生命保険に加入する際、原則として保険をかけられる人(被保険者)の健康状態や傷病歴などを保険会社に告知しなければなりません。告知の際に、生命保険会社や承認によっては、健康診断の提出を求められる場合があります。

健康診断の結果によっては、生命保険の加入を断られるケースもあるため、生命保険と健康診断の関係を知るのは大切です。そこで今回は、生命保険の告知義務や告知の方法、告知で使える健康診断の種類や生命保険の加入を断られた場合の対処方法について説明します。

生命保険の告知義務とは?

そもそも告知とは、生命保険に加入する際に、被保険者の健康状態や過去に患ったことのある傷病、職業などありのままの事実を保険会社に伝えることです。告知は加入者の「義務」であり、生命保険に加入するときは原則として告知義務が必要となります。

申請者に告知義務が課せられている理由は、保険金を支払うリスクが高い人と低い人が同じ条件で保険に加入できると不公平になるからです。

生命保険は加入者が保険料を負担し合ってさまざまなリスクに備えるものなので、保険会社は公平性を保って運営できるように告知義務を設けています。

生命保険に加入する際の告知の方法

生命保険に加入する際の告知方法は、大きく分けて次の2種類です。

  • 書類で告知する方法
  • 対面で告知する方法

書類で告知する方法

書類での告知は、保険会社が用意した告知書に健康状態や傷病歴などを記載します。生命保険会社の担当者に健康状態を伝えても、告知したことにはなりません。

また、告知書にはいくつかの質問事項が書かれているので、項目に沿って記入します。

記憶がなく記入が難しい部分は空欄にせず、診察券や診療報酬明細書、お薬手帳などを頼りに、傷病名や処方された薬、受けた手術名、期間などをできるかぎり詳しく正確に記入しましょう。

保険会社や商品、保障内容などによっては、告知の際に健康診断書の提出を求められることがあります。その場合、告知した日より前の一定期間内に発行され、所定の要件を満たす健康診断結果通知書類を保険会社に提出する必要があります。

対面で告知する方法

保険会社が委託した専門家と面談して健康状態を保険会社に伝えます。対面の方法は次の対面で告知する方法は、2つが代表的です。

  • 医師による健康状態の診査
  • 生命保険面接士との面接

医師による健康状態の診査は、医師が被保険者を直接診察し、告知書に健康状態を記載する方法です。告知書の記載が終わったら申請者は書類を確認し、問題なければ署名して保険会社に提出します。

生命保険面接士は、生命保険を契約する際に、申請者の健康状態を直接確認する人です。この資格は、生命保険協会が実施する資格試験に合格した人に与えられるもので、必ずしも医師であるとは限りません。

また、生命保険面接士と面接する際は、あらかじめ被保険者が告知書を記載します。面接で記載内容と相違ないことを確認したら、生命保険面接士はその結果を保険会社に報告することで告知が完了します。

告知で使える健康診断の種類

告知で使える健康診断の種類には、次の3つがあります。

  • 人間ドック
  • 市区町村が主体でおこなう健康診断
  • 勤務先や学校などで実施する定期健康診断

ほかにも健康診断をする機会はいくつかあるため、保険会社に相談すれば告知用の書類として認められる可能性があります。ただし受診日が何年も前である健康診断結果は無効になることがあるので注意が必要です。

また保険会社が指定する検査項目がなければ、希望する条件で加入できない可能性があります。

健康診断書を提出する際は、事前に保険会社のルールを確認しておきましょう。

※指定の検査項目が健康診断結果にない場合、生命保険面接士と面談のうえ加入できるケースもあります。

健康診断で再検査でも生命保険に加入できる?

結論から言うと、健康診断の結果が要再検査となった場合は生命保険に加入できるケースと加入できないケースがあります。

たとえば、健康診断で要再検査の結果が出ても、その後再検査を受けて「異常なし」と診断されており、その他の健康状態に問題がなければ、生命保険に加入できる可能性があります。

一方で再検査を受けずに放置していると、加入を断られることがあったり、条件がついたりすることがあるので注意しましょう。

告知義務違反をするとどうなる?

生命保険に加入しやすくするために虚偽の内容を記載すると、告知義務違反とみなされる場合があるので注意が必要です。

契約が解除されて保険金や給付金を受け取れなくなる

「故意」または「重大な過失」で、告知をしなかったり、偽りの内容を告知したりすると、告知義務違反となる恐れがあります。告知義務違反をすると契約解除されることがあるため、保険金や給付金を受け取れなくなってしまいます。

ただし、解約するときに受け取れるお金である「解約返戻金」がある生命保険であれば、契約が解除される際にお金を受け取ることが可能です。

契約が取消となる場合も

生命保険の契約を締結するときに詐欺行為があった場合、契約は取消となります。

たとえば、現在の医療水準では治せない病気や、死亡するリスクがきわめて高い疾患になった経験があるにもかかわらず、それを故意に告知しなかった場合は、契約が取消となるおそれがあります。

