新築の一戸建てを購入する際、安心して住み続けるために「火災保険」を検討する人は多いでしょう。 火災保険に加入すると、万が一のときに大きな補償を受けられますが、 その分保険料の負担が生じるため月々の出費が増えてしまいます。

これから家を購入する人の中には、 「本当に火災保険への加入は必要?」と疑問を持つ人もいるかもしれません。ここでは火災保険の必要性と、実際に新築の一戸建てを購入した人のうちどれほどの人が火災保険に加入しているのか見てみましょう。

  • ■調査概要
  • 調査対象者:「新築一軒家を購入したことがある方を対象にしたアンケート」
  • 有効回答数:150名
  • 調査期間:2022年6月10日~6月15日
  • 調査方法:編集部独自

2022年6月におこなった編集部の独自調査によると、新築の一戸建て購入経験者150人のうち、 「現在、火災保険に加入している」と回答した人の割合は95.3%です。 新築の一戸建てを購入した人の9割以上が火災保険に加入していることから、 ほとんどの人が火災保険に加入しているということが分かります。

住宅ローンを利用するなら、新築一戸建ての火災保険加入は必須

多くの人が加入している火災保険ですが、 新築の一戸建てを購入したら必ず火災保険に加入しなければならないのでしょうか。 実は住宅ローンを利用する場合、火災保険の加入は必須です。

購入した住宅が新築か中古かに関わらず、住宅ローンを組むのであれば、火災保険に必ず加入しなければなりません。これは、住宅ローンを提供する金融機関が火災保険の加入を融資の条件としているからです。

住宅ローンは最長で35年の返済期間を設定できますが、 ローン返済期間中に火災事故が起こる可能性も十分に考えられるからです。 このような被害に遭うと、住宅に住めない状態にも関わらずローンの返済義務だけ残ってしまいます。 しかし、火災保険に加入していれば、 万が一の事態が起きてもローン返済を継続させやすくなるので、加入が義務付けられているのです。

一方で、ローンを組まずにキャッシュで住宅を購入した人は、火災保険に加入する義務はありません。 しかし、ローンを組んだ人と同様に、将来的に火災事故が起こる可能性は十分に考えられます。 火災保険に加入しなければ保険料を抑えられますが、 住宅に発生しうるさまざまなリスクに備えるためにも、火災保険に加入しておくのがよいでしょう。

火災保険の補償内容と保険の対象

万が一の事態で生じる経済的な負担を補償してくれる火災保険ですが、 加入することでどのような補償が受けられるのでしょうか。 適切な備えをするためには、火災保険の補償内容を知っておくことも大切です。

以下では、火災保険の補償内容について詳しく説明します。

火災だけじゃない!火災保険の補償範囲・補償内容

火災保険は、その名称から「火災のときにだけ受けられる補償である」と思われがちです。 しかし、火災保険で受けられる補償内容には、さまざまな種類があります。

火災失火や放火、もらい火などによる火災の損害
落雷、爆発、破裂落雷およびガス漏れなどによる破裂や爆発の損害
水災台風、暴風雨などによる洪水・融雪洪水・高潮・土砂崩れ・落石などによる水災の損害
風災、ひょう災、雪災台風による強風や大粒のひょう、豪雪や雪崩などによる損害
(融雪洪水はのぞく)
建物の外部からの衝突・落下・飛来建物外部からの物体の落下や飛来によって保険の対象に生じる損害
不測かつ突発的な事故による破損・汚損子どもが物を投げて壁紙が破損してしまうなど
盗難盗難によって保険の対象が盗まれる・あるいは損傷した場合
騒じょうまたは労働協議など集団行動や労働協議などによる暴力行為・破壊行為による損害

上記のうち、「火災」と「落雷、破裂、爆発」「風災、ひょう災、雪災」の補償は基本補償として必ず補償に含めている保険会社が多いです。その他の水災補償や盗難補償については、任意で付けたり外したりできます。

保険会社によって補償範囲は異なり、あらかじめ多くの補償がセットになっている商品もあれば、ご自身で好きな補償だけを選びカスタマイズできる商品もあります。いずれにしても、火災保険では、火災に限らず幅広いリスクに備えることができます。

将来住宅に生じうるリスクを多方面からカバーできるため、購入した住宅で長く安心して暮らし続けられるでしょう。

ただし、補償範囲の広い火災保険でも、 地震や噴火による住宅の損害はカバーできないので注意が必要です。
具体例として、地震が原因で発生した火災や津波による損害、火山の噴火による火災・損壊・埋没・流失などが挙げられます。火災保険に加入する際は、補償を受けられる条件を確認しておくこととともに、地震保険にも加入しておくことも大切です。

