する(=算出税額)
法定相続分に応ずる各法定相続人の取得金額×税率=算出税額
5.上記で計算した各法定相続人ごとの算出税額を合計して相続税の総額を計算する(=相続税の総額)
6.上記で計算した相続税の総額を、財産を取得した人の課税価格に応じて割り振って、財産を取得した人ごとの税額を計算する(=各相続人の税額)
7.上記で計算した各相続人の税額から各種税額控除額を差し引いた残りの額が各人の納付税額になる

本記事では上記1〜5までの計算(相続税の総額の算出)を簡略化して行い、生命保険へ加入することによる節税効果を解説します。

生命保険に加入していない場合の相続税

まずは生命保険に加入していないケースで相続税を求めます。仮定した条件は以下のとおりです。

  • 法定相続人:妻(法定相続分1/2)、子Aと子B(法定相続分は1/4ずつ)
  • 相続財産:預貯金5000万円、株式・不動産評価額5000万円の合計1億円

まずは課税価格の合計額(現金1億円)から基礎控除額を差し引いて、課税遺産総額を計算します。

  • 基礎控除額:3,000万円+600万円×法定相続人の数(3人)=4,800万円
  • 課税遺産総額:1億円−基礎控除額(4800万円)=5,200万円

続いて、法定相続分に応ずる各法定相続人の取得金額(妻1/2=2,600万円、子Aと子Bそれぞれ1/4=1,300万円)をもとに、相続税の速算表を用いて、相続税の総額を計算します。

  • 妻:2600万円×15%−50万円=340万円→配偶者の税額軽減により0円
  • 子A:1300万円×15%−50万円=145万円
  • 子B:1300万円×15%−50万円=145万円

配偶者の税額軽減があり、1億6千万円または法定相続分相当額までは相続税はかかりません。よって生命保険に加入していない場合の相続税の総額は、290万円になります。

生命保険に加入していた場合の相続税

次は節税対策として生命保険に加入していたケースの相続税を求めます。条件は以下のとおりです。

  • 法定相続人:妻(法定相続分1/2)、子Aと子B(法定相続分は1/4ずつ)
  • 相続財産:預貯金3000万円、株式・不動産評価額5000万円、生命保険2000万の合計1億円

ここでは生命保険に加入したことにより、非課税限度額が適用されます。

非課税限度額:500万円×法定相続人の数(3人)=1,500万円

非課税限度額の適用によって、生命保険の課税額から1,500万円が差し引かれます。

2000万円−1500万円=500万円

次は先ほどと同様に課税遺産総額を求めます。基礎控除額は生命保険未加入時と同様に4,800万円です。

課税遺産総額:8,000万円+500万円−4800万円=3700万円

こちらも先ほどと同様に、法定相続分に応ずる各法定相続人の取得金額(妻1/2=1850万円、子Aと子Bそれぞれ1/4=925万円)をもとに、相続税の速算表を用いて、相続税の総額を計算します。

  • 妻:1850万円×15%−50万円=227.5万円→配偶者の税額軽減により0円
  • 子A:925万円×10%=92.5万円
  • 子B:925万円×10%=92.5万円

上記より、生命保険に加入していた場合の相続税の総額は185万円となり、生命保険に加入していないときと比べて105万円の節税になります。

生命保険の契約者や被保険者に気を付ける

節税対策で生命保険へ加入する場合は、契約者と被保険者の関係に気をつけましょう。契約者、被保険者の関係によっては相続税ではなく、所得税や贈与税になるからです。所得税や贈与税になるケースは以下のパターンです。

 契約者被保険者保険金受取人
相続税の課税対象AAB
所得税の課税対象BAB
贈与税の課税対象CAB

まとめ

本記事では、サラリーマンでもすぐに始められる節税対策を5つ紹介しました。

特にふるさと納税や確定拠出年金については、意識すると大きな節税につながるので参考にしてください。

また相続税の節税対策では、生命保険の利用方法を解説しました。一例として紹介したケースでも105万円の節税になります。ご自身のケースに当てはめて一度計算してみてください。

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監修者プロフィール

宮里 恵
(M・Mプランニング)

保育士、営業事務の仕事を経てファイナンシャルプランナーへ転身。
それから13年間、独身・子育て世代・定年後と、幅広い層から相談をいただいています。特に、主婦FPとして「等身大の目線でのアドバイス」が好評です。
個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っている他、お金の専門家としてテレビ取材なども受けています。人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。

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