生命保険によっては、終身保険や養老保険のように数十年にわたって加入するものもあります。しかし、いつまでも保障内容が契約時のままでは、ライフステージや時代の変化に合った保障が受けられなくなるかもしれません。

ライフステージの変化として代表的なものに「結婚」がありますが、結婚したらさまざまな側面から契約を見直す必要があります。今回は、結婚が生命保険を見直すタイミングだと言われる理由や必要な手続きの内容、生命保険を見直す際のポイントや結婚後に保険を見直すタイミングについて詳しく説明します。

結婚が生命保険を見直すタイミングと言われる理由

結婚が生命保険を見直すタイミングと言われる理由として、次の3つが挙げられます。

  • 万が一のときに必要な保障を早い段階で考えられる
  • 保険料を抑えやすい
  • お互いの価値観をすり合わせられる

まずは、これらの理由についてご説明します。

万が一のときに必要な保障を早い段階で考えられる

結婚したら、万が一のときに遺された家族への保障を考える必要があります。場合によっては子どもを複数人持つことになるため、自分自身への保障がメインになっていた独身の頃よりも手厚い保障をなるべく早く用意しなければなりません。

中には、「自分の葬儀費用さえ用意すれば大丈夫」と考えている人もいるでしょう。しかし、遺された家族は日々の生活費に加えて、教育資金や自動車ローンなども支払わなければならないので、よほど貯蓄に余裕が無い限り安定的な生活を送るのは難しいです。不測の事態が生じたときに少しでも家族の負担を減らすには、結婚を機に生命保険を見直すのがおすすめです。

保険料を抑えやすい

結婚したときの年齢にもよりますが、生命保険は加入時の年齢が低いほど保険料が安くなる傾向があります。それは、年齢が若いほど病気やケガを負うリスクが少ないからです。

また、結婚後に妊娠してから生命保険に加入する場合、保障が制限されたり保険料が割高になったりする可能性もあります。保険料が高いとそれだけ家計の負担も増えるため、特に収入が低くなりがちな若年層ほど生活が厳しくなります。健康診断などで病気が分かって保険料が上がることも考えられるため、結婚を機に生命保険に加入するのがおすすめです。

お互いの価値観をすり合わせるられる

結婚するタイミングで生命保険を見直すと、夫婦でお互いの価値観をすり合わせやすくなります。将来の備えを考える過程で、お互いがどのような人生を送りたいか、何が不安かなどを話し合えるので、円満な家族生活を送りやすくなるでしょう。

夫婦ですり合わせる具体例として、子どもを何人持ちたいか、マイホームを持つのか、何歳までにいくらお金が必要かといった内容が挙げられます。長期的なライフプランをイメージするのは簡単ではありませんが、生命保険の見直しをきっかけに夫婦で将来どうありたいかを共有すると、用意すべき備えを考えやすくなります。

結婚する際に必要な生命保険の手続きとは?

結婚すると、さまざまな観点から生命保険を見直さなければなりませんが、ご加入中の保険がある場合、次の手続きを済ませる必要があります。

  • 名義を変更する
  • 契約者を変更する
  • 住所や電話番号を変更する
  • 保険金の受取人を変更する
  • 保険料の引き落とし先を変更する
  • 指定代理請求人を変更する

以下では、これらの手続きについて詳しく説明します。

名義を変更する

結婚して姓が変わる場合、生命保険の名義変更をしなければなりません。名義が変わると保険金や給付金が受け取れなくなるわけではありませんが、旧姓のままではいざというときに本人確認に時間がかかるかもしれません。

すぐに経済的な負担を補填できないと、それだけ自己負担額が増えて家計が圧迫されます。家賃や食費だけでなく、出産・育児にかかる費用などを余裕を持って支払うには、なるべく早く名義変更する必要があります。

また、名義変更が遅れると、年末調整や確定申告にも影響します。生命保険に加入していると、生命保険料控除を申告することで税負担を軽減できますが、名義変更していないと申告するたびに本人確認書類を添付しなければなりません。早めの名義変更は、こうした負担を抑えることにもつながります。

