「子供のためにどの生命保険に加入すれば良いのだろうか」と悩む方も多いのではないのでしょうか。

日本に住む20歳以上60歳未満の人は、国民年金や厚生年金などの公的年金へ加入しなければなりません。公的年金に加入する人が亡くなったとき、所定の要件を満たす遺族子供の誕生をきっかけに生命保険を選ぶときは、まず保険に加入する目的を考えることが大切です。

そのうえで、将来的にかかる教育費や病気やケガをしたときに受けられる社会保障制度などを確認し、加入する保険を選びます。

本記事では、子供が生まれるときに検討すると良い生命保険について、種類や保障内容などをわかりやすく解説していきます。特に加入する方が多い学資保険と医療保険については、選ぶ際のポイントを詳しく解説していますので参考にしてください。

子供向けの生命保険

子供が生まれるときに検討することが多い保険の種類や、保険に加入する目的は主に以下の通りです。

加入する目的保険の種類
子供の教育費を準備したい・学資保険
・生命保険(死亡保険)
子供の病気やケガに備えたい・医療保険
・傷害保険
子供が万一のときに備えたい・生命保険(死亡保険)
子供が他人の身体やモノに危害を加えたときに備えたい・個人賠償責任保険

それぞれの特徴や保障(補償)内容を確認していきましょう。

学資保険

学資保険とは、子供の教育資金を積み立てるために加入する貯蓄型の保険です。保険料を支払うと、契約するときに決めたタイミングで満期保険金やお祝い金などを受け取れます。

子供の教育に必要な資金は、進学ルートによって1,000万〜2,000万円といわれています。高額な教育費の支払いに備えて計画的に資金を準備するために、学資保険に加入するのも方法のひとつです。

学資保険の多くには「保険料払込免除特約」を付帯できます。この特約がついていると、学資保険を契約した人は万一の場合に、保険料の払込が免除されます。

例えば、契約者が父親、被保険者(保険の対象となる人)が子供であり、子供が18歳になったときに満期保険金200万円が支払われるとしましょう。

保険料を払い込んでいる途中で父親が亡くなった場合、子供は以後の保険料を支払うことなく18歳になるときに予定通り200万円を受け取れます。学資保険に加入することで、親に万一のことがあっても子供の教育資金を残してあげることが可能です。

医療保険

医療保険は、病気やケガなどで入院や手術などをしたときに給付金が支払われる保険です。医療保険に加入すると、子供が病気やケガで入院したときは「入院給付金」を、手術をしたときは「手術給付金」を受け取れるのが一般的となります。

入院給付金は、多くの場合「入院給付金日額×入院日数」で給付額が決まります。以前は、入院から4日や5日ほど経過しないと給付金は支払われませんでしたが、2021年12月現在では日帰り入院や1泊2日以上の入院も支払対象となるのが一般的です。

手術給付金の給付額は、入院給付金日額に手術の種類に応じた倍率をかけて決まる場合もあれば、手術の種類にかかわらず一律である場合もあります。

生命保険(死亡保険)

生命保険(死亡保険)は、被保険者が亡くなったときや高度障害状態に該当したときに、保険金が支払われる保険です。被保険者を子供にして生命保険に加入することで、万一の場合の葬儀費用やお墓の購入費用などをカバーできます。

また、学資保険の代わりに終身保険のような貯蓄機能がある生命保険に加入し、子供の教育資金を準備する方法もあります。終身保険とは、一生涯にわたって死亡や高度障害に備えられる保険であり、加入してから一定期間が経過したあとに解約すると、支払った保険料以上の解約返戻金を受け取れることがあるためです。

傷害保険

傷害保険は、偶然の事故によるケガでの入院や手術、通院などで給付金が支払われる保険です。医療保険とは異なり病気での入院や手術はカバーできませんが、ケガであれば入院や手術だけでなく通院でも給付金を受け取れることがあります。

友達と遊んでいるときやクラブ活動で運動をしているときなど、子供はさまざまなタイミングでケガをすることがあります。そのため、子供がケガをするリスクに備えるために、傷害保険に加入して備えるのも方法でしょう。