保険の対象は建物と家財

火災保険では「建物のみ」や「家財のみ」、「建物+家財」の3パターンから補償範囲を選べます。ただし、新築一戸建ての購入で住宅ローンを利用する場合は「建物」を保険の対象にした火災保険への加入が求められます。

賃貸物件であれば家財のみの火災保険で事足りますが、住宅ローンを組む場合は「建物のみ」「建物+家財」いずれかの加入が必要です。

建物だけに保険をかけることもできますが、家財も補償対象に入れておけば、 テレビやテーブル、タンスや冷蔵庫といった家財への損害も補償してもらえます。

もちろん、補償範囲を広げるほど保険料は高くなりますが、 万が一の事態で生じる経済的な負担を最小限に抑えるためにも、適切な補償範囲を設定しておくことが大切です。

ただし、家財といっても自動車や自動二輪車(原動機付き自転車を除く)は自動車保険の対象になるため、火災保険の対象外となります。

また、30万円を超える貴金属や絵画や骨董品などの美術品は、あらかじめ明記物件として保険会社へ申請しておかなければ補償の対象外になります。火災保険で家財の補償を付ける際は、どの範囲の家財が補償範囲に含まれるかという点もしっかり確認しておきましょう。

新築一戸建ての火災保険料の相場|保険料はどう決まる?

住宅に生じうる幅広い損害を補償してもらえる火災保険ですが、保険料の相場は火災保険の契約プラン、保険金額、補償の範囲、住宅の種別や居住地によって大きく異なるため、一概に言えません。

ただ一戸建ての場合は、耐火建築物であるマンションと比べて木造造が基本になるため、マンションと比べたときの火災保険料は高めになります。

なぜ、火災保険料の相場には大きな差があるのでしょうか。 以下では、火災保険料の相場や保険料に影響する要因について詳しく説明します。

建物の構造

一戸建ての場合、建物の構造は「T構造(耐火構造)」と「H構造(その他の構造)」に分けられます。 T構造(耐火構造)はコンクリート造や鉄骨造などの建築物で、H構造(その他の構造)は木造や土蔵造りなどの建築物のことをいいます。

T構造(耐火構造)は、H構造(その他の構造)よりも耐火性能が優れているため、火災リスクが低いと考えられます。 そのため、T構造(耐火構造)の一戸建てのほうが火災保険料は安くなりやすいのです。

ただし、木造建築でも、耐火建築物や準耐火建築物に認定される一戸建てであれば「T構造(耐火構造)」に分類されます。 その場合、木造建築であってもH構造(その他の構造)のものよりも保険料が安くなります。

専有面積

建物構造だけでなく、所有している建物の面積である「専有面積」も火災保険料に影響します。 専有面積が広いほど火災に遭うリスクや被害の範囲が増えると考えられるため、それだけ保険料は高くなります。

所在地

火災保険の保険料率は、都道府県別の事故の発生状況や損害の状況を元に算出されており、大規模災害が起こるたびに見直しされています。

特に自然災害に遭うリスクには地域差もあるため、 災害のリスクが低い都道府県では、火災保険料は他の都道府県に比べて割安になります。一方、自然災害が多く発生している都道府県では、他の都道府県に比べて火災保険料は割高に設定されます。

補償の範囲・補償内容

ほかの保険でも同じことがいえますが、 火災保険においても補償を充実させるほど保険料が高くなります。

具体例として、補償範囲を火災や落雷に加えて水災や盗難補償も含めて幅広く設定したり、保険の対象を建物+家財にしたりすることが挙げられます。 火災保険に加入する際は、保険料と補償内容のバランスを考えることも大切です。

特約の有無

火災保険では、基本的な補償のほかに特約を付けることで補償内容を充実させることができます。

たとえば、日常生活で他者に与えた損害を補償する「個人賠償責任補償特約」や、 火災で近隣住宅に与えた損害を補償する「類焼損害補償特約」などがあります。

特約を付ければそれだけ補償を充実させられますが、付ける特約が増えるほど保険料は高くなります。 特約ごとにどのくらい保険料が増えるか考えながらプランを選ぶことも大切です。

保険期間や支払い方法、割引

火災保険にどれくらいの期間加入するかという「保険期間」でも、保険料は変わります。 火災保険の保険期間は1~10年間で、保険期間が短いほど保険料は高くなり、保険期間が長いほど保険料は安くなります。

ただし、火災保険料の目安となる指標を算出している損害保険料率算出機構によると、2022年10月以降の火災保険は、保険期間が最長5年になる見通しです。加入時期によって設定できる保険期間が変わってくるため、覚えておきましょう。

保険金額(支払限度額)