契約が取消となった場合、支払った保険料は戻ってきません。

告知義務違反として契約が解除になることも

保険契約をして責任開始日から間もない給付金、保険金請求の場合、保険会社の診査が入る場合があります。

その際、事実を告知しなかったことが発覚した場合、責任開始日から2年以内であれば、告知義務違反として保険会社は保険契約の解除をすることがあります。

また、責任開始日から2年経過後でも支払事由が2年以内に生じていた場合には、保険契約を解除することがあります。

新規で加入する場合は、正しく告知をすることが大切です。

告知義務違反があっても保険金が支払われるケース

告知義務違反が発覚すると、基本的に保険金や給付金を受け取れません。

しかし、保険法では告知義務違反があっても、告知しなかった内容と保険金や給付金を支払う出来事との間に因果関係が無ければ、保険会社は保険の対象者に保険金や給付金を支払わなければならないと定められています。

そのため、生命保険に加入するときに骨折していることを申告しなかった人が脳梗塞で高度障害状態になった場合、骨折と脳梗塞に因果関係が認められなければ保険金や給付金が支払われることがあります。

生命保険への加入を断られた場合の対処方法

保険会社の判断によっては生命保険への加入を断られることがあります。

生命保険に加入できないと不測の事態に備えられないため、経済的な不安を抱えたまま暮らすことになりかねません。以下では、生命保険の加入を断られた場合の対処方法を説明します。

引受基準緩和型保険に加入する

引受基準緩和型保険は、通常の生命保険よりも告知項目が限定されている保険です。

持病を持っている人や健康診断で異常が指摘された人でも申し込みやすいため、上述した条件付きの生命保険に加入できなかった人でも備えを用意できる可能性があります。

また、引受基準緩和型の生命保険は告知の質問事項が少ないのもメリットで、告知項目の例として次のものがあります。

  • 過去2年以内に病気やケガで入院・手術をしたか
  • 過去3ヶ月以内に医師から入院や手術をすすめられたか
  • 過去5年以内にガンまたは肝硬変で入院・手術を受けたか

保険会社によって質問項目は異なりますが、告知項目が通常の生命保険よりも少ないため、加入可否を事前に判断しやすくなります。

ただし、引受基準緩和型保険は通常の生命保険よりも保険料が割高だったり、「加入後1年以内に支払い事由が生じたら、保険金額や給付金額を50%に減らす」といった条件が設けられたりします。引受基準緩和型保険に加入する際は、保障内容をよく確認しましょう。

無選択型保険を選ぶ

「引受基準緩和型保険にも加入できなかった」場合、無選択型保険を選ぶことでもしもの事態に備えられるようになります。

無選択型保険とは、健康状態を告知したり医師の診査を受けたりしなくても加入できる生命保険です。年齢制限や既往歴などが原因で通常の生命保険に加入できなかった人でも入りやすいといえます。

ただし、引受基準緩和型保険と同様に、無選択型保険も通常の生命保険よりも保険料が割高で、保険金や給付金の支給上限額が低く設定されるものが多いです。

契約してから一定期間内に病気で死亡した場合、支払われる保険金は払い込んだ保険料と同等の金額になる場合もあるため、こちらも契約内容をよく確認する必要があります。

特別条件付きで生命保険に加入できるケース

加入しようと考えている生命保険を断られても、一定の条件をつけることで加入できる可能性があります。

  • 保険料の割増し
  • 保険金・給付金の削減
  • 特定の高度障害の不担保
  • 特定の部位や疾病の不担保

保険料の割増しは、プランはそのままで月々支払う保険料を高く設定するものです。また、保険金の削減は、プランや保険料は通常通りで、もしものときに受け取れる保険金をリスクに応じて減額するものです。

保険料がどれくらい高くなるか、保険金がどれくらい削減されるかは、病気やケガなどのリスクによって変わるため、健康診断の結果も影響します。

特定の高度障害の不担保とは、約款で定められている特定の高度障害状態を不担保とする特別条件です。

特定の部位や疾病の不担保とは、主に医療保険に加入する際に設けられる条件です。これは、健康診断などの結果で病気の発症や再発のリスクが高い体の部分や病気の種類を保障対象外とするのが特徴で、それ以外の体の部位や病気は通常通り保障してもらえます。

このように、条件が加わると金銭的な負担や保障の制限が増えやすいですが、それでも生命保険に加入するメリットが大きいと感じたら、そのまま契約したほうが良いでしょう。

まとめ

生命保険に加入する際、健康診断結果の提出を求められる場合があります。健康診断結果は、告知日以前の一定期間に受診した健康診断の結果かつ、指定の検査結果が記載されている必要があるため、保険会社のルールに沿って手続きするのが大切です。

何より生命保険に加入する際は、事実をありのままに告知することが大切です。告知義務違反になると契約が解除される恐れがあるので、正確な告知を心がけましょう。

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監修者プロフィール

宮里 恵
(M・Mプランニング)

保育士、営業事務の仕事を経てファイナンシャルプランナーへ転身。
それから13年間、独身・子育て世代・定年後と、幅広い層から相談をいただいています。特に、主婦FPとして「等身大の目線でのアドバイス」が好評です。
個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っている他、お金の専門家としてテレビ取材なども受けています。人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。

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