個人賠償責任保険

個人賠償責任保険とは、相手の身体や財物に損害を与えて負った賠償責任を補償する保険です。例えば、子供が自転車に乗っているときに通行人と接触してケガを負わせてしまった場合、個人賠償責任保険に加入していれば保険金で損害賠償金を賄えます。

過去には、子供が加害者となった自転車事故で、親に対して1億円ほどの損害賠償命令が下された例もあります。個人賠償責任保険の保険金の限度額は、1事故に1〜3億円ほどであるのが一般的であるため、加入することで高額な損害賠償に備えられます。

個人賠償責任保険は、単独でも加入できるほか、火災保険や自動車保険、傷害保険などに特約で付帯することも可能です。また、自転車での事故によるケガや損害賠償リスクに備えられ「自転車保険」に加入するのも方法でしょう。

子供のために学資保険を検討するときのポイント

ここでは、子供のために学資保険を検討するときに知っておきたいポイントをわかりやすく解説します。

どの学費を準備するのか考える

学資保険の満期保険金は、子供が18歳や17歳などの年齢に達したときに一括で受け取れる場合もあれば「18歳から4年間」のように分割で受け取れる場合もあります。大学への進学費用を準備する目的で学資保険に加入するのであれば、入学金や授業料、受験費用など、どの費用に充てたいのかを考えておくと良いでしょう。

ここで、大学に進学したときの入学費用や在学費用を紹介します。

国公立大学私立大学
入学費用
(受験費用・入学金など)
77.0万円文系:95.1万円
理系:94.2万円
在学費用
(授業料・通学費・教科書代など)
460.0万円文系:608.4万円
理系:768.8万円
合計537万円文系:703.5万円
理系:863.0万円

※出典:日本政策金融公庫「教育費に関する調査結果(2020年10月30日発表)

このように、大学に進学するとまとまった入学費用が発生するだけでなく、在学費用も数百万円ほどかかるのが一般的です。学資保険に加入し、受け取った保険金を大学進学時の入学費用や在学費用に充てるのも方法でしょう。

また学資保険のなかには、小学校や中学校などの進学時に祝い金を受け取れるものもあります。進学時の制服代や教科書の購入費用などに充てるために、祝い金を受け取れる学資保険を選択する方法もあります。

返戻率を確認・比較する

返戻率とは、受け取った満期保険金や祝い金の総額に対する支払った保険料の割合です。「満期保険金や祝い金などの合計額÷払込保険料総額」で計算できます。例えば、満期保険金が200万円、払込保険料総額が190万円の場合、返戻率は200万円÷190万円=約105.3%となります。

学資保険に加入するときは、より返戻率が高いものを選ぶことが大切です。また、保険料の払込期間を短くしたり、半年払いや年払いなどを選択して保険料の払込回数を少なくしたりすると、返戻率が高くなる場合があります。

一方で、祝い金を受け取れる学資保険は、返戻率が低い傾向にあります。検討する際は、返戻率を確認し本当に祝い金が必要なのかを考えましょう。

外貨建て保険や変額保険も検討する

利回りをより高くしたいのであれば、学資保険の代わりに「外貨建て保険」や「変額保険」に加入して教育資金を準備するのもひとつの方法です。

外貨建て保険は、契約する人が支払った保険料を、米ドルや豪ドルなどに交換したうえで保険会社が運用する保険です。日本よりも金利が高いアメリカやオーストラリアで運用することで、高い利回りが期待できます。

変額保険は、保険料の一部を株式や債券などで構成された「特別勘定」で運用する保険です。契約するときに選んだ特別勘定の運用実績に応じて、満期保険金や解約返戻金などが増減するため、運用が好調であれば将来受け取れるお金を大きく増やせる可能性があります。

ただし外貨建て保険や変額保険には、それぞれにリスクがあり満期保険金や解約返戻金の受取額が、支払った保険料総額を下回る可能性があるため、必ずしも学資保険よりも利回りが高くなるとは限りません。

