自動車保険にはさまざまな補償がセットできるため、 備えたいリスクにあわせて特約を追加すれば、より安心して日常生活を送れます。

中でも、示談交渉や損害賠償金の請求手続きなどを弁護士に依頼する際にかかる弁護士費用を補える「弁護士特約」は、付帯するメリットが大きい特約です。

2021年3月におこなった編集部の独自調査によると、 自動車保険に加入している119人のうち「現在弁護士特約に加入している」と回答した人は、 全体の51.3%でした。

残りの48.7%の人は「弁護士特約に加入していない」と回答しており、 弁護士特約に加入するかどうかは人によって大きく分かれるようです。

弁護士特約を付けるべきか判断できるよう、本記事では、弁護士特約の概要や役立つ場面、 弁護士特約をつけるメリットや注意点について徹底解説します。

そもそも弁護士特約とは?

そもそも弁護士特約とは、自動車事故や日常生活における事故で被害者になった場合に、 ケガや車、モノの損害に対する賠償請求を弁護士に委託する際にかかる弁護士費用や、 法律相談費用などを補償する特約です。

自動車事故にはさまざまなトラブルが生じる可能性があるため、 状況によっては交渉が複雑になります。 弁護士特約をつければ、費用を抑えて弁護士に相談・依頼できるので、 納得いく形でトラブルを解決させられるでしょう。

弁護士特約が役立つ場面

では、弁護士特約はどのようなときに役立つのでしょうか。 弁護士特約が役立つ場面として、次の3つが挙げられます。

以下では、これらの場面と弁護士特約の関係について詳しく説明します。

もらい事故に遭ったとき

たとえ自動車保険に加入していても、自分自身に責任がないもらい事故では、 保険会社に示談交渉してもらえません。

もらい事故に遭うと、基本的に自分自身で相手側の保険会社の担当者と交渉することになります。 しかし、ケガの程度や仕事の都合などによっては、相手の保険会社との交渉を並行させるのが難しい場合があります。

しかし、弁護士に依頼すれば、担当弁護士が相手側の保険会社の担当者と示談交渉をしてくれます。 その際、依頼手数料や成功報酬などが発生しますが、 弁護士特約に加入していれば、これらの費用を保険会社が補填してくれます。

経済的な負担を抑えつつ弁護士に示談交渉を依頼できるので、 安心して治療や仕事などに専念できるでしょう。

事故相手が無保険車で交渉に応じないとき

もらい事故に遭って、相手が自動車保険に加入していれば、 相手側の保険会社と交渉したうえで損害賠償の手続きを進めてくれます。

しかし、事故相手が無保険車で、事故後の交渉に応じてくれない場合、 請求した損害賠償額よりも低い金額を提示してきたり、損害賠償に応じなかったりする場合があります。

このようなトラブルに適切に対処するには、法律の専門家である弁護士への依頼が必要です。 弁護士に依頼すれば、トラブルがさらに悪化するリスクを防ぎ、スムーズに交渉を進めることができるでしょう。 弁護士特約で弁護士の依頼費用をカバーできれば、経済的な負担を抑えて問題解決をすることも可能です。

相手の保険会社が提示した金額に納得できないとき

自分自身で相手の保険会社と示談交渉をする場合、 提示された損害賠償金額によっては納得できない場合があります。 しかし、相手は示談交渉のプロであり、法律的な知識も豊富なので、 たとえ提示された金額に納得できなくても、それを増額してもらうのは簡単ではありません。

法律の専門家である弁護士に依頼すれば、 過去の判例など法的な観点から示談交渉を進めてもらえます。 自分自身で交渉するよりも損害賠償額を高めやすいので、 納得いく形でトラブルを解決させられるでしょう。

弁護士特約の補償対象者

自動車保険の被保険者に付帯させる弁護士特約ですが、 この特約が適用されるのは被保険者だけではありません。 弁護士費用特約の補償対象者として、次の人が挙げられます。

  • ・自動車保険の記名被保険者
  • ・被保険者の家族(配偶者・配偶者の同居の親族、別居の未婚の子)
  • ・契約している自動車に同乗している人
  • ・契約している自動車の所有者

ほかにも、契約している自動車以外の車や原付バイクを運転しているときは、 その自動車や原付バイクの所有者、同乗者も補償対象者に含まれる場合があります。 このように、弁護士特約を付けると、さまざまな人が補償を受けられます。

弁護士特約を付けるメリットとは?

さまざまな場面で広範囲の人たちが補償を受けられる弁護士特約ですが、 この特約をつけるとどのようなメリットが得られるのでしょうか。

弁護士特約を付けると得られるメリットは、次の3つです。

以下では、これらのメリットについて詳しく説明します。

弁護士に依頼する際の経済的負担を抑えられる

弁護士特約を付帯しておけば、万一の際に弁護士に依頼するときの金銭的負担をカバーできます。

弁護士への依頼時に支払われる上限は、一回の事故につき300万円までと設定されているのが一般的です。

通常の事故で弁護士費用が300万円を超えることは少ないといわれており、 その場合は自己負担がゼロで依頼することが可能です。

なお、弁護士への「相談」のみで料金が発生するケースもありますが、 弁護士依頼特約を付けていれば、相談料に対しても10万円まで補償を受けられるケースが一般的です。

煩雑な手続きや示談の交渉をしなくてよい

先述したように、交通事故の程度や状況によっては、示談交渉に時間がかかる場合があります。 治療や仕事、家事などをしながら相手の保険会社と繰り返し交渉をしなければならないケースもあるため、 事故後のストレスが長期化しかねません。