契約者を変更する

もし生命保険の契約者が親であれば、結婚後も親が保険料を支払うことになります。しかし、結婚して配偶者と同居し、経済的に親から独立することになったら、結婚を機に契約者を自分に変えても良いでしょう。

また、結婚後専業主婦になり、保険料の支払いを夫がするのであれば、契約者を夫に変更するのも1つの方法です。ただし、保険料によっては経済的な負担が大幅に増えるため、誰を契約者にするか、将来に渡って支払いを続けられるかをよく考えたうえで契約者を変更する必要があります。

住所や電話番号を変更する

結婚して住所や電話番号が変わる場合、その旨を保険会社に伝えて登録内容を変更しなければなりません。これらを変更しなければ、保険会社からのお知らせが届かなくなるので、保険金や給付金の申請手続き、年末調整や確定申告などに影響します。

もちろん、郵便局の転送手続きを利用して新住所に郵便物を届けてもらうのも良いでしょう。しかし、転送してもらえるのは1年間のみなので、1年が経過すると郵便物が届かなくなります。保険会社からの郵便物には、契約更新のお知らせなど重要なものも含まれるので、早めに変更手続きを進めましょう。

保険金の受取人を変更する

結婚して家族構成が変わったら、保険金受取人の変更も検討する必要があります。たとえば、独身のときに死亡保険金の受取人を両親に設定していた場合、結婚後は配偶者や子どもを受取人に設定するのがおすすめです。

自分自身に万が一のことがあると、遺された家族は限られた収入や預貯金などで生活しなければなりません。子どもの人数によっては生活費に加えて教育資金などもかかるので、自分の家族にしっかりお金を遺せるよう受取人を再設定する必要があります。

もちろん、受取人が親のままでも配偶者や子どもにお金を渡すことは可能です。しかし、その場合、親が保険金を受け取るときに加えて配偶者や子どもにお金が渡るときにも税金がかかってしまいます。なるべく手もとに残るお金を増やすためにも、税金のことも考えて受取人を設定しましょう。

保険料の引き落とし情報を変更する

人によっては、結婚してから生命保険の手続きより先にクレジットカードや銀行口座の名義を変更する人もいます。しかし、生命保険の名義変更をしても、これらの情報を変更しなければ保険料が引き落とせない場合があるので注意が必要です。

保険料が引き落とせないからといって、すぐにペナルティを受けることはありませんが、いつまでも手続きをしないと未納扱いにされるかもしれません。保険料の未納が続くと、いざというときに適切な保障が受けられなかったり、保険契約を解約されたりする可能性があるので、なるべく早めに手続きを進めましょう。

指定代理請求人を変更する

生命保険では、入院給付金や手術給付金などの請求手続きを被保険者がおこなうことが多いです。しかし、被保険者が死亡したり高度障害状態になったりするなど、本人の意思を表明できないと、保険金や給付金の申請手続きが進められません。

このようなケースに備えて、被保険者に代わって保険会社に請求手続きができる「指定代理請求人」を指名しておけば、万が一のときもお金を受け取れるようになります。独身時代に指定代理請求人を親に設定していた場合、結婚を機に配偶者に設定すれば、実家と新居が離れても保険会社とのやり取りを円滑に進められるでしょう。

結婚後に生命保険を見直すときのポイント

ここまでは、結婚後に必要な生命保険の手続きについて説明しました。名義変更のように、手続きの内容によっては簡単に進められるものもありますが、中には受取人や指定代理請求人の変更など、慎重に決めなければならないものもあります。

以下では、結婚後に生命保険を見直すときのポイントについて、詳しく説明します。

夫婦が加入する生命保険を確認する

結婚すると、自分だけでなく配偶者の生命保険も見直さなければなりません。たとえば、妻が保険金の受取人を夫に変更したにも関わらず、夫の生命保険の受取人を親にしたままでは、夫にもしものことがあったときに妻がお金を受け取れなくなります。