外貨建て保険や変額保険を検討する際は、保険のプロやファイナンシャルプランナーに相談のうえ仕組みやリスクを理解することが大切です。

子供のために医療保険を検討するときのポイント

次に、子供の医療保険を検討するときに知っておきたいポイントをみていきましょう。

公的医療保険の保障を確認する

日本は国民皆保険を採用しているため、日本に住む人は原則として国民健康保険や健康保険(被用者保険)などの公的医療保険に加入しています。公的医療保険の給付は、子供から大人まですべてが対象です。

子供が病院で治療を受けたり入院や手術をしたりしたときは、医療機関の支払い窓口に健康保険証を提示すると、医療費の自己負担が一部で済みます。自己負担割合は、以下の通りです。

  • 小学校に入学するまで:2割
  • 小学校に入学したあと:3割

ただし、入院する子供に面会するときに支払う交通費は、公的医療保険ではカバーされません。また希望して個室や少人数部屋に入ったときに支払う「差額ベッド代」や、入院中の食事代などは全額自己負担となります。

独自の助成制度を実施する自治体もある

自治体によっては、子供向けの医療費助成制度を実施していることがあります。医療保険への加入を検討する際は、自治体が実施している助成制度を確認しましょう。

例えば、東京都は「乳幼児医療費助成制度(マル乳)」を実施しており、東京都内に住んでいる義務教育就学前の乳幼児が病院にかかったとき、医療費の自己負担が原則として無料となります。

また、子供が小学校に入学したあとは中学校を卒業するまで「義務教育就学児医療費の助成(マル子)」を利用でき、入院時の自己負担は無料となり、通院時の自己負担は1回につき200円が上限となります。

子供は病気やケガで入院するリスクが低い

子供が入院する確率や平均入院日数なども、医療保険を検討するときに知っておくと良いでしょう。ここで、子供の人口10万人あたりの推定患者数を見ていきましょう。

  • 1〜4歳:169人
  • 5〜9歳:86人
  • 10〜14歳:94人
  • 15〜19歳:113人

※出典:厚生労働省「平成29年患者調査

一方で大人の場合、人口10万人あたりの推定患者数は25〜29歳は235人、40〜44歳は311人、65歳以上は2,734人です。また14歳以下の子供の平均在院日数は、7.4日であり、全年齢平均29.3日の約1/4です。

※出典:厚生労働省「平成29年患者調査

以上の点から、子供は大人に比べて入院する確率が低いだけでなく、入院日数が短い傾向にあるといえます。

ただし、子供が入院したり重い病気にかかったりする確率が0%というわけではありません。医療保険に加入していれば、子供が病気で入院してお金のかかる治療を選択したとき、医療費の自己負担分を軽減できるでしょう。また、受け取った給付金を差額ベッド代や食事代など全額自己負担の費用に充てることも可能です。

また、医療保険は、被保険者(保障の対象となる人)の年齢が若いほど保険料が安くなる傾向にあります。子供が幼いときに医療保険に加入し、親元を離れるときに契約者を子供に変更して、保険料が安い医療保険をプレゼントすることも可能です。

子供が生まれる場合は親が加入する保険の見直しも検討を

子供が生まれるときに検討する必要があるのは、子供の保険だけではありません。

父親や母親に万一のことがあったあとも生活ができるよう、親が加入する保険の見直しをすることも大切です。

親が万一の場合の保障

働いて家計を支える人が亡くなったあとも、残された家族は生活をしていかなければなりません。そのため、子供が生まれるときは、父親や母親に万一のことがあったあとの生活費や教育費などを準備するために、死亡保障を手厚くするのが一般的です。

昨今は、共働き世帯が増えてきているため、世帯主だけでなく配偶者が万一のときの備えにも不足がないか確認しましょう。

ここでは、親が万一のときの保障を検討する際に知っておきたい、社会保障制度や民間保険の種類を解説します。

万一の場合に利用できる社会保障制度

(残された家族)に「遺族年金」が支給されます。遺族年金の受給額は、亡くなった人が加入していた公的年金の種類や遺族の構成などで異なります。

また勤務先によっては、従業員が亡くなったときに遺族に対して死亡退職金や弔慰金を支給するケースがあります。就業規定や退職金規定などで支給の有無や支給額を確認すると良いでしょう。

