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医療コラム

2018.12.11 名医の羅針盤

終末期医療のトップランナー~加藤豊先生~

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名医が見据える終末期医療の現場、 そしてこれから ―

国内トップクラスの名医に最先端医療や最前線の医療現場について聞く不定期連載『名医の羅針盤』。日本の医療体制を揺るがしかねない「2025年問題」「2030年問題」(※1)。在宅・終末期医療の現場に立つ加藤豊氏に、超高齢社会について話を伺った。

 

インタビュー

現在、日本人の約8割が病院で亡くなっている。その数、年間およそ90万人。一方で国は病院数、病床数を減らす方針を明確に打ち出しており、2030年には推計死亡者約160万人のうち、47万人が「死に場所」の定まらない、いわゆる”看取り難民“になると厚生労働省は警鐘を鳴らした。

年間200人を看取る医療界の”おくりびと“

在宅医療の必要性をいち早く認識し、2008年より医療法人「豊隆会」の理事長として、そして在宅訪問医として年におよそ200人を看取る加藤豊理事長は次のように語る。

「1960年代までの日本では、自宅で息を引き取ることが当たり前でした。しかし、高度経済成長とともに病院の数が増え医療が進歩すると、病院で亡くなる方も増えていきました。受け皿が先にでき、そちらに流れていったという方向ですね。今、国は医療費が膨れ上がった要因として、病院の数が多過ぎると見ています。欧米の3倍はあると。では、3分の1にまで減らしたいと考えたとき、現在、病院でお亡くなりになられている90万人をそのまま病院で受け入れる余裕はないと思います。まして団塊世代が80歳を超えるなど高齢化が一段と進行し、死者の数が160万人に達すると推測される中では、なおさら厳しいといえるでしょうね」

国民の6割が終末期は「自宅で療養したい」

厚生労働省の調査によると終末期の療養場所について、国民の6割が「自宅で療養したい」と回答している。つまり、医療費を削減したい国と、住み慣れた地域・我が家で人生の最終段階を平穏に過ごしたい国民と、思惑の違いはあれ、同じベクトルを向いているのは確かだ。しかしこの調査で「自宅で最期まで療養することが困難」と答えた人もまた、6割を超えた。「介護してくれる家族に負担が掛かる」「症状が急変したときの対応に不安がある」「経済的な負担が大きい」というのが主な理由だ。では、実際に自宅で人生を全うするのは難しいのだろうか。

在宅医療を支えるセーフティーネットが充実

「まず、費用の面ではおおよその目安として、1カ月の世帯収入が20万あれば在宅療養は可能です」と加藤理事長は言う。「また、終末期において当然介護は必要となります。そこで、国が積極的に推し進めているのが『定期巡回・随時対応型訪問介護看護』(※2)『看護小規模多機能型居宅介護』(※3)です。自宅を基本に『看護』と『介護』を柔軟に組み合わせた複合型サービスを提供するもので、たとえば、ご家族の方が外出したり旅行に出掛けるときはデイサービス(通所介護)やショートステイ(短期入所生活介護)を利用して負担を軽減できます」

 休日や夜間など24時間体制で急病・急変に対応してくれるかかりつけ医(在宅医)を持っておくことも重要だ。たとえば、かかりつけ医を持たない中で亡くなり数時間経って発見された場合は、普段の病状が分からないため死因を特定できず、すでに亡くなっているので病院へも運んでもらえない。死亡診断書がないと火葬の許可が下りず、お葬式も出せないばかりか「変死」扱いとなり警察へ連絡がいく。しかし、かかりつけ医を決めておくと、たとえご臨終に立ち会っていなくても、亡くなったときからさかのぼって24時間以内に診察をしていれば死亡診断書を発行してくれる。24時間以内に受診していなくても、死後改めて診察すれば同様に発行できる。さらに言えば、容態が急変したときは救急車を呼ぶかどうかなど、万一の際の対応策を家族とかかりつけ医とが事前に話し合っておくことが望ましい。ここを曖昧にしておくと、いざというとき家族がパニックになって救急車を呼んでしまい、病院で望まない延命治療が施されてしまう可能性もある。

「患者さんは整形や内科、皮膚科などいろんなドクターにかかられていることが多いのですが、身近でこの先生だったら信頼できると感じる医師にお願いするのがいちばん。もし、かかりつけ医探しに迷ったり、わからないことがあれば市役所や近くの地域包括支援センターに電話すれば相談に応じてくれますよ。その点、日本はサービス業が非常に発達した国ですから、制度的にもよくできています。ボランティアさんもたくさんいて、自治体の