人によっては、「両親が自分に生命保険をかけていたのを知らなかった」というケースもあります。お互いが加入している生命保険を確認する際は、両親への確認もあわせておこなうと安心です。

夫婦でライフプランを共有する

先述したように、結婚を機に生命保険を見直すと、夫婦でライフプランを共有することにもつながります。たとえば、子どもの教育費や自動車を購入する予定など、大きな出費について早めに考えると、用意すべき備えをイメージしやすくなるでしょう。

また、保険会社によっては、妊娠していると医療保険に加入できなかったり、加入できたとしても保険料が割高だったりします。もし保障に制限が付けられると、「帝王切開は保障対象外」「妊娠や出産での入院は保障対象外」のように、不測に事態に十分備えられなくなるかもしれません。

場合によっては話し合いに時間がかかるかもしれませんが、夫婦でライフプランを共有すれば、適切な備えを用意できるでしょう。

共働き片働きかをふまえて見直す

ライフプランを話し合う上で、共働きか片働きかを決めることも大切です。夫婦2人ともフルタイムで働くのか、どちらかが働かずに家事に専念するのかによって家計の収入が変わり、生命保険を見直す重要性が高まるからです。

家庭によっては、子どもが小学校に入るまでは専業主婦で、就学後はパートで働くというケースもあるでしょう。ライフステージごとに働き方や収支のバランスがどう変わるかをイメージすると、どの程度生命保険で備えれば良いか考えやすくなります。

結婚後に生命保険を見直すタイミングとは?

結婚したときだけでなく、結婚した後も次のタイミングで生命保険を見直す必要があります。

  • 住宅を購入したとき
  • 家族構成が変わったとき

日々の仕事や家事、子育てなどが忙しいと見直すタイミングを逃してしまいがちですが、あらかじめ知っておくとライフステージごとに適切な保障を用意できるでしょう。以下では、これらのタイミングについて詳しく説明します。

住宅を購入したとき

マンションや一戸建てをローンを組んで購入するときに「団体信用生命保険」に加入すると、契約者に万が一のことがあっても遺された家族のローン支払い負担を無くせます。

団体信用生命保険に加入した時点で契約者の死亡保障を減額すれば、月々の保険料の負担を軽減できます。家計の負担が軽減すれば、それだけ自由に使えるお金が増えるので豊かで安定した生活を送りやすくなります。

家族構成が変わったとき

子どもが産まれたときや自立したときなど、家族構成が変わったときも生命保険を見直すのに適しています。たとえば、学資保険に加入すれば、親にもしものことが起こっても進学などに必要なお金をまかないやすくなります。

また、あまり考えたくないことですが、離婚するときも契約内容を見直す必要があります。離婚後に独身になったら、今までの保障が過剰なものになるかもしれないので、保障の減額しても良いかもしれません。一方、母子家庭や父子家庭になって収入が大幅に減少した場合は、もしものときの備えて保障を手厚くする必要性が出てくるでしょう。

まとめ

ここでは、結婚したら生命保険を見直すべき理由や見直す際のポイントについて説明しました。

結婚すると、さまざまな手続きが必要になるので、生命保険の見直しが後回しになってしまいがちです。もちろん、結婚したらすぐに見直さなければならないわけではありませんが、内容によっては夫婦で時間をかけて話し合ったほうが良いものもあります。

もしものときに適切な保障を受けられるよう、この記事を参考にして少しずつ見直しを考えましょう。

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監修者プロフィール

宮里 恵
(M・Mプランニング)

保育士、営業事務の仕事を経てファイナンシャルプランナーへ転身。
それから13年間、独身・子育て世代・定年後と、幅広い層から相談をいただいています。特に、主婦FPとして「等身大の目線でのアドバイス」が好評です。
個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っている他、お金の専門家としてテレビ取材なども受けています。人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。

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