万一に備えられる生命保険

万一に備えられる生命保険の種類は、以下の通りです。

保障内容・特徴
定期保険被保険者が死亡または高度障害状態になったとき、死亡保険金が一括で支払われる
収入保障保険被保険者が死亡または高度障害状態になったとき、保険金の受取人に対して定額の年金が保険期間の満了まで支払われる

上記のうち定期保険と収入保障保険は、保険期間が一定である掛け捨て型の生命保険であり、割安な保険料で手厚い死亡保障を準備できます。

未成年の子供がいる世帯では、世帯主の死亡保障が数千万円ほど必要になるケースは少なくありません、定期保険や収入保障保険を選ぶことで、保険料負担を抑えつつ必要な死亡保障を準備できます。

親が病気やケガになったときの保障

父親や母親が病気やケガになると、医療費の負担が発生します。さらに親が入院してしまうと、家事代行を依頼する費用や外食代などが増えるかもしれません。

また、親が病気やケガで働けなくなったり勤務が制限されたりすることで、収入が減少して生活が苦しくなることもあります。親が病気やケガをすることで、生活が苦しくなる可能性があるのなら、医療保障や働けなくなったときの収入保障を検討することが大切です。

ここでは、医療保障や収入保障を検討するときに知っておきたい、社会保障制度や民間保険の種類を解説します。

病気やケガになったときに受けられる社会保障制度

病気またはケガで入院したり手術を受けたりしたときは、公的医療保険により医療費の負担が3割で済みます。また、高額療養費制度を申請することで、ひと月あたりの自己負担が所定の上限額までとなります。

さらに会社員や公務員などは、病気やケガなどで働けなくなった場合、所定の要件を満たすと傷病手当金の受給が可能です。傷病手当金の受給額は、働けなくなる前の12ヶ月の平均給与の2/3であり、支給期間は最長で1年半です。

病気やケガに備えられる保険

病気やケガに備えられる民間保険の例は、以下の通りです。

保障内容・特徴
医療保険病気やケガでの入院・手術時に給付金が支払われる保険
がん保険がんと診断されたときや所定のがん治療(放射線治療・抗がん剤治療など)を受けたときに給付金が支払われる保険
就業不能保険病気やケガで働けなくなったときに月額の保険金が支払われる保険

病気やケガで入院や手術をしたときの医療費自己負担に備えたいのであれば、医療保険を検討すると良いでしょう。また医療保険は、特約を付帯することで、がんや三大疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)など重い病気にも手厚く備えられます。がんに絞って手厚く備えたいのであれば、がん保険を選ぶのも方法でしょう。

働けなくなったときの収入減少に備えたいのであれば、就業不能保険が主な選択肢となります。就業不能保険に加入し、働けなくなったときに傷病手当金と合わせて保険金を受け取ることで、健康に働いていたころの収入を確保できる可能性があります。

まとめ

子供が生まれるときに検討する保険には「学資保険」「医療保険」「生命保険(死亡保険)」などがあります。学資保険に加入することで、子供の高額な教育費に備えられるでしょう。子供が幼いうちに医療保険に加入することで、病気やケガに備えつつ、将来的に契約者を変更して子供に引き継ぐことも可能です。

また、子供が生まれるときは、親の死亡保障や医療保障を見直すことも大切です。家族にとって必要な保険の選び方に迷ってしまう場合は、保険のプロやファイナンシャルプランナーに相談すると良いでしょう。

保険コンパスなら、何度でも相談無料です

監修者プロフィール

宮里 恵
(M・Mプランニング)

保育士、営業事務の仕事を経てファイナンシャルプランナーへ転身。
それから13年間、独身・子育て世代・定年後と、幅広い層から相談をいただいています。特に、主婦FPとして「等身大の目線でのアドバイス」が好評です。
個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っている他、お金の専門家としてテレビ取材なども受けています。人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。

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