弁護士特約を利用して弁護士に示談交渉を依頼すれば、 複雑になりがちな示談交渉を代わりに進めてくれます。

損害賠償金の請求に必要な書類の取り寄せや手続き、 後遺障害の等級認定手続きなども代行してくれるので、 面倒な手続きや事故後のストレスを軽減させながら問題解決を目指すことも可能です。

相談する弁護士を自分で選ぶことができる

弁護士特約を利用する旨を保険会社に伝えると、 保険会社から弁護士を紹介される場合があります。 しかし、保険会社が弁護士を紹介したからといって、 必ずその弁護士に相談しなければならないわけではありません。

弁護士特約で利用する弁護士は、被保険者が自由に選べます。 そのため、「自宅から近い弁護士に相談したい」「以前相談した弁護士に依頼したい」といった希望があれば、 それに沿った弁護士に依頼することが可能です。

もちろん、そのときにかかった弁護士費用は、 設定する保険金額の範囲内で支払ってもらえます。 自分自身が信頼できる弁護士に相談すれば、より安心して治療や仕事などに専念できるでしょう。

弁護士特約を利用する際の流れ

弁護士特約を使って円滑に交渉を進めるためには、 特約を利用する流れを知っておくことも大切です。

弁護士特約を利用する際は、 まず自分自身が加入する保険会社に「弁護士特約を利用したい」という旨を伝えます。

弁護士特約が利用できる交通事故であると判断されると、 保険会社から弁護士特約の利用手続きを進めるために必要な書類が送付されるので、 必要事項を記入して返送します。

その際、委任する弁護士が決定していれば、 弁護士事務所が発行する委任契約書を一緒に保険会社に送りましょう。

基本的に、弁護士費用は弁護士事務所から保険会社に請求することになります。

念のために弁護士特約を利用することを弁護士に伝えておくと、 「弁護士費用の請求書が自分に送られてくる」といったトラブルを防ぐことができます。

弁護士特約に加入する際の注意点

弁護士特約に加入するメリットは大きいですが、次の注意点を意識することも大切です。

以下では、これらの注意点について説明します。

日常生活でのトラブルは補償対象外になる場合がある

弁護士特約に加入していても、日常生活でのトラブルは補償対象外になる場合があるので注意が必要です。 弁護士特約には、「自動車事故に限って使えるタイプ」と、 「日常生活で生じたトラブルにも使えるタイプ」があります。

そのため、「歩いていたら自転車にぶつかられてケガをした」「スキーをしていたら他人にぶつかられてケガをした」など、 自動車が関連しない事故に遭った場合は弁護士特約の対象外とされる可能性があります。

日常生活で生じるトラブルで弁護士特約を使いたいのであれば、 保険会社が設定するルールを確認してから特約を付けましょう。

弁護士に依頼するときには事前に承認を得る必要がある

先述したように、弁護士特約を使うときは、 事前に保険会社に連絡して特約が適用されるかを確認しなければなりません。 また、委任契約書を送付しなければ、弁護士に依頼したことが証明できないため、 弁護士費用の自己負担が生じる可能性があります。

「せっかく依頼したのに弁護士特約が使えなかった」といった事態が起こると、 経済的な負担が増えてしまうため、手もとに残る損害賠償金が少なくなる場合があります。

うまく弁護士特約を活用して納得いく形でトラブルを解決させるためにも、 必ず保険会社への相談をしましょう。

補償が重複していないか確認する

弁護士特約は、上述したように幅広い範囲の人たちが補償対象者に含まれます。

そのため、複数台の自動車保険を契約している場合、弁護士特約の補償範囲が重複しているかもしれません。

配偶者や両親などが弁護士特約にすでに加入していれば、 自分自身の自動車保険で弁護士特約を付けなくても補償してもらえる可能性があります。 ほかにも、火災保険やクレジットカードの特約など、 弁護士特約を用意している保険やサービスはたくさんあるため、 それらを活用できないか確認しましょう。

弁護士特約を付ける際に発生する保険料はそこまで高額ではありませんが、 補償が重複すると余計な保険料を支払うことになります。 補償や保険料を適正に設定するためにも、 補償が重複していないか確認したうえで、弁護士特約を付帯しましょう。

加入後に生じたトラブルが補償対象になる

ほかの保険でも同じことが言えますが、 弁護士特約は、加入後に生じたトラブルが補償対象になります。

そのため、トラブルが生じてから「弁護士特約を使いたい」と思って特約を付けても、 発生した弁護士費用を補填してもらえないので注意が必要です。

まとめ

ここでは、弁護士特約の概要や活用場面、 弁護士特約をつけるメリットや付帯させるときの注意点について説明しました。

トラブルが生じると法的な観点で交渉を進めなればなりませんが、 よほど知識がない限り有利な結果を導くのは難しいでしょう。 また、自分自身で交渉を進めようとすると、 治療や日常生活の負担になるので、大きなストレスがかかってしまいます。

いざというときに安心して交渉を依頼できるよう、弁護士特約の付帯を検討しましょう。

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監修者プロフィール

宮里 恵
(M・Mプランニング)

保育士、営業事務の仕事を経てファイナンシャルプランナーへ転身。
それから13年間、独身・子育て世代・定年後と、幅広い層から相談をいただいています。特に、主婦FPとして「等身大の目線でのアドバイス」が好評です。
個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っている他、お金の専門家としてテレビ取材なども受けています。人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。

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