生命保険には、定期保険や終身保険、養老保険や学資保険などさまざまな種類があります。将来どのようなリスクに備えたいのかによって検討すべき保険が変わるため、生命保険の種類ごとの特長を把握するのは大切です。

この記事では、生命保険の中でも変額保険に焦点を当てて、加入するメリットデメリット、変額保険が向いている人の特徴を解説します。

そもそも変額保険とは?

変額保険とは、加入時に指定した株式や債券などで構成される「特別勘定」の運用実績に応じて満期金や解約返戻金が増減する保険です。解約返戻金は、生命保険を解約したときに受け取れるお金を指します。

運用実績によっては、将来受け取れるお金が支払った保険料よりもより増えるため、資産運用をするために加入する人もいます。一方で、運用した結果うまくお金が増えなかった場合、将来受け取るお金が支払った保険料の総額を下回るリスクもあるため、変額保険の特徴をよく知ったうえで加入を検討しましょう。

変額保険の種類

将来受け取るお金が増減する変額保険には、大きく分けて次の3種類があります。

  • 有期型の変額保険
  • 終身型の変額保険
  • 変額個人年金保険

以下では、これらの変額保険について詳しく説明します。

有期型の変額保険

有期型の変額保険は、保険期間が一定であるのが特徴です。また、被保険者が保険期間の満期まで生存していた場合は、満期保険金を受け取れるのが一般的です。

上述したように、変額保険は、契約者が支払う保険料の一部が特別勘定で運用され、運用実績に応じて満期保険金や解約返戻金が変動します。そのため、満期保険金や解約返戻金については最低保証はなく、運用実績に応じて受け取れる金額が変動します。

一方、死亡時は「基本保険金+変動保険金」の受け取りが可能です。基本保険金は、運用実績にかかわらず最低保証されるため、変動保険金がマイナスになっても、基本保険金は受け取ることができます。

終身型の変額保険

終身型の変額保険は、被保険者が死亡または高度障害になったときに保険金を受け取れるのに加えて、保障が一生涯続くことが特徴です。不測の事態がいつ起こるかは予測できないため、終身型の変額保険に加入すれば生涯にわたって備えを用意し続けられます。

また有期型と同様に、支払った保険料は保険会社が運用し、その実績に応じて保障額が変動します。死亡・高度障害保険金には、最低保証がありますが、解約返戻金についてはありません。さらに終身型には満期が無いため、満期保険金が無いのも特徴です。こうした違いを理解したうえで、加入すべき変額保険の種類を検討しましょう。

変額個人年金保険

変額個人年金は、「年金」という言葉があるように、老後資金を用意できる変額保険です。ほかの変額保険と同様に、支払った保険料の一部を特別勘定で運用し、運用実績に応じて年金原資や解約返戻金額が増減することが特徴です。

また、多くの変額個人年金保険では、年金原資に対して最低保証金額が設けられていません。しかし、一部の保険商品では最低保証付の商品もあります。

変額保険に加入するメリット

老後資金や死亡・高度障害時の備えを用意できる生命保険はいくつかありますが、変額保険に加入するとどのようなメリットが生じるのでしょうか。

以下では、変額保険に加入するメリットを説明します。

将来受け取れるお金が増える可能性がある

変額保険に加入すると、保険会社に支払う保険料の一部を特別勘定で運用します。そのため、運用実績によっては死亡保険金額や解約返戻金額、満期保険金額や年金額が増える可能性があります。

預貯金は、低金利であるため資産形成しようとすると思ったように資産が増えない可能性があります。一方、変額保険では、運用次第でうまくいけば、より多くの資産を形成できる可能性があるため、もしものことが起こっても遺された家族などに安定的な暮らしを送ってもらいやすくなります。

