建物や家財に生じる損害をカバーしてくれる火災保険。火災保険では、火災のほかに風水害や雪災、盗難や破損などで生じた損害を補償に含めることができるため、日々の暮らしをより安心なものにできます。

住宅が受ける損害は多種多様ですが、特に多いのが損害「雨漏りによる損害」です。雨漏りの原因によっては火災保険が適用されるため、もしかしたら損害額を保険でカバーできるかもしれません。

この記事では、火災保険で雨漏りを補償してもらう条件や保険金を請求する手順、火災保険で雨漏りを修理する際の注意点について説明します。

雨漏りとはどのような状況?

雨漏りとは、建物のどこかから雨水が漏れ出し、住宅の内部に滴り落ちることです。

雨漏りが多い場所として屋根が挙げられますが、ほかにも、壁や窓のサッシ、給排水管のすき間から雨水が浸入するケースもあり、専門家でも雨漏りしている箇所の特定が困難なときもあります。

また、雨漏りだと思っていても、実際は給排水管の破損による漏水だったり、結露が原因だったりすることもあります。同じ水のトラブルでも、原因によって対処方法や保険が使えるかどうかが変わるので注意が必要です。

火災保険で雨漏りを補償してもらう条件とは?

火災保険で雨漏りによる損害を補償してもらうには、次の条件を満たす必要があります。

  • 自然災害が原因で起こった雨漏り
  • 損害を受けてから3年以内である
  • 修理が必要な一定以上の損害が発生している

また上記に加えて、加入している火災保険に「風災・雹災・雪災」の補償が含まれていなければ雨漏りによる損害に対する保険の請求はできません。保険証券などで火災保険の補償範囲についても確認しておきましょう。

次にこれらの条件について詳しく説明します。

自然災害が原因で起こった雨漏り

雨漏りによる損害で火災保険を適用させるには、その原因が自然災害でなければなりません。具体的な自然災害として、次の3つが挙げられます。

  • 風災
  • 雹災
  • 雪災

雨漏りの原因が自然災害によるものか判断するために、これらの特徴を解説します。

風災

風災は、強風や突風、竜巻などの強い風が原因で生じる災害です。風災で雨漏りが生じる事例は以下の通りです。

  • 暴風で屋根の瓦が飛ばされ、雨漏りが発生した
  • 台風で隣家の瓦が自宅の窓にぶつかって破損し、割れ目から雨が入ってきた
  • 台風で雨どいが破損し、雨漏りが発生した
  • 竜巻で自転車が飛んできたため外壁が壊れ、雨漏りが生じた

台風や竜巻による風災と同時に雨が降ると、雨漏りが発生しやすくなります。損害の状況によっては早急に修理しなければ損害が拡大する恐れがあるため、迅速に対応するとともに火災保険で経済的な負担を補填する必要があります。

雹災(ひょう災)

雹災は、積乱雲から直径5㎜以上の氷の塊が降ることで生じる損害です。雹の大きさはさまざまで、大きいと直径5cm以上にもなるため、場合によっては住宅や家財が甚大な損害を受ける可能性があります。

雹災が原因で生じる雨漏りとして、次の事例が挙げられます。

  • 雹で天窓が破損し、雨漏りが生じた
  • 雹でリビングの窓ガラスが割れ、雨が入ってきた

雹災では、住宅内に入り込んだ雹が溶けて損害が拡大する可能性もあるので、大きな損害に備えて手厚い補償を用意する必要があります。

豪雪地帯に限らず雹災は起こり得るので、居住エリアにかかわらず火災保険でしっかり備えておきましょう。

雪災

雪災は、豪雪による雪の重みや雪の落下、雪崩などが原因で起こる災害です。特に山間部や豪雪地帯で雪災が起こりやすいので、降雪量が多いエリアに住む人は火災保険で備えることが重要です。