予算で食糧を届けてくれたり独居の方に安否確認の電話をしてくれたり…。逆に言えば”知らなければ利用できない“ので、地域には自宅で生活するためのセーフティーネットがたくさんあることを知っておいていただきたいです」

「何の処置・治療もしない=平穏な死」は大きな誤解

在宅医療の現場に目を向けてみよう。自宅で亡くなる人の主な死因は老衰(認知症)とガンである。

 なぜ認知症で死に至るのか。認知症患者は脳の血液量が次第に減少するためホルモンの分泌も少なくなり、次第に人間の精神活動を支える「欲」が低下する。最終的には食欲がまったく湧かない、あるいは食事を取るための機能が弱くなり、摂食障害・嚥下障害(※4)を起こし、臨終を迎える。現役の在宅訪問医である加藤理事長は、多くの人が”看取りの実際“を誤解していると指摘する。

「こんなやりとりがありました。おじいちゃんがご飯を食べられない段階になり、胃ろう(※5)を作りますか、中心静脈栄養(※6)をしますかとご家族に尋ねると、そういった延命処置は一切しないでほしいというのです。そうしているうちに、口内炎ができました。だんだんと栄養状態が悪くなり脱水してきますから、よくあることなのです。すると、痛そうな様子を見たご家族が慌てて『ビタミン剤を打ってくれ』と言われるんですね。『何でビタミン剤なんですか?』と聞いたら、『先生、口内炎にはビタミン剤が効くと習いませんでしたか?』と」

最前線に立ち続け辿り着いた看取りの在り方

この患者の場合たんぱく質も糖分も足りていないことから、ビタミンだけを補充しても家族が望む状態には回復しない。さらに加藤理事長は次のように話す。「人間の死に慣れていない家族は、死が間近に迫ったお姿を見たときに自然な経過と受け入れられず、動揺されたのでしょう。加えて、何の治療もしなければ安らかに死ねると思っている節がある。これは在宅医療の考え方からいうとありえないんですね。必要のない治療は避けるべきですが、痛みや苦しみを取り除く処置や治療までも拒む理由はありません。思い込みや誤った情報をもとに安直な判断をせず、基本的に医師の話をよく聞いて、従っていただければと思います」

 また今後の治療や方針までも医者に委ねる人に困惑することもあるそうだ。

「我々はあくまでもご本人やご家族の意思を尊重し、支える立場です。最期をどう過ごし、どう看取りたいかを決めるのはご本人とご家族以外ありえないんですよ」

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「死」は誰にでも訪れる生活史の一つ事前に備えを

意思決定といえば2018年3月、厚生労働省が「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン(※7)」を発表した。同ガイドラインでは病院における延命治療への対応を想定した内容だけではなく、在宅医療・介護の現場で活用できるよう次のような見直しをしている。

①医療・ケアチームの対象に介護従事者が含まれることを明確化

②意思決定能力が失われる前にどのような生き方を望むかなど患者の意向や将来の治療方針等について話し合うACP(Advance Care Planning:事前医療・ケア計画)の取り組みの必要性

③本人の意思を推定する者について家族等の信頼できる者をあらかじめ定めておくこと

④今後単身世帯が増えることを踏まえ前述の信頼できる者の対象を「家族」から「家族等(親しい友人等)」に拡大

⑤話し合った内容を文書にまとめて本人、家族等と医療・ケアチームで共有すること

 名古屋市千種区医師会の副会長でもある加藤理事長は同医師会と千種区役所との協働事業ですでにACPに取り組んでいると話す。「ACPの一環として60〜70代のまだ体力のある人を対象にエンディングノートを作成しました。心掛けたのは、人間の意思は非常に変わりやすいため、いつでも書き換えられること。そして、難しくなり過ぎないことです。たとえば、ノートでは『あなたの第二の人生をプランニングしてみましょう』との語り掛けに始まり、これからどこへ旅行に行きたいですか、何をやりたいですか、と問いを進めていきます。次に金融資産の把握や医療・介護に関する要望を伺い、最後に、葬儀に関する希望を尋ねます。もちろん、記入するのは書きたいところだけで構いません。皆さんに心にとどめておいてほしいのは、死は限られた人にだけ起こるものではなく、生活史の一つだということ。”終活“という言葉が使われ始めましたが、”就活“”婚活“と同じ感覚で終末期に備えてほしいと思います」