住宅や家財などに損害が生じたとき、 どれくらいの補償を受けるかという「保険金額(支払限度額)」も、火災保険料に影響を与えます。

保険金額(支払限度額)を高く設定すると、それだけ有事の際に受け取れる保険金額は高くなりますが、支払う保険料も高くなります。

また、保険料の設定には建物の評価額(再調達価格)が目安となり、これに基づいて保険金額が決まることも覚えておきましょう。 新築一戸建ての場合は、建築費用が評価額にあたるので、 建築費用が高いほど保険金額も高額になります。

一戸建てでの火災保険料を安く抑える方法

建物の構造や居住エリアなど、簡単には変えられない部分も多いですが、 方法によっては火災保険料を安く抑えることができます。

以下では、新築一戸建てでの火災保険料を安く抑える方法について詳しく説明します。

必要な補償内容に絞る

必要以上に補償を絞るのは好ましくありませんが、補償内容を充実させるほど保険料が高くなるため、 各家庭で備えるべきリスクにあわせて補償の範囲や保険金額を設定すれば、保険料を安くすることができます。

たとえば夫婦2人で持ち物が少なく、高額な家財の所有もないということであれば、家財保険の保険金額を高額に設定する必要性は低いです。一方、小さな子どもがいる家庭では子どもが物を壊す可能性があるため、破損や汚損の補償は必要になるでしょう。

各家庭にとって何が必要な補償なのかをよく考え、適切な補償のみを選ぶようにしてみてください。ご自身の家庭で想定できるリスクや適切な補償内容がわからない場合は、火災保険に詳しいファイナンシャル・プランナーや保険会社・保険代理店の職員にみてもらうといいでしょう。

家庭にとって必要な補償内容を取捨選択すると、 保険料を抑えつつ満足のいく火災保険に加入できるのではないでしょうか。

保険期間を長期契約にして一括払にする

火災保険では、2年以上の契約から保険料の割引があります。 そのため、なるべく長期で契約したほうが高い割引率が適用されて保険料を抑えやすくなります。

1年あたりの保険料をしっかり抑えたいのであれば、 最長保険期間である「10年契約」を選ぶのがおすすめです。ただし、もっとも保険料割引を期待できる10年契約は2022年10月以降に廃止される見通しです。2022年10月以降は5年契約が最長保険期間となるため、長期契約を希望する場合は早めに検討しておくようにしましょう。

家族の人数にあわせて家財の保険金額を設定する

火災保険の対象に家財も含める場合は、家族にとって適切な保険金額を設定しましょう。

各保険会社では世帯主の年齢と家族構成に基づき、保険金額の目安を「家財簡易評価表」として公開しています。世帯主の年齢が30歳で家族が大人2名なら700万円前後、大人2名で子ども1人なら800万円前後というような形で、年齢と家族構成に見合った目安が公開されているので、保険金額を設定する際の参考にするといいでしょう。

保険金額は高額にするほど保険料も高くなりがちですが、必要な補償はその時々の家族の形によって異なります。家族の成長にあわせて定期的に保険金額を見直し、無駄のない保険料設定にすることが大切です。

複数の保険会社に相見積もりをとる

住宅ローンを利用して一戸建てを購入する際は、金融機関が提携している保険会社を勧められることが多いです。紹介された保険会社でそのまま火災保険に加入すれば、自分自身で火災保険を探す手間を省けるので、 スムーズに手続きを進められるでしょう。

しかし、金融機関に勧められた火災保険が必ずしもあなたに最適かどうかはわかりません。 最近は、インターネットの比較サイトを利用して手軽に火災保険を比較できるようになっています。

複数の保険会社が扱う火災保険を比べることで、自分の求める契約プランでより保険料の安いものが見つかる可能性もあります。 保険料だけでなく、補償内容や補償範囲といった条件面もよく確認して選びましょう。

まとめ

住宅ローンを組んで新築一戸建てを購入する場合は、火災保険への加入が必須です。

とはいえ、火災保険で補償されるのは火災だけではありません。火災の他にも、台風や豪雨といった自然災害、盗難や家族のうっかりミスによる破損などを補償に含めることができるのです。

大切なマイホームをさまざまなリスクから守ってくれることを考えると、住宅ローンの利用に限らず火災保険は必要な保険ではないでしょうか。

また、必要な補償内容をよく考えてプランを選ぶことで、保険料を抑えられる可能性があります。 必要な補償を見極めたうえで適切な備えを用意できるようにしておきましょう。

保険コンパスなら、何度でも相談無料です

監修者プロフィール

宮里 恵
(M・Mプランニング)

保育士、営業事務の仕事を経てファイナンシャルプランナーへ転身。
それから13年間、独身・子育て世代・定年後と、幅広い層から相談をいただいています。特に、主婦FPとして「等身大の目線でのアドバイス」が好評です。
個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っている他、お金の専門家としてテレビ取材なども受けています。人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。

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