雪災で起こる雨漏りには、次の事例が挙げられます。

  • 雪の重みで屋根が破損し、雨が入ってきた
  • 2階から雪が落下して1階部分の雨どいが壊れ、雨漏りが生じた

上記は雪災による雨漏りとして火災保険の雪災補償が適用される可能性が高いです。

一方で雪解け水や凍結によって起こる雨漏りや除雪作業による事故で起こった雨漏りは補償の対象外であることが多いため、あらかじめ保険会社に確認する必要があります。

損害を受けてから3年以内である

雨漏りで生じた損害が補償される火災保険であっても、損害を受けてから3年が経過すると補償を受けられなくなる可能性があります。これは、保険法で保険金請求の時効が3年と定められているからです。

そのため、「5年前の自然災害で雨漏りが起こったが、火災保険に加入していることを忘れていた」という状況になっても、補償してもらえない可能性があります。

ただし、保険会社が時効を長く設定していたり、特別な事情があったりすれば、保険金の支払いが認められるケースもあります。「時効になったからしょうがない」とあきらめず、気づいた時点で保険会社に相談しましょう。

一定以上の損害が発生している

自然災害で雨漏りが生じただけで火災保険の保険金を受け取れるわけではありません。

保険金を受け取れるのは、雨漏りによって保険の対象である建物や家財が損害を受け、修理や購入が必要になったときです。

雨漏りで壁にシミができただけ、という状態では補償されないため気をつけましょう。

また一般的に「風災・雹災・雪災」の補償は免責金額が設定されていることが多いため、損害の程度が一定以下(免責金額以下)だと火災保険で補償してもらえない可能性があります。

保険金の支払い基準は、火災保険が免責型かフランチャイズ型かによって変わります。

免責型の場合

免責型は、火災保険に加入する際に、損害が生じたときの自己負担額を決めるタイプです。

たとえば、免責金額を10万円に設定した場合、雨漏りで建物に30万円の損害が生じたら、20万円が保険会社から支払われ、残りの10万円は自己負担しなければなりません。

損害額が8万円の場合、免責金額の10万円を超えていないため、保険会社から保険金を受け取れません。

免責金額を高く設定すれば保険料を抑えられますが、もしものときに自己負担額が増えると家計が厳しくなってしまいます。雨漏りが発生したときにしっかりと補償を受けるには、災害時にどこまで自己負担できるかを考えて免責金額を設定するのが大切です。

フランチャイズ型の場合

フランチャイズ型は、設定した金額以上の損害が出たときに限り、補償限度額まで補償を受けられるのが特徴です。

たとえば20万円以上の損害額が発生すれば補償を受けられるタイプの火災保険では、雨漏りによる損害が18万円だと補償額は0円です。しかし21万円の損害が発生すれば、損害額の全額である21万円が全額補償されます。

現在の火災保険は免責型が多く、フランチャイズ型を採用している保険会社は少ない傾向です。しかし、火災保険のタイプは保険会社によって異なるため、事前に保険金の支給条件を確認しておきましょう。

火災保険の保険金を請求する手順

雨漏りで建物や家財に損害が発生したら、保険会社に火災保険の保険金を請求する必要があります。保険金請求の手順は、次の通りです。

  1. まず保険会社に連絡する
  2. 必要書類を用意する
  3. 保険会社の調査を受ける※場合による
  4. 修理業者に修理を依頼する

以下では、これらの手順について詳しく説明します。

まず保険会社に連絡する

雨漏りを発見したら、なるべく早く保険会社に連絡しましょう。対応が遅れると、損害の状況確認が困難になるため、補償を受けにくくなる可能性があります。

保険会社に連絡する際は、自然災害が発生した日時や損害の状況をできるだけ詳しく伝えます。

そして、修理業者の手配が必要だと判断されたら、業者に連絡して見積もりや応急処置してもらいます。自力で応急処置する方法もありますが、思わぬケガや損害の拡大といったリスクがあるため、無理のない範囲で対処しましょう。