自らの意思を貫き通すのが理想的な死に方

数多の看取りに立ち合ってきた加藤理事長自身が思う「理想の死に方」とは―。

「さまざまな人の死に立ち会って思うのは、自分の死を受け止めきれない方が少なからずいらっしゃるということ。でもその方は違いました。某企業の社長で、末期がんを患っていた方です。いよいよ死期が近づいたとき、娘さんの強いご希望でさまざまな治療や処置をご提案したんです。すると『俺の身体のことは俺が決める。いらんものはいらんっ』と娘さんを一喝されましてね。ご意思のとおり、そのままお亡くなりになりました。実は、現場でよくあるケースなんですが、患者さんご本人とご家族の意見が対立した場合、我々医療従事者は100%ご家族の意向に従います。亡くなった方は裁判を起こせませんから。そういった意味で、患者さんは最後の最期に人権を奪われてしまうところがあるんですよ。それほどまでに、最期まで人として尊厳ある、尊重された生き方を貫き通すのは難しいものなんです。しかし、その社長は毅然と死を迎え、ご自身の主体性を貫きました。見ていて立派だと思いましたし、私もかくありたいと感じました」

 実感を込めて語る加藤理事長の言葉には重みがあった。死に方とは、生き方そのもの。その人の人生観が自ずとにじみ出てしまうものだ。

 そして人生の終焉を自らの望む形で迎えるには、元気なうちから意思を周囲に伝え、備えておく。それが最期まで自分らしさを貫けるただ一つの手立て、残された者への最大の思いやりではないだろうか。

理解が深まる医療用語解説

※1【2025年問題・2030年問題】

団塊の世代が、75歳(後期高齢者)に達するのが2025年。医療や介護、社会保障関連費用の急増が問題視されている。また、少子高齢化が深刻化する日本において、2030年には人口の3分の1が65歳以上の高齢者になると推計されている。

※2【定期巡回・随時対応型訪問介護看護】

要介護高齢者の在宅生活を支える仕組みや、医療ニーズが高い高齢者に対して医療と介護の連携が不足していることを受け、2012年4月に創設。日中・夜間を通じて、訪問介護と訪問看護の両方のケアを提供。

※3【看護小規模多機能型居宅介護】

「退院直後の在宅生活へのスムーズな移行」「がん末期等の看取り期、病状不安定期における在宅生活の継続」「家族に対するレスパイトケア(介護から一時的に離れて休息を取ってもらうための支援)、相談対応による負担軽減」等のニーズ応えるため2012年度介護報酬改定で創設されたサービス。

※4【摂食障害・嚥下障害】

食べ物や飲み物をうまく飲み込めないこと。特に高齢者は、歯の欠損や、咀嚼能力、唾液の分泌が低下することが要因の一つ。十分な飲食ができず、低栄養や脱水を引き起こしかねない。

※5【胃ろう】

口からの食事を取れない、または栄養の摂取が不十分な場合に、胃に穴をあけカテーテルを通じて直接栄養剤や薬を入れる方法。言語訓練や口から食べるリハビリテーションを行いやすい。他には経鼻経管栄養や腸ろうもある。

※6【中心静脈栄養】

口からの食事が長期間にわたって困難な場合、心臓に近い太い血管「中心静脈」から高濃度の輸液を投与することで、必要なカロリーや栄養を確実に補給できる。

※7【人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン】

厚生労働省が人生の最終段階における医療の在り方について2007年に初めて策定したガイドラインの改訂版。近年の高齢多死社会の進行に伴って、在宅や施設での療養・看取りの増加が見込まれることから、年齢や心身の状態にかかわらず本人の意思確認の重要性が記されている。

プロフィール

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ちくさ病院 理事長 加藤 豊

昭和62年 名古屋大学医学部 卒業
昭和62年 小牧市民病院 研修医
昭和63年 小牧市民病院 内科勤務
平成6年  愛知医科大学微生物免疫学 助手
平成10年 愛知医科大学微生物免疫学 講師
平成13年 医療法人生寿会かわな病院 内科勤務
平成15年 医療法人生寿会五条川リハビリテーション病院 院長
平成18年 医療法人喜浜会 理事長
平成20年 医療法人豊隆会 理事長


取材先

今回はこちらを訪れました!

医療法人 豊隆会 ちくさ病院
〒464-0075
愛知県名古屋市千種区内山2丁目16番16号
TEL 052-741-5331
FAX052-741-5330
http://www.chikusa.or.jp/
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