また、将来受け取れる年金額が増えれば、老後の生活をより安定させやすくなるでしょう。

死亡時の最低保障が用意されている

先述したように、変額保険には死亡時や高度障害状態になったときの最低保証が用意されているものが多いです。そのため、もし運用がうまくいかなくても、最低保証を設定していればもしもの事態が起こっても家族や親族などにある程度まとまったお金を遺せます。

また、保険会社によっては、3大疾病や7大疾病で所定の状態になった場合、以後の保険料の払い込みを免除するものもあります。病気になって収入が限定されても、その後の保障や資産形成を継続できれば、より安心して日常生活を送れるでしょう。

インフレに強い

変額保険の運用実績は、景気の影響を受けて変動することもあります。

たとえば、景気が良くなってインフレが起こると、物価の上昇に伴って生活費も上がる傾向があります。生活費が上がると家計が苦しくなりやすいですが、景気が良く株式市場の相場が上昇していれば、株式で運用するタイプの変額保険の運用実績も良好になる可能性があります。

将来受け取れるお金が増えれば、インフレで物価が上昇しても、経済的な負担を補いやすくなるため、安定的な暮らしを送りやすくなります。

生命保険料控除を申請できる

変額保険は、ほかの生命保険と同様に年末調整や確定申告で「生命保険料控除」を申請できます。

生命保険料控除が適用されれば、1年間で支払った保険料に応じて所得税や住民税の負担を抑えることが可能です。保険料によっては数万円もの節税効果が期待できるので、毎年忘れずに申請しましょう。

運用中は非課税になる

資産運用は、生命保険だけでなく証券会社を通して株や投資信託などでおこなうことも可能です。しかし、株や投資信託で資産運用すると、運用で得た利益や配当金などに対して20.315%の税金がかかります。

一方、変額保険に加入して資産運用すれば、運用中に利益が出ていても課税されません。運用中に税金の負担を気にしなくて良いため、精神的な負担を軽減できる人もいるでしょう。

ただし、将来保険金や解約返戻金などを受け取るとき、運用益が発生していると税金が課せられることがあります。運用実績によっては予想以上の税負担が生じる場合があるので、税金を考慮しておくことは大切です。

変額保険に加入するデメリット

加入することでさまざまなメリットが生じる可能性がある変額保険ですが、次のデメリットが生じることがあるので注意が必要です。

  • 元本割れする可能性がある
  • 資産運用としてはコストが高め

以下では、これらのデメリットについて詳しく説明します。

元本割れする可能性がある

変額保険は契約者が支払う保険料を原資にして資産運用します。運用実績によっては将来受け取れる保険料などが増える可能性がある一方で、思うような結果が出ないリスクがあることも知っておきましょう。

たとえ死亡や高度障害状態になったときの最低保証を用意していても、運用実績によっては将来受け取るお金が支払った保険料の総額を下回る「元本割れ」の状態になる場合があります。

さらに、変額保険を早期解約すると、支払った保険料に対して解約返戻金を受け取れる割合である「返戻率」が低くなり、ほとんどお金を受け取れなくなるケースも考えられます。

一見魅力が大きい変額保険ですが、加入するときはこうしたリスクも含めて検討しましょう。

資産運用としてはコストが高め

資産運用をすると、証券会社や投資信託などに支払う手数料がかかる場合があります。

変額保険においても、加入するとコストがかかると言われており、具体例として、次のものが挙げられます。

  • 変額保険を契約するときの「契約初期関係費」
  • 保険期間中に毎月積立金から控除される「保険関係費用」

また、契約から10年未満で解約すると「解約控除」が差し引かれます。このように変額保険は保険料から各種費用が差し引かれるので、払込保険料の全額が特別勘定で運用されるわけではないということも知っておきましょう。

変額保険が向いている人の特徴とは?

ここまでは、変額保険のメリットデメリットを説明しました。ほかの生命保険よりもリスクが大きい変額保険ですが、どのような人が加入に向いているのでしょうか。

以下では、変額保険が向いている人の特徴を説明します。

生命保険で資産を増やしたい人

変額保険は、保険料の一部を株式や債券などで運用することで、保険金や解約返戻金の増額が見込める保険です。

そのため、「リスクを負ってでも、将来もらえるお金を増やしたい」「物価の上昇に対応できるように、なるべく多くの資産を増やしたい」という人は、変額保険への加入を検討しても良いでしょう。

自分で投資商品を選べない人

株式投資や投資信託で資産運用する場合、どの企業に投資するか、どの投資信託に資産運用を依頼するかなどを自分自身で選択できます。しかし、投資に関する知識や経験が少ない場合、投資商品の選び方によっては大幅に資産が減る可能性があります。

変額保険に加入すれば、加入時に特別勘定を選択する必要はあるものの、保険会社の助言を受けながら運用方法を検討できます。もちろん、運用がうまくいかず元本割れするリスクもありますが、長い運用経験や成功実績のある保険会社に依頼したほうが、投資経験が少ない人にとっては安心でしょう。

まとめ

商品によっては、主に、以下の費用とリスクがあります。
ご負担いただく費用やその料率およびリスクの内容は、商品によって異なりますので、詳しくは各商品の「パンフレット」「ご契約に際しての重要事項(契約概要・注意喚起情報)」「ご契約のしおり・約款」などでご確認ください。
商品によっては、主に①保険関係費用(保険契約の締結・維持に必要な費用および死亡保障などに必要な費用)、②運用関係費用(投資信託の信託報酬や信託事務の諸費用など、特別勘定の運用により発生する費用)、③解約控除(解約時や減額時などに、経過年月数に応じて積立金額などから控除する費用)をご負担いただきます。上記に加え、外貨建保険については、通貨交換時に為替手数料をご負担いただきます。また、外貨によりお払込みまたはお受取りいただく際は、金融機関所定の手数料(リフティングチャージなど)をご負担いただく場合があります。
ご負担いただく費用の合計額は、上記を足し合わせた金額となります。また、商品によっては、価格変動リスクがあり、変額保険など、国内外の株式・債券などで運用を行い、その運用実績に応じて積立金額などが増減する商品では、株価や債券価格、為替の変動などにより、積立金額や将来の年金額、解約返戻金額などが既払込保険料を下回ることがあり、損失が生じるおそれがあります。
商品によっては、為替リスクがあり、外貨建の商品では、為替レートの変動により、受取時における保険金の円換算額が、契約時における保険金の円換算額や既払込保険料の円換算額を下回ることがあり、損失が生じるおそれがあります。商品によっては、金利変動リスクがあり、運用対象となっている資産(債券など)の市場金利に応じた価値を解約返戻金に反映させるしくみになっているため、解約時の市場金利の変動によっては、解約返戻金が減少し、既払込保険料を下回ることがあり、損失が生じるおそれがあります。

変額保険は、保険会社が契約者に代わって資産運用してくれるため、将来受け取れる保険金や解約返戻金額が増える可能性があります。しかし、景気の後退など、経済状況の変化などが影響すると、元本割れする場合もあるので注意が必要です。

また、変額保険に加入すると、保険の担当者に特別勘定の選び方を相談しながら資産運用することが可能です。

変額保険を扱う保険会社はいくつかあるため、保障内容や保険料、過去の運用実績などを比較して選びましょう。担当者に相談したり資料に目を通したりするなど、契約する保険会社を選ぶのにはある程度の時間が必要なので、余裕を持って検討するのが大切です。

保険コンパスなら、何度でも相談無料です

監修者プロフィール

宮里 恵
(M・Mプランニング)

保育士、営業事務の仕事を経てファイナンシャルプランナーへ転身。
それから13年間、独身・子育て世代・定年後と、幅広い層から相談をいただいています。特に、主婦FPとして「等身大の目線でのアドバイス」が好評です。
個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っている他、お金の専門家としてテレビ取材なども受けています。人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。

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