必要書類を用意する

保険会社への連絡から数日後に、火災保険の申請に必要な書類が自宅に届きます。保険会社に返送する書類は、主に次の5つです。

  • 保険金請求書
  • 事故内容報告書
  • 修理見積書
  • 損害明細書
  • 事故の状況がわかる写真

保険会社の調査を受ける※場合による

必要書類の提出が終わったら、後日保険会社が委託した損害鑑定人が現地調査に訪れることがあります。

損害鑑定人は専門的な知見をもとに損害の原因や程度を調査した後に、保険会社に結果を報告する役割を果たします。損害鑑定人から報告書を受け取った保険会社は、先ほどの提出書類とともに保険金支払いの可否や支払額を決定します。

ただし、損害人は必ず現地調査に来るわけではありません。損害額が高額になる事故ほど派遣される可能性が高いと言われていますが、明確な線引きは公表されていません。

修理業者に修理を依頼する

保険金の支払いが決定したら、見積もりを依頼した修理業者に修理依頼します。損害額がすべて保険でカバーできれば、修理業者に支払う費用も保険金からまかなうことができます。

火災保険で雨漏りの修理を依頼する際の注意点

雨漏りの修理は基本的に修理業者に依頼しますが、その際、次の点に注意しましょう。

  • 火災保険が適用されると分かってから修理を依頼する
  • 実績のある修理業者に依頼する
  • 二次的損害に気をつける

火災保険が適用されると分かってから修理を依頼する

上述したように、雨漏りによる損害が発生しても、原因や契約内容によっては火災保険の適用範囲外と判断される可能性があります。

「火災保険で損害額を補えるから」と考えて保険がおりる前に業者に修理を依頼すると、自己負担額が増えてしまうこともあるので注意が必要です。

また、業者によっては、「雨漏りは火災保険で補償されるから修理しても大丈夫」と断言するところもあるようです。

業者の話を信じて保険がおりる前に修理を依頼してしまうと、高額な修理費用を請求される可能性もあるので気をつけましょう。

実績のある修理業者に依頼する

雨漏りの修理を依頼するときは、火災保険を使った修理実績がある業者にお願いするのがおすすめです。このような業者は火災保険を申請する流れを理解していることが多く、アドバイスを受けながら円滑に保険金請求や修理の手続きを進められます。

火災保険での修理実績はホームページなどで確認でき、直接電話をかけて確認することも可能です。

また、応急処置的な対応だけでなく、修理後の散水調査などフォローアップがしっかりしている業者を選ぶのもポイントです。

二次的損害に気をつける

雨漏りの修理は修理業者に任せるのが基本ですが、雨漏りが発生したからといってすぐに保険金を受け取れるわけではありません。

応急処置をせずに保険金の支払いを待つと、その間に柱の腐食や家財のカビといった二次的な損害が発生する可能性が高まります。

このような状態になると修理費用が余分にかかる可能性が出てきますが、火災保険では基本的に二次的損害は補償対象外です。

雨漏りが発生してからの対応によっては損害額をすべて補えず、全額自己負担になってしまうリスクがあるため、雨漏りを見つけたら可能な範囲で損害拡大の防止に努めましょう。

まとめ

大切な建物や家財が雨漏りで損害を受けると焦ってしまうかもしれませんが、事前に対処方法や火災保険の仕組みを知っておくことで、正しく対応できるようになります。

また、火災保険では補償してもらえない雨漏りもあるため、日常的な住宅のメンテナンスも重要です。

自然災害が発生すると、さまざまな業者が修理の見積もりなどの営業に来るケースもありますが、余計な費用負担を増やさないためにも適切な対処方法を身につけておきましょう。

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監修者プロフィール

宮里 恵
(M・Mプランニング)

保育士、営業事務の仕事を経てファイナンシャルプランナーへ転身。
それから13年間、独身・子育て世代・定年後と、幅広い層から相談をいただいています。特に、主婦FPとして「等身大の目線でのアドバイス」が好評です。
個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っている他、お金の専門家としてテレビ取材なども受けています